失恋論

     女にふられたんだと確実にわかった瞬間って      からだがグニャとなって,息がハアハアして,      まるで映画の中に出てくる絶望のシーンみたいに      落ちこむよなあ。      エ?そんなの,ならなかったって?      そんなら君は大丈夫だよ。おれはもうあのとき,      自分を支えていたロープがぶっつり切れるのを      確かにからだで感じた。      それでこうフラフラしちまうんだ。      そんなの病気だよって?      そうさ,恋は美しい病気さ。これにかかっていると      恋をしていない連中がみんな哀れなロボットに見える。      好きな女を抱いているときの幸福感は,      世界に抱かれているような感じだからな。      これって,おおげさ?      そうさ。幸福がおおげさに俺を抱きしめるんだ。それで俺は,      女のことを忘れるのに3年かかった。      それでも,あいつの唇と舌の味は,いまだに俺の心に      淡い紫色のシュプールになって残ったまんまだ。      おお,季節よ。女よ。・・・これって変?                        
    目次=ホーム


1