ハルシオンについて

 

【警告】

本剤の服用中に、もうろう状態が現れることがある。また、入眠までの、あるいは中途覚醒時の出来事を記憶していないことがあるので注意すること。

【禁忌】

1.本剤に対し過敏症のある患者

2.急性狭隅角緑内障のある患者

3.重症筋無力症の患者〔筋弛緩作用により、症状を悪化させるおそれがある。〕

4.次の薬剤を投与中の患者:イトラコナゾール、フルコナゾール、HIVプロテアーゼ阻害薬(インジナビル、リトナビル等)

【原則禁忌】(次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること。)

肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期等で呼吸機能が高度に低下している患者〔呼吸抑制により炭酸ガスナルコーシスをおこしやすいので投与しないこと。やむを得ず投与が必要な場合には、少量より投与を開始し、呼吸の状態を見ながら投与量を慎重に調節すること。〕

【効能・効果】

○不眠症

○麻酔前投薬

【用法・用量】

○不眠症 

通常成人には1回トリアゾラムとして0.25mgを就寝前に経口投与する。高度な不眠症には0.5mgを投与することが出来る。なお、年齢・症状・疾患などを考慮して適時増減するが、高齢者には1回0.125mg〜0.25mgまでとする。

○麻酔前投薬

手術前夜:通常成人には1回トリアゾラムとして0.25mgを就寝前に経口投与する。なお、年齢・症状・疾患などを考慮し、必要に応じ0.5mgを投与することが出来る。

【使用上の注意】

1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)

(1)心障害のある患者

(2)肝障害のある患者〔肝臓で代謝されるため、クリアランスが低下するおそれがある。〕

(3)腎障害のある患者

(4)脳に器質的以上のある患者〔作用が強く現れることがある〕

(5)高齢者

(6)衰弱患者〔副作用が現れやすい〕

2.重要な基本的注意

(1)本剤に対する反応には個人差があり、また、眠気、めまい、ふらつき及び健忘等は用量依存的に現れるので、本剤を投与する場合には少量(1回0.125mg以下)から投与を開始すること。やむを得ず増量する場合は観察を十分に行いながら慎重に行うこと。ただし、0.5mgを越えないこととし、症状の改善に伴って減量に努めること。

(2)不眠症に対する投与は継続投与を避け、短期間にとどめること。やむを得ず継続投与を行う場合には、定期的に患者の状態、症状等の異常の有無を十分確認の上慎重に行うこと。

(3)不眠症には、就寝の直前に服用させること。また、服用して就寝した後、患者が起床して活動を開始するまでに十分な睡眠時間がとれなかった場合、又は睡眠途中において一時的に起床して仕事等を行った場合などにおいて健忘があらわれたとの報告があるので、薬効が消失する前に活動を開始する可能性があるときは服用させないこと。

(4)本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

3.相互作用

(1)併用禁忌(併用しないこと)
薬剤名等
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
イトラコナゾール(イトリゾール)、フルコナゾール(ジフルカン)、HIVプロテアーゼ阻害剤インジナビル(クリキシバン)、リトナビル(ノービア)等  本剤の血中濃度が上昇し、作用の増強及び作用時間の延長が延長が起こるおそれがある。  本剤とこれらの薬剤の代謝酵素が同じ(CYP3A4)であるため、本剤の代謝が阻害される。 

(2)併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等
臨床症状・措置方法
機序・危険因子
アルコール 

中枢抑制剤 

フェノチアジン誘導体 

バルビツール酸誘導体等 

精神神経系等の副作用があらわれるおそれがある。なお、できるだけ飲酒は避けさせること。  中枢神経抑制作用が増強される。 
ミコナゾール 

エリスロマイシン 

クラリスロマイシン 

リン酸オレアンドマイシン 

ジョサマイシン 

シメチジン 

ジルチアゼム 

本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。  本剤とこれらの薬剤の代謝酵素が同じ(CYP3A4)であるため、本剤の代謝が阻害される。 
リファンピシン  本剤の作用が低下するおそれがある。  本剤の代謝が促進される。 
モノアミン酸化酵素阻害剤  多汗、起立性低血圧等の副作用があらわれるおそれがある。  機序不明 

4.副作用

調査症例数12930例中、副作用発現症例は338例(2.61%)であり、副作用発現件数は延べ700件であった。その主なものは、めまい・ふらつき164件(1.27%)、眠気155件(1.20%)、倦怠感100件(0.77%)、頭痛、・頭重91件(0.7%)等であった。(承認時までの調査及び市販後の使用成績調査の集計)

(1)重大な副作用

1)薬物依存(頻度不明)、離脱症状(頻度不明):大量連用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、用量を超えないよう慎重に投与すること。

また、大量投与又は連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、痙攣発作、せん妄、振戦、不眠、不安、幻覚、妄想等の離脱症状が現れることがあるので、投与を中止する場合に徐々に減量するなど慎重に行うこと。特に、痙攣の既往歴のある患者では注意して減量すること。

2)精神症状(頻度不明):刺激興奮、錯乱、攻撃性、夢遊病、幻覚、妄想、激越等の精神症状があらわれることがあるので、患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には投与を中止すること。精神分裂病等の精神障害者に投与する際は、特に注意すること。

3)呼吸抑制(頻度不明):呼吸抑制があらわれることがある。また、呼吸機能が高度に低下している患者に投与した場合、炭酸ガスナルコーシスを起こすことがあるので、このような場合には気道を確保し、換気をはかるなど適切な処置を行うこと

4)一過性前向性健忘(0.12%)、もうろう状態(0.05%):一過性前向性健忘(中途覚醒時の出来事を覚えていない等)、また、もうろう状態が現れることがあるので、本剤を投与する場合には少量から開始するなど、慎重に行うこと。

