コントミンについて

 

【組成】 [散]:塩酸クロルプロマジン10%,50%(ただしコントミン散はタンニン酸塩。白色コントミン散と同2倍散はヒベンズ酸塩)

 [細]・[顆]:塩酸クロルプロマジン10%(ただしウインタミン細粒はフェノ−ルフタリン酸塩。白色コントミン顆粒はヒベンズ酸塩)

 [錠]:1錠中塩酸クロルプロマジン12.5 mg,25 mg,50 mg,100 mg

 [シ]:塩酸クロルプロマジン0.2%

 [注]:1アンプル(2 ml)中塩酸クロルプロマジン10 mg,(5 ml)中25 mg,50 mg。pH:4.0〜6.5 浸透圧比:約0.9

 塩酸クロルプロマジンchlorpromazine hydrochloride(JP)は白色〜微黄色の結晶性の粉末で,においはないか,又はわずかに特異なにおいがある。水に極めて溶けやすく,氷酢酸又はエタノ−ルに溶けやすく,無水酢酸にやや溶けにくく,エ−テルにほとんど溶けない。光によって徐々に着色する。融点:194〜198゜

 タンニン酸クロルプロマジンchlorpromazine tannate(JAN)は灰白色の粉末で,においはないか,又はわずかに特異なにおいがある。無水酢酸に溶けやすく,氷酢酸に溶けにくく,アセトンに極めて溶けにくく,水,エタノ−ル,エ−テル又はクロロホルムにほとんど溶けない。0.1 N塩酸試液に溶ける。光によって着色する

 ヒベンズ酸クロルプロマジンchlorpromazine hibenzate(JAN)は白色の粉末で,においはない。氷酢酸に溶けやすく,アセトン又はクロロホルムに溶けにくく,エタノ−ル又はエ−テルに極めて溶けにくく,水にほとんど溶けない。光によって徐々に着色する。融点:172〜175゜

 フェノ−ルフタリン酸クロルプロマジンchlorpromazine phenolphthalinate(JAN)は白色〜微黄白色の結晶性の粉末で,においはない。メタノ−ルにやや溶けにくく,無水エタノ−ル又はアセトンに溶けにくく,エ−テルに極めて溶けにくく,水にほとんど溶けない。融点:198〜202゜

 

【適応】 精神分裂病,燥病,神経症における不安・緊張,悪心・嘔吐,吃逆,破傷風に伴うけいれん,麻酔前投薬,人工冬眠,催眠・鎮静・鎮痛剤の効力増強

【用法】 [内]:塩酸クロルプロマジンとして1日30〜100 mg,精神科領域には50〜450 mg分服(増減)。(ウインタミン)小児では,発達段階や症状の程度により,個人差が特に著しいが,多くの場合1回0.5〜1 mg/kg,1日3〜4回を目途とし,症状の程度により加減する。生後6カ月未満の乳児への使用は避けることが望ましい

 [注]:塩酸クロルプロマジンとして1回10〜50 mgを緩徐に筋注又は静注(コントミンは筋注だけ)(増減)

【注意】

(1)一般的注意:眠気,注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので,投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意する

(2)禁忌

(a)昏睡状態,循環虚脱状態の患者[これらの状態を悪化させるおそれがある]

(b)バルビツ−ル酸誘導体・麻酔剤等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者[中枢神経抑制剤の作用を延長し増強させる]

(c)エピネフリンを投与中の患者(相互作用の項参照)

(d)フェノチアジン系化合物及びその類似化合物に対し過敏症の患者

(3)原則禁忌:皮質下部の脳障害(脳炎,脳腫瘍,頭部外傷後遺症等)の疑いがある患者[高熱反応が現れるおそれがあるので,このような場合には全身を氷で冷やすか,又は解熱剤を投与するなど適当な処置を行う]

(4)慎重投与

(a)肝障害又は血液障害のある患者[肝障害又は血液障害を悪化させるおそれがある]

(b)褐色細胞腫,動脈硬化症あるいは心疾患の疑いのある患者[血圧の急速な変動がみられることがある]

