ロヒプノールについて

 

【組成】 [錠]:1錠中1 mg,2 mg

[注]:1アンプル(1 ml)中2 mg。(1 mg/ml注射用水)pH:3.5〜5.5 浸透圧比:約25

フルニトラゼパムは白色〜微黄色の結晶性粉末である。氷酢酸に溶けやすく,無水酢酸又はアセトンにやや溶けやすく,無水エタノ−ル又はエ−テルに溶けにくく,水にほとんど溶けない。融点:168〜172゜

【適応】 [内]:不眠症,麻酔前投薬

 [注]:全身麻酔の導入,局所麻酔時の鎮静

【用法】 [内]:1回0.5〜2 mg就寝前又は手術前(増減)。なお,高齢者には1回1 mgまで

 [注]:注射用水で2倍以上に希釈調製し,できるだけ緩徐に(1 mgを1分以上かけて)静注。全身麻酔の導入0.02〜0.03 mg/kg,局所麻酔時の鎮静0.01〜0.03 mg/kg,必要に応じて初回量の半量〜同量を追加(増減)

【注意】

(1)一般的注意

(a)(内服)本剤の影響が翌朝以後に及び,眠気,注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので,自動車の運転等の危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する

(b)(注射)麻酔を行う際には原則としてあらかじめ絶食をさせておく

(c)(注射)麻酔を行う際には原則として麻酔前投薬を行う

(d)(注射)麻酔中は気道に注意して呼吸・循環に対する観察を怠らない

(e)(注射)麻酔の深度は手術,検査に必要な最低の深さにとどめる

(f)(注射)麻酔前に酸素吸入器,吸引器具,挿管器具等の人工呼吸のできる器具を手もとに準備しておくことが望ましい

(2)禁忌

(a)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

(b)急性狭隅角緑内障の患者[眼圧を上昇させるおそれがある]

(c)重症筋無力症の患者[重症筋無力症の症状を悪化させるおそれがある]

(3)原則禁忌(内服):肺性心,肺気腫,気管支喘息及び脳血管障害の急性期等で呼吸機能が高度に低下している場合[炭酸ガスナルコ−シスを起こしやすい]

(4)慎重投与:次の患者には少量から開始するなど注意する

(a)衰弱患者

(b)高齢者[運動失調等の副作用が現れるおそれがある(高齢者への投与の項参照)]

(c)心障害のある患者[呼吸抑制が現れやすい]

(d)肝障害,腎障害のある患者[作用が強く現れやすい]

(e)脳に器質的障害のある患者[作用が強く現れやすい]

(f)妊婦又は妊娠している可能性のある患者[安全性は確立していない(妊婦・授乳婦への投与の項参照)]

(g)乳児,幼児,小児[安全性は確立していない(小児への投与の項参照)]

(h)(注射)高度重症患者,呼吸予備力の制限されている患者

(5)相互作用 併用注意:アルコ−ル,中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体,バルビツ−ル酸誘導体,鎮痛薬,麻酔薬等),モノアミン酸化酵素阻害剤,シメチジン[作用が増強されることがある]

(6)副作用

(a)重大な副作用

(ア)依存性(内服):大量連用によりまれに薬物依存を生じることがあるので,観察を十分に行い,用量を超えないよう慎重に投与する。また,大量投与又は連用中における投与量の急激な減少ないし中止により,まれにけいれん発作,ときにせん妄,振戦,不眠,不安,幻覚,妄想等の禁断症状が現れることがあるので,中止する場合には,徐々に減量するなど慎重に行う

(イ)刺激興奮,錯乱(内服):精神分裂病等の精神障害者に投与すると逆にこのような症状が現れることがある

(ウ)呼吸抑制,炭酸ガスナルコ−シス(内服):まれに呼吸抑制が現れることがある。また,呼吸機能が高度に低下している患者に投与した場合,炭酸ガスナルコ−シスを起こすことがあるので,このような場合には気道を確保し,換気をはかるなど適切な処置をとる

(エ)(注射)ときに舌根沈下,無呼吸,呼吸抑制,また,まれに錯乱が現れることがある

(b)その他の副作用

(ア)精神神経系 (1)(内服)中途覚せい時の出来事を記憶していないことがある (2)(内服)ときに眠気,めまい,ふらつき,運動失調,頭痛,頭重,頭がボ−ッとする,また,まれに失調性歩行,不快感,焦燥感,不安感,構音障害,しびれ感,耳鳴り,動作緩慢,記憶力の低下,酩酊感,振戦が現れることがある (3)(注射)ときに覚せい困難,興奮,多弁,また,まれに麻酔後睡眠が現れることがある

(イ)肝臓:(内服)ときにGOT,GPTの上昇,また,まれにLDH,Al‐Pの上昇が現れることがある。(注射)ときにGOTの上昇,また,まれにGPTの上昇が現れることがある

