【組成】 [錠]:1錠中0.4 mg,0.8 mg
アルプラゾラムは白色の結晶又は結晶性の粉末で,においはない。クロロホルムに溶けやすく,メタノ−ル又はエタノ−ルにやや溶けやすく,無水エタノ−ル又は無水酢酸にやや溶けにくく,エ−テルに極めて溶けにくく,水にほとんど溶けない。融点:228〜232゜
【適応】 心身症(胃・十二指腸潰瘍,過敏性腸症候群,自律神経失調症)における身体症候並びに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
【用法】 1日1.2 mg,3回に分服(増減)。増量する場合には最高用量を1日2.4 mgとして漸次増量し,3〜4回に分服。高齢者では1回0.4 mg 1日1〜2回から開始し,増量する場合でも1日1.2 mgを超えないものとする
【注意】
(1)一般的注意:眠気,注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので,投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意する
(2)禁忌
(a)本剤に対し過敏症の既往歴のある患者
(b)急性狭隅角緑内障のある患者[弱い抗コリン作用により眼圧が上昇し,症状を悪化させるおそれがある]
(c)重症筋無力症の患者[筋弛緩作用により,症状を悪化させるおそれがある]
(3)慎重投与
(a)心障害のある患者[症状を悪化させるおそれがある]
(b)肝障害のある患者[肝臓で代謝されるため,クリアランスが低下するおそれがある]
(c)腎障害のある患者[排泄が遅延するおそれがある]
(d)脳に器質的障害のある患者[作用が強く現れるおそれがある]
(e)小児[小児への投与の項参照]
(f)高齢者[高齢者への投与の項参照]
(g)衰弱患者[副作用が現れやすい]
(h)中等度呼吸障害又は重篤な呼吸障害(呼吸不全)のある患者[症状を悪化させるおそれがある]
(4)相互作用
併用注意
(a)中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体,バルビツ−ル酸誘導体等),モノアミン酸化酵素阻害剤[本剤の作用が増強されることがある]
(b)アルコ−ル(飲酒)[本剤の作用が増強されることがある]
(c)シメチジン[本剤の肝臓での代謝が阻害され,血中濃度を高めることが報告されている]
(d)イミプラミン,デシプラミン[併用薬の肝臓での代謝が阻害され,併用薬の血中濃度を高めることが報告されている] カルバマゼピン[本剤の血中濃度を低下させることが報告されている]
(5)副作用
(a)重大な副作用
(ア)国内における副作用
(1)依存性:大量連用により,まれに薬物依存を生じることがあるので,観察を十分に行い,用量を超えないよう慎重に投与する。また,大量投与又は連用中における投与量の急激な減少ないし中止により,まれにけいれん発作,ときにせん妄,振戦,不眠,不安,幻覚,妄想等の禁断症状が現れることがあるので,中止する場合には,徐々に減量するなど慎重に行う
(2)刺激興奮,錯乱:精神分裂病等の精神障害者に投与すると,逆に刺激興奮,錯乱等が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には中止するなど適切な処置を行う
(3)呼吸抑制:慢性気管支炎等の呼吸器疾患に用いた場合,呼吸抑制が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には中止するなど適切な処置を行う
(イ)外国における副作用 アナフィラキシ−様症状:掻痒,じんま疹,顔面潮紅・腫脹,息切れ等のアナフィラキシ−様症状が現れたとの報告があるので,このような症状が現れた場合には中止し,適切な処置を行う
(b)その他の副作用
(ア)精神神経系:眠気,ときにめまい・ふらつき,頭痛,不眠,眼症状(霧視,複視),また,まれに構音障害,焦燥感,神経過敏,健忘,尿失禁,振戦等が現れることがある
(イ)肝臓:まれに黄疸,また,ときにGOT,GPT,γ‐GTPの上昇等が現れることがある
(ウ)循環器:まれに血圧低下,動悸等が現れることがある
(エ)消化器:ときに口渇,悪心・嘔吐,食欲不振,腹痛,腹部不快感,便秘,また,まれに下痢等が現れることがある
(オ)過敏症:まれに発疹,掻痒等が現れることがあるので,このような症状が現れた場合には中止する
(カ)骨格筋:ときに脱力感・倦怠感,筋弛緩等の筋緊張低下症状が現れることがある
(キ)その他:まれに発汗が現れることがある
(6)高齢者への投与:高齢者では,運動失調等の副作用が発現しやすいので,少量から開始するなど慎重に投与する
(7)妊婦・授乳婦への投与
(a)妊婦
(ア)妊娠中に他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)の投与を受けた患者の中に奇形児等の障害児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査報告があり,また動物に大量投与したとき,骨格異常,胎仔の死亡,出産仔の発育遅延の増加が報告されているので,妊婦(3カ月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にだけ投与する