(c)重症喘息,肺気腫,呼吸器感染症等の患者[呼吸抑制が現れることがある]

(d)てんかん等のけいれん性疾患又はこれらの既往歴のある患者[けいれん閾値を低下させることがある]

(e)幼・小児[錐体外路症状,特にジスキネジアが起こりやすい]

(f)高齢者(高齢者への投与の項参照)

(g)高温環境にある者[体温調節中枢を抑制するため,環境温度に影響されるおそれがある]

(h)脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者[Syndrome malin(悪性症候群)が起こりやすい]

(5)相互作用

(a)併用禁忌:エピネフリン[エピネフリンの作用を逆転させ,血圧降下を起こすことがある]

(b)併用注意

(ア)中枢神経抑制剤(バルビツ−ル酸誘導体・麻酔剤等),降圧剤,アトロピン様作用のある薬剤[相互に作用を増強することがあるので,減量する等慎重に投与する]

(イ)アルコ−ル[相互に作用を増強することがある]

(c)接触注意:有機リン殺虫剤[相互に作用を増強することがある]

(6)副作用

(a)重大な副作用

(ア)Syndrome malin(悪性症候群):無動緘黙,強度の筋強剛,嚥下困難,頻脈,血圧の変動,発汗等が発現し,それに引き続き発熱がみられる場合は,中止し,体冷却,水分補給等の全身管理と共に適切な処置を行う。本症発症時には,白血球の増加や血清CPKの上昇がみられることが多く,また,ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。なお,高熱が持続し,意識障害,呼吸困難,循環虚脱,脱水症状,急性腎不全へと移行し,死亡した例が報告されている

(イ)突然死:血圧降下,心電図異常(QT間隔の延長,T波の平低化や逆転,二峰性T波ないしU波の出現等)に続く突然死が報告されているので,特にQT部分に変化があれば中止する。また,フェノチアジン系化合物投与中の心電図異常は,大量投与されていた例に多いとの報告がある

(ウ)再生不良性貧血,溶血性貧血:再生不良性貧血,溶血性貧血が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には,減量又は中止する

(エ)麻痺性イレウス:まれに腸管麻痺(食欲不振,悪心・嘔吐,著しい便秘,腹部の膨満あるいは弛緩及び腸内容物のうっ滞等)を来し,麻痺性イレウスに移行することがあるので,腸管麻痺が現れた場合には中止する。なお,この悪心・嘔吐は,本剤の制吐作用により不顕性化することもあるので注意する

(オ)遅発性ジスキネジア:長期投与により,ときに口周部等の不随意運動が現れ中止後も持続することがある

(カ)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH):まれに低ナトリウム血症,低浸透圧血症,尿中ナトリウム排泄量の増加,高張尿,けいれん,意識障害等を伴う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)が現れることがあるので,このような場合には中止し,水分摂取の制限等適切な処置を行う

(キ)眼障害:長期又は大量投与により,角膜・水晶体の混濁,網膜・角膜の色素沈着が現れることがある

(ク)SLE様症状:SLE様症状が現れることがある

(b)その他の副作用

(ア)循環器:血圧降下,頻脈,不整脈又は心疾患悪化がみられることがあるので,観察を十分に行い慎重に投与する

(イ)血液:白血球減少症,顆粒球減少症,血小板減少性紫斑病等が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には,減量又は中止する

(ウ)消化器:食欲高進,食欲不振,舌苔,悪心・嘔吐,下痢,便秘等が現れることがある

(エ)肝臓:まれに肝障害が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には,減量又は中止する

(オ)錐体外路症状:パ−キンソン症候群(手指振戦,筋強剛,流涎等),ジスキネジア(けいれん性斜頚,顔面及び頚部のれん縮,後弓反張,眼球回転発作等),アカシジア(静座不能)が現れることがある