(ウ)腎臓(内服):まれにBUNの上昇が現れることがある

(エ)呼吸器(注射):ときにしゃっくり,また,まれにせきが現れることがある

(オ)血液(内服):まれに貧血,白血球減少,血小板減少が現れることがある

(カ)循環器:(内服)まれに動悸,血圧低下が現れることがある。(注射)ときに血圧低下,徐脈,また,まれに頻脈が現れることがある

(キ)消化器:(内服)ときに口渇,また,まれに嘔吐,胃部不快感,食欲不振,下痢,便秘,腹痛,舌のあれ,胸やけ,流涎,口の苦みが現れることがある。(注射)ときに嘔吐が現れることがある

(ク)過敏症:(内服)まれに発疹等が現れることがあるので,このような症状が現れた場合には中止する。(注射)ときに発疹等が現れることがあるので,このような症状が現れた場合には中止する

(ケ)骨格筋(内服):ときに倦怠感,脱力感が現れることがある

(コ)その他:(内服)ときに尿失禁,また,まれに発汗,いびき,顔面紅潮,顔面浮腫,排尿困難,頻尿が現れることがある。(注射)ときに体動,また,まれに尿閉,乏尿が現れることがある

(7)高齢者への投与:(内服)高齢者では,運動失調等の副作用が発現しやすいので,少量から開始するなど慎重に投与する。(注射)高齢者では,運動失調等の副作用が発現しやすいので,慎重に投与する

(8)妊婦・授乳婦への投与

(a)妊娠中の投与に関し,次のような報告があるなど安全性は確立していないので,妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には,投与しないことが望ましい

(ア)妊娠動物(ラット)に投与した実験で,50 mg/kgの用量で催奇形作用が認められる

(イ)妊娠中に他のベンゾジアゼピン系化合物の投与を受けた患者の中に奇形児等の障

害児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査が報告されている

(ウ)新生児に哺乳困難,筋緊張低下,嗜眠を起こすことが,また,他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム,ニトラゼパム)で黄疸の増強等の症状を起こすことが報告されている

(エ)分娩前に連用した場合,出産後新生児に禁断症状(神経過敏,振戦,過緊張等)が現れることが,他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)で報告されている

(b)授乳中の投与に関し,次のような報告があり,また,新生児の黄疸を増強する可能性があるので,授乳婦への投与は避けることが望ましいが,やむを得ず投与する場合は授乳を避けさせる

(ア)ヒト母乳中に移行することが報告されている

(イ)ヒト母乳中へ移行し,新生児に嗜眠,体重減少等を起こすことが,他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)で報告されている

(9)小児への投与:小児に対する安全性は確立していない(内服では,使用経験が少ない)

(10)適用上の注意(注射)

(a)急速に静注した場合,あるいは細い静脈内に注射した場合には血栓性静脈炎を起こすおそれがあるので,なるべく太い静脈を選んで投与する

(b)動注した場合には,末梢の壊死を起こすおそれがあるので動脈内には絶対に注射しない

(c)筋注した場合には,局所障害を起こすおそれがあるので筋肉内に注射しない

(d)静注時に血管痛がみられることがある

(e)希釈調製後は速やかに使用する

(f)他の注射剤と配合した場合は,経時的に変化することがあるので注意する

(11)過量投与:過量投与が明白又は疑われた場合の処置としてフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与する場合には,使用前にフルマゼニルの使用上の注意(禁忌,慎重投与,相互作用等)を必ず読む

(12)その他

(a)(注射)鎮痛作用がないので,必要ならば鎮痛剤を併用する

(b)(注射)術後引き続き鎮静及び前行性健忘が認められることがあるので注射後24時間は観察下におく

(c)投与した薬剤が特定されないままにフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与された患者で,新たに本剤を投与する場合,本剤の鎮静・抗けいれん作用が変化,遅延するおそれがある

(13)取扱い上の注意:アルカリ性薬剤との配合には注意する(黄変化を起こすことがある)

(14)遮光・室温保存

(15)規制等:向習指要,フルニトラゼパム局

【作用】

(1)薬効薬理

(a)睡眠作用及び麻酔・鎮痛増強作用:各種動物試験(マウス,ラット,ネコ,カニクイザル)で他のベンゾジアゼピン系化合物と同様の薬理学的スペクトラム(静穏・馴化・睡眠誘起・睡眠増強,抗けいれん・筋弛緩作用等)。経口では特に各種刺激によるネコ脳波覚せい反応を著明に抑制,強力な睡眠作用。カニクイザルを用いた試験でも睡眠作用。注射では特にネコに静注後,脳波は睡眠パタ−ンを示し,各種刺激による脳波覚せい反応を著明に抑制。マウス,ラットで麻酔剤,鎮痛剤の作用を増強

(b)ヒト終夜脳波試験及びヒト臨床脳波試験:健常成人男子に1 mg及び2 mgを経口投与時の終夜脳波試験で,入眠潜時の短縮と全睡眠時間の延長。手術患者に0.02〜0.04mg/kgを静注時の脳波,呼吸曲線,心電図等の測定で,著明な入眠作用が認められたが,血圧,脈拍,呼吸にはほとんど変化が認められなかった

