A10神経
〜恍惚、快感神経とよばれるアナログ神経〜

A10神経。それは人間の快感に関わっている重要な神経です。どこを通っているのか、どのように作用しているのかを見てみましょう。

A10神経はどこにあるんでしょうか。頭を切ってみましょう。

おーや、こんなところに。(図がちょっとゆがんでる・・・)

ABC系の神経が通ってる脳幹は・・・上の図では大きく書いていますが、実際はこんなでっかくないです。

A神経はA1、A2、A3、A4、A5・・・・A10・・・A16まであります。
Aなんとかっていうところは、神経のカタマリみたいなもので、小さな脳って感じの役割を果たしています。
このカタマリを「神経核」といいます。 図の白い丸いところです。(図にはないけど、本当はABCぜんぶあわせて40コの神経核かある)
A10神経核には、約14000コの神経細胞が集まっていて、 そのうち9000コくらいの細胞からドーパミンが分泌されています。

 

A系の神経は情報の伝達のドーパミンを使っています。ちなみにB系の神経はセロトニンを使ってます。

これらの神経はハダカ電線のように原始的な回路です。
(高度な神経回路はサヤで覆われてます。こうすると情報伝達が早い。)
こういう原始的な神経は「 無髄神経」と言い、「原始的で動物的な回路だ」とか言われてバカにされてきたらしいのですが、なかなかどうして、脳の中のA系の神経は人間の感情・情動を生み出すのに大切な役割を果たしているのです。

 

 

どこにつながっているのかな。

上の図をみてみましょう。
A10神経はこんなふうにのびているんですね。

このA10神経の通りみちは、すべて人間のこころのはたらきに深く関わっている、大切なところです。
この大切なところをA10神経が刺激することによって、快感を覚えるというわけです。

ではA10神経を刺激すると、どのような快感を覚えるかみてみましょう。


「被験者の大半は精神分裂病者かテンカン患者であったが、少数は内臓の悪性腫瘍患者か難治性疼痛患者であった。動物と同じように、人間も反復してバー押し行動を行う。これら患者が刺激されたときに起こる感じは、「気持ちが良い」(プレジャラブル)といい、「緊張から解放される」とか、「静かな、くつろいだ感じ」とかいう言葉を使ってこの気持ちを表現している。しかし歓喜(ジョイ)とか大歓喜(エクスタシー)とかで表現することはほとんどない。このような自己刺激の頻度が最高な患者の中には、なぜバーを押しつづけたのか理由を言いあらわせないというものがいる。」

(ガノング W・F著 「医科生理学展望」 1988)

あー、なんか気持ちがよさそうですね。A10神経は脳のどんな場所を通っているのでしょう。




A10神経が通っている場所

A10神経がどこを通っているかを見ながら、ケミカルを取っているときにおこるさまざまな現象の原因を探って行きましょう。

視床下部 ”性、食欲、そして体温調節をする脳”
まずA10神経は視床下部に入ります。ここには、性欲を生み出すPOA(視索前野)があります。ここは、脳内麻薬のようなペプチドホルモンを分泌する脳でもあり、「欲」を出す脳でもあります。近くには食欲をコントロールする満腹中枢があります。食欲と性欲は密接な関係にあるといいますが、脳の中でもこんなに近い場所にあるんですね。
ドラッグをやっている間、まったくおなかがすかなくなることありますよね。それはきっと満腹中枢が刺激されてるからなんでしょう。

 

大脳辺縁系 ”動物の脳”
つぎにA10神経は、原始的な脳である大脳辺縁系に入っていきます。どうして原始的かというと、動物の時代から残っている古い脳だからだそうです。ここでは感情とか攻撃性といった、比較的 動物的な行動が関連しています。

辺縁系が引き起こす?悟りの感覚

しかし原始的ながら、人間が「これは真実だ!」と感じる感覚もこの脳から生まれるらしいのです。
サイケデリックスを取って精神が高揚し、悟ったような感覚、世の中のことがわかったような感覚、などなどあると思いますが、そういう感覚には辺縁系が深く関わっているようなのです。

原始的な脳が 「真実」と人間に判断させ、知覚させる働きを持っているのはなんだか不思議なことです。
高度だと考えられている脳が、この原始的な脳の判断に支配されているのですから・・・

 

辺縁系の中にある扁桃核について

この辺縁系の中でも原始的な「扁桃核」は、攻撃性を生み出す脳で、ここを壊すとボーーーっとした柔和な人になってしまいます。A10神経はこの脳も通っています。この脳とA10神経との関係はよくわかっていませんが、もっと研究が進めば、「攻撃性と快感」という興味深い関係についても 解明されるかもしれません。

また、扁桃核の近くに損傷があると、神秘体験に近いものを引き起こすことがあるそうです。デジャヴ(来たこともないのに、見たことがあるかのような錯覚)や白昼夢(おなじみですね)、神秘体験、神のお告げなどなどが起きることもあります。

そしてA10神経は、扁縁系の中にある 表情を生み出す脳、 においを感じる脳へと進んで行きます。
においをかいで心地よいと感じるのも、A10神経のおかげだそうです。

側坐核 ”麻薬の依存性と関係がある?”
ここを電気刺激すると、ネズミがめちゃくちゃに走り出すそうです。自発的行動とナニか関係があるのかもしれません。そういえば、クスリを飲むとセカセカと動き回ること・・・ありませんか?なんか関係があるのでしょうか。
また、麻薬の依存性とも何かの関係があるともいわれています。

大脳新皮質 ”人間の脳”
A10神経は、最後に大脳新皮質に進む。人間の精神に深くかかわる前頭連合野と、記憶・学習を総合する側頭葉へと進んで終わる。側頭葉は人間だけに発達した脳で、ここを刺激されたテンカン患者は快感を生じたことが報告されている。


 

A10神経が快感を生み出すといっても、ABC神経は神経物質伝達というより、伝達ホルモンを分泌するといった感じである。だからドーパミンなども漠然と、そして全体的に放出される。こうした分泌によって快感が全体的に、漠然と生み出される。「どこが気持ちいい」と説明しにくい快感である。

また情報伝達物質の量で情報が決まるために、接続部シナプスは分子とか薬物によって影響を受けやすい。

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