(カ)眼:縮瞳,眼内圧高進,視覚障害が現れることがある

(キ)内分泌:ときに体重増加,女性型乳房,乳汁分泌,射精不能,月経異常,糖尿等が現れることがある

(ク)精神神経系:錯乱,不眠,眩暈,頭痛,不安,興奮,易刺激等が現れることがある

(ケ)過敏症:過敏症状又は光線過敏症が現れた場合には中止する

(コ)その他:口渇,鼻閉,倦怠感,発熱,浮腫,尿閉,無尿,頻尿,尿失禁,皮膚の色素沈着等が現れることがある

(7)高齢者への投与:高齢者では起立性低血圧,錐体外路症状,脱力感,運動失調,排泄

障害等が起こりやすいので,患者の状態を観察しながら慎重に投与する

(8)妊婦・授乳婦への投与

(a)動物実験で,胎児死亡,流産,早産等の胎児毒性が報告されている。また,妊婦に投与した場合,新生児に振戦等の症状が現れることがあるので,妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい

(b)母乳中へ移行することが報告されている

(9)適用上の注意

(a)投与経路(注射):経口投与が困難な場合や緊急の場合,また,経口投与が不十分と考えられる場合にだけ使用する。なお,経口投与が可能で効果が十分と判断された場合には,速やかに経口投与に切り換える

(b)投与時:(内服)治療初期に起立性低血圧が現れることがあるので,このような症状が現れた場合には減量等適切な処置を行う。(注射)筋注により局所の発赤,発熱,腫

脹,壊死,化膿等がみられることがある

(c)投与速度(注射):起立性低血圧が現れることがあるので,注射方法について十分注意し,その注射速度はできるだけ遅くする

(10)過量投与

(a)徴候,症状:傾眠から昏睡までの中枢神経系の抑制,血圧低下と錐体外路症状である。その他,激越と情緒不安,けいれん,口渇,腸閉塞,心電図変化及び不整脈等が現れる可能性がある

(b)治療:本質的には対症療法かつ補助療法である。(内服)早期の胃洗浄は有効である

(11)その他の注意

(a)制吐作用を持つため,他の薬剤に基づく中毒,腸閉塞,脳腫瘍等による嘔吐症状を不顕性化することがある

(b)治療中,原因不明の突然死が報告されている

(12)取扱い上の注意

(a)多量ないし恒常的に取り扱う際には,ときに過敏症状を呈することがあるので,この場合はゴム手袋を使用するか,しばしば手や顔等を洗浄するなど露出皮膚面に対する一般的保護手段をとる

(b)(コントミン)散50%及び顆粒は特殊被膜を施してあるので,調剤時,乳棒で強く研磨しない

(13)遮光・室温保存

(14)規制等:指,劇(25 mg錠以下とシロップを除く),塩酸クロルプロマジン・塩酸クロルプロマジン錠・塩酸クロルプロマジン注射液局

【作用】

(1)薬効薬理

(a)ED50(mg/kg,経口)

(ア)抗アポモルヒネ作用:運動高進(マウス)4.8,噛み行動(ラット)15,嘔吐(イヌ)3

(イ)自発運動抑制作用(マウス)4.8

(ウ)条件回避反応抑制作用:Pole‐climbing法(ラット)13,Sidman‐type法(ラット)11

(エ)睡眠増強作用:ヘキソバルビタ−ル(マウス)5

(b)マウスで,電気刺激法及びWrithing‐syndrome法により鎮痛作用

(c)ラットで,体温降下作用

(2)非臨床試験 毒性LD50(mg/kg)(塩酸クロルプロマジン)マウス:経口=405,皮下=245,腹腔内=115,ラット:経口=500。(ヒベンズ酸塩)マウス:経口=♂547.3♀584.1,腹腔内=♂201.3♀187.5,ラット:経口=♂478.3♀383.4,腹腔内=♂142.3♀133.5。(タンニン酸塩)マウス:経口=♂675.4♀769.5,腹腔内=♂122.2♀115.4,ラット:経口=♂501♀601.8,腹腔内=♂132.6♀102.8 (吉富による)

【長期投与】

<内服>精神分裂病(03):30日 1