(2)その他の副作用

0.1〜5%未満
0.1%未満
頻度不明
精神神経系
眠気、ふらつき、めまい、頭痛、頭重  不安、不眠、いらいら感、協調運動失調、不快感、舌のもつれ、言語障害、見当識障害、意識混濁、耳鳴、視覚異常(霧視、散瞳、眼精疲労)、多夢、魔夢  知覚減退、転倒、多幸症、鎮静 
肝臓
GOT、GPT、γ−GTP、アルカリフォスファターゼの上昇 
消化器
口渇
食欲不振、悪心・嘔吐、下痢、腹痛、心弘部不快感 
循環器
血圧上昇、動悸、胸部圧迫感 
血圧降下
過敏症
発疹、掻痒 
骨格筋
倦怠感
脱力感等の筋緊張感低下症状 
その他
味覚変化、皮下出血、尿失禁、便失禁 
尿閉
注:このような症状があらわれた場合には投与を中止すること

5.高齢者への投与

高齢者では、少量から投与を開始すること。〔運動失調等の副作用が発現する。〕

6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与

(1)妊婦

1)妊婦(3ヶ月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。〔妊娠中に他のベンゾジアゼピン系化合物の投与を受けた患者の中に奇形児等の障害児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査報告がある。〕

2)妊娠後期の婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。〔新生児に哺乳困難、筋緊張低下、傾眠、黄疸の増強等の症状を起こすことが他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム、ニトラゼパム)で報告されている。〕

3)分娩前に連用した場合、出産後新生児に禁断症状(神経過敏、振戦、過緊張等)があらわれることが、他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)で報告されている。

(2)授乳婦

授乳婦への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合には授乳を避けさせること。〔ヒト母乳中へ移行し、新生児に傾眠、体重減少等を起こすことが他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)で報告されており、また黄疸を増強する可能性がある。〕

7.小児への投与

小児等に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)。

8.過量投与

症状に関して、外国で以下の報告がある。万一過量投与に至った場合には、以下を参考の上、適切な処置を行うこと。

(1)症状

本剤の過量投与により、傾眠、錯乱、協調運動障害、不明瞭言語を生じ、昏睡に至ることがある。また、呼吸抑制、無呼吸、痙攣発作があらわれることがある。

他のベンゾジアゼピン系薬剤と同様に本剤の過量投与において死亡が報告されている。また、本剤を含むベンゾジアゼピン系薬剤とアルコールとを過量に併用した患者で死亡が報告されている。

(2)処置

呼吸、脈拍、血圧の監視を行うとともに、胃洗浄、輸液、気道の確保等の適切な処置を行うこと。また、本剤の過量投与が明白又は疑われた場合の処置としてフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与する場合には、使用前にフルマゼニルの使用上の注意(禁忌、慎重投与、相互作用等)を必ず読むこと。

9.その他の注意

(1)投与した薬剤が特定されないままにフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与された患者で、新たに本剤を投与する場合、本剤の鎮静・抗痙攣作用が変化、遅延するおそれがある。

(2)外国において、本剤を1〜2週間程度投与された患者で、投与期間中に日中不安、激越があらわれたことが報告されている。また、情緒不安、失神、躁状態、離人症、抑うつ状態、異常感覚、錯感覚、利尿剤併用中の患者の肝不全からの死亡、胆汁うっ滞性黄疸、舌灼熱感、舌炎、口内炎、うっ血、頻脈、筋緊張異常、筋痛、疲労、性欲減退、月経不順、発汗があらわれたとの報告がある。

【薬物動態】

健康成人男子(32名)に対し、トリアゾラム0.5mgを単回経口投与した場合の吸収は速やかであり、投与後平均1.2時間で最高血漿中濃度に達する。また、排泄も速やかであり、血漿中濃度消失半減期は平均2.9時間である。

〔参考〕

外国人データでは、経口投与時の吸収率は少なくとも85%である。代謝物は主としてα−hydroxytriazolamと4-hydroxytriazolamである。前者は未変化体より弱い活性を有するが血漿中濃度は低く、後者は活性がない。排泄パターンは尿中排泄型であり、総排泄率は尿中82%、糞便中8%である。尿中への排泄は速やかで、投与後の10時間及び24時間までの排泄率は尿中総排泄率の各々73%及び94%である。

ラットの経口投与において、投与後5分ほどでほとんどの器官及び組織に分布し、15分〜1時間で最高血中濃度に達した。中枢神経系では投与15分で最高濃度に達し、その後は血中よりも速やかに減少し消失した。なお、血液脳関門及び胎盤関門を通過し、また乳汁中への移行が認められた。

【臨床成績】

比較試験を含む臨床試験において、入眠時間の短縮、睡眠時間の延長並びに途中覚醒の減少等の有意な効果が認められ、不眠症に対する有用性が認められた。

【薬効薬理】

ジアゼパム、ニトラゼパム等既存のベンゾジアゼピン系化合物と類似した作用スペクトラムを有し、作用の強さはマウス、ラット、ウサギにおいて概してジアゼパムの4〜5倍であるが、特に睡眠増強作用及び抗不安作用は強く、各々ジアゼパムの約45倍(マウス)及び約10倍(ラット)である。健康成人の睡眠ポリグラフィ実験では睡眠潜時を短縮し、睡眠率を増加させる。

作用機序は既存のベンゾジアゼピン系化合物と同様、大脳辺縁系及び視床下部における情動機構の抑制、並びに大脳辺縁系ぶ活機構の抑制によると考えられている。

 

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