(イ)新生児に哺乳困難,筋緊張低下,嗜眠,黄疸の増強等の症状を起こすことが,他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム,ニトラゼパム)で報告されているので,妊娠後期の婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にだけ投与する
(ウ)分娩前に連用した場合,出産後新生児に禁断症状(神経過敏,振戦,過緊張等)が現れることがある
(b)授乳婦:ヒト母乳中に移行し,新生児に嗜眠,体重減少等を起こすことが,他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)で報告されており,また黄疸を増強する可能性があるので,授乳婦への投与は避けることが望ましいが,やむを得ず投与する場合は授乳を避けさせる
(8)小児への投与:小児に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)
(9)過量投与
(a)症状:過量投与により,傾眠,錯乱,協調運動障害,反射減退及び昏睡等が現れることがある
(b)処置:呼吸,脈拍,血圧の監視を行うとともに,胃洗浄,輸液,気道の確保等の適切な処置を行う。また,過量投与が明白又は疑われた場合の処置としてフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与する場合には,使用前にフルマゼニルの使用上の注意(禁忌,慎重投与,相互作用等)を必ず読む
(10)その他:投与した薬剤が特定されないままにフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与された患者で,新たに本剤を投与する場合,本剤の鎮静・抗けいれん作用が変化,遅延するおそれがある
(11)室温保存
(12)規制等:向指要
【作用】
(1)薬効薬理:既存のベンゾジアゼピン系化合物と類似した薬理学的スペクトラムを持つが,葛藤行動緩解作用,馴化作用,鎮静作用に比べ筋弛緩作用は比較的弱い。葛藤行動緩解作用,馴化作用,鎮静作用の作用機序は視床下部並びに扁桃核を含む大脳辺縁系に対する抑制と考えられる。ジアゼパムに対する作用力
(a)葛藤行動緩解作用(ラット)約2倍
(b)馴化作用
(ア)嗅球摘出ラットにおける攻撃抑制作用約2.5倍
(イ)中脳縫線核破壊ラットにおける攻撃抑制作用約7倍
(c)鎮静作用(マウス):チオペンタ−ル麻酔増強作用約5倍,エタノ−ル麻酔増強作用約6倍,エ−テル麻酔増強作用約8倍
(d)筋弛緩作用:傾斜板法(マウス)約1.5倍,回転棒法(ラット)約1.4倍,(マウス)約3倍
(e)抗けいれん作用
(ア)抗ペンチレンテトラゾ−ルけいれん作用(マウス)約2.5倍
(イ)最大電撃けいれんに対する作用(マウス)約1.5倍
(2)体内薬物動態:健康成人に1回0.4 mg経口投与時の最高血中濃度は約2時間後値6.8ng/ml,半減期約14時間
(3)臨床適用:283例,ほとんどが1日1.2 mg,一般臨床試験では主に4週間,二重盲検比較試験では3〜4週間(胃・十二指腸潰瘍では8〜12週間)
(a)臨床効果:症状別では不安,緊張,抑うつ,睡眠障害等の症状の改善に優れており,投与開始後通常1週間で効果が発現。全般改善度283例中66.4%:心身症[胃・十二指腸潰瘍151例中69.5%,過敏性腸症候群79例中57%,自律神経失調症53例中71.7%]。二重盲検比較試験で有用性が認められている
(b)副作用及び臨床検査値の変動:7.59%(381/5,021)に,眠気,めまい・ふらつき,脱力感・倦怠感等の精神神経症状329例,口渇,悪心・嘔吐等の消化器症状57例,眼の調節異常等の眼症状6例,GOT,GPT上昇等の肝機能異常14例等
(4)非臨床試験
(a)毒性LD50(mg/kg)マウス:経口=♂1410♀1700,ラット:経口=♂3100♀1220
(b)生殖試験
(ア)ラットの妊娠前・妊娠・哺育期に5 mg/kg/日経口投与で,新生仔平均体重の軽度な低下
(イ)器官形成期の経口投与でラット50 mg/kg群及びウサギ3 mg/kg以上群に胎仔死亡増加,生存胎仔発育遅延,骨格異常等
(ウ)ラットの周産期及び授乳期に3 mg/kg/日以上の経口投与で,他のベンゾジアゼピン系薬剤に既知の一部母動物の授乳行動欠如及び食殺行動による新生仔生存率の低下
(c)薬物依存試験:アカゲザルを用いたバルビタ−ル交差身体依存性試験,反復投与による身体依存形成試験及び胃内連続自己投与試験によりベンゾジアゼピン型薬物依存性 (ファルマシア・アップジョンによる)
【長期投与】
<内服>機能性消化障害(他に分類されないもの)(22):30日
【備考】 アップジョン(アメリカ)と武田薬品の共同開発