(c)作用機序:抑制性のGABAニュ−ロンのシナプス後膜に存在するベンゾジアゼピン受容体にアゴニストとして高い親和性で結合し,GABA親和性を増大させることにより,GABAニュ−ロンの作用を特異的に増強すると考えられている

(2)体内薬物動態

(a)血中濃度:健常成人男子5例に2 mg錠単回経口投与時の血中濃度は投与後30分から1時間で最高値10.8 ng/ml,投与後12時間目までの半減期は約7時間。また7日間連続経口投与時,3日から5日後で定常状態に達し,その最高血中濃度は単回投与時の約1.3倍。健常成人男子5例に2 mgを静注時,5分後の血中濃度は44.4 ng/ml,以降3相性で減少。半減期は第1相(0〜30分)で約8分,第2相(30分〜4時間)で約2時間,第3相(4時間以後)で約24時間,投与後4時間までに速やかな減少が認められた

(b)尿中主要代謝物:健常成人男子に4 mgを経口投与時,72時間目までの尿中主要代謝物は7‐amino体,2‐methylamino‐5‐nitro‐2´‐fluorobenzophenone,3‐hydroxy体

(3)臨床適用

(a)臨床効果

(ア)内服 (1)不眠症:有効率67.8%(521/769)。また,精神神経科及び内科領域での不眠症を対象とした二重盲検比較試験で有用性が認められた (2)麻酔前投薬:手術前夜の前投薬を対象とした二重盲検比較試験で有用性が認められた

(イ)注射(378例) (1)入眠状態:入眠が得られた症例90.5%(323/357) (2)導入状態:円滑な麻酔導入が得られた症例93.6%(335/358),十分な深度が得られた症例72.5%(256/353)。全身麻酔の導入及び局所麻酔時の鎮静を対象とした比較試験で有用性が認められた

(b)副作用及び臨床検査値の変動:経口投与で副作用は6%(792/13,205)に,ふらつき(感)1.89%(250件),眠気1.81%(239件),倦怠感1.27%(168件),頭痛0.51%(68件),めまい0.35%(46件),頭がボ−ッとする,口渇各0.2%(26件),脱力感0.18%(24件),運動失調0.15%(20件),頭重0.14%(19件)等。また,臨床検査値の異常はGPT上昇0.3%(40件),GOT上昇0.2%(26件)等。注射で6.03%(221/3,668)に,血圧低下1.83%(67件),舌根沈下0.68%(25件),呼吸抑制0.55%(20件),覚せい困難0.46%(17件),体動,無呼吸各0.33%(12件),しゃっくり0.27%(10件),嘔吐0.22%(8件),嘔気,血管痛各0.19%(7件)等

(4)非臨床試験

(a)毒性LD50(mg/kg)ICR系マウス:経口=♂1550♀1200,皮下>♂♀4000,腹腔内=♂1050♀1080,筋注>♂♀2000,SD系ラット:経口=♂415♀450,皮下>♂♀4000,腹腔内=♂1300♀1060,筋注>♂♀2000

(b)生殖試験

(ア)妊娠前・妊娠初期:SD系ラットに連続経口投与時,50 mg/kg/日で妊娠率の低下,胎児では軽度の発育遅延。SD系ラットに連続静注時,雄親1 mg/kg/日,雌親0.3 mg/kg/日以上で軽度の体重増加抑制

(イ)器官形成期:SD系ラットに連続経口投与時,50 mg/kg/日で胎児に対し催奇形作用,

新生児には25 mg/kg/日以上で生存率の低下,体重の低下及び行動,学習能への影響を示唆。SD系ラットに0.1,0.5,1 mg/kg/日を連続静注時,薬物投与群で母体に軽度の体重増加抑制

(ウ)周産期・授乳期投与試験:SD系ラットに連続経口投与時,25 mg/kg/日以上で母体に対して体重減少,分娩困難,哺育率の低下,新生児では発育遅延。SD系ラットに連続静注時,0.5 mg/kg/日以上で母体に軽度の体重増加抑制及び新生児に毛生開始の軽度遅延,1 mg/kg/日で母体の哺育能の低下

(c)依存性(内服):アカゲザルで,ジアゼパムより弱い身体依存性及びそれと同程度の精神依存性

(d)分布・排泄:ラットに14C‐標識体1.5 mg/kgを経口投与後,1,3時間目の放射活性は胃で最も高く,次いで腸管,肝臓でも血液中と比較して高い。脳では血液中と同等又はそれ以下。投与後24時間目までに糞中に70%,尿中に20%排泄。ラットに14C‐標識体1 mg/kgを静注後1時間の放射活性は腸管で最も高く,次いで肝臓,脂肪組織,副腎でも血液中と比較して高い。脳では血液中の1/4。投与後24時間までに糞中に78%,尿中に17%排泄

(e)一般薬理:軽度の血圧の低下(イヌ,静注),唾液分泌の抑制(イヌ,静注),腸管輸送能の低下(マウス,経口) (日本ロシュによる)

【備考】 エフ・ホフマン・ラ・ロシュ(スイス)開発

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