ドグマチールはbenzamide系の薬剤で、視床下部作用性抗胃潰瘍剤及び精神・情動安定剤としての適応を有する。
〔効能・効果〕
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〔用法・用量〕
○胃・十二指腸潰瘍
スルピリドとして、通常成人1日150mgを3回に分割経口投与する。なお、症状により適時増減する。
○精神分裂病
スルピリドとして、通常成人1日300〜600mgを分割経口投与する。なお、年齢、症状により適時増減するが、1日1200mgまで増量することが出来る。
○うつ病・うつ状態
スルピリドとして、通常成人1日150〜300mgを分割経口投与する。なお、年齢、症状により適時増減するが、1日600mgまで増量することが出来る。
〔使用上の注意〕
胃・十二指腸潰瘍の場合
1.一般的注意
(1)本剤の投与により、間脳の内分泌機能調節以上、錐体外路症状等の副作用が現れることがあるので、本剤の投与に関しては、有効性と安全性を十分のうえ使用すること。
(2)ときに眠気、めまい等があらわれることがあるので、本剤の投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
褐色細胞腫の疑いのある患者{急激な昇圧発作を起こすおそれがある}
3.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(1)小児{錐体外路症状が発現しやすいため、過量投与にならないよう注意すること}
(2)高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
(3)腎障害のある患者{高い血中濃度が持続するおそれがある}
(4)脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者{悪性症候群が起こりやすい}
4.相互作用
併用に注意すること
(1)抗コリン剤(アトロピン、メチルスコポラミン等){薬理学的に拮抗する面があるので、抗コリン剤との併用により本剤の作用が減弱するおそれがある}
(2)ジギタリス剤{ジギタリス剤飽和時の指標となる悪心・嘔吐、食欲不振症状を不顕性化する事がある}
(3)他のベンザミド系薬剤(メトクロプラミド、チアプリド等){内分泌機能調整異常又は錐体外路症状が発現しやすくなる}
5.副作用(まれに:0.1%未満、ときに:0.1〜5%未満、副詞なし:5%以上又は頻度不明)
(1)重大な副作用
1)悪性症候群(syndrome malin):無動、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱が見られる場合は、投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。本症発症時には、白血球の増加や血清CPKの上昇が見られることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下が見られることがある。
なお、高熱が持続し、意識障害、呼吸困難、循環虚脱、脱水症状、急性腎不全へと移行し、死亡した例が報告されている。
2)遅発性ジスキネジア:長期投与により、まれに口周部等の不随意運動があらわれ投与中止後も持続することがある。
(2)その他の副作用
1)内分泌:ときに間脳の内分泌機能調節異常(ゴナドトロピン分泌及びプロラクチン分泌異常)に由来すると推定される無月経、持続性乳汁分泌及び女性化乳房等があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止すること。
2)錐体外路症状:まれに振戦、舌のもつれ、焦燥感等が現れることがあるので、このような場合には投与を中止すること。
3)消化器:ときに口渇、胸やけ、悪心・嘔吐、便秘等が現れることがある。
4)その他:まれに発疹、浮腫があらわれることがあるので、このような場合には投与を中止すること。また、ときに熱感、倦怠感、不眠、眠気、めまい、ふらつき、また、まれに性欲低下があらわれることがある。
6.高齢者への投与
本剤は、主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多く、高い血中濃度が持続するおそれがあるので、副作用(錐体外路症状等)の発現に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど慎重に投与すること。
7.妊婦への投与
妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、授乳中の婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
8.授乳婦への投与
新生児に対する安全性は確立していないので、授乳中の婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.適用時の注意
薬剤交付時:PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、さらには穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。)
10.その他
(1)制吐作用を有するため、腸閉塞、脳腫瘍等による嘔吐症状を不顕性化することがあるので観察を十分に行い、慎重に投与すること。
(2)動物の慢性毒性試験で精巣萎縮を、また、繁殖試験において妊娠率の低下を起こすとの報告がある。
(3)ラットで臨床用量の16倍(40mg/kg/日)以上、また、マウスで臨床用量の240倍(600mg/kg/日)以上を長期間経口投与した試験において、下垂体、乳腺等での腫瘍発生頻度が対照群に比し高いとの報告がある。
精神分裂病、うつ病・うつ状態の場合
1.一般的注意
ときに眠気、めまい等があらわれることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
(1)褐色細胞腫の疑いのある患者{急激な昇圧発作を起こすおそれがある}
(2)幼小児(「小児への投与」の項参照)
3.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(1)心・血管疾患、低血圧又はそれらの疑いのある患者{症状を悪化させるおそれがある}
(2)腎障害のある患者{高い血中濃度が持続するおそれがある}
(3)高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
(4)脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者{悪性症候群が起こりやすい}
4.相互作用
併用に注意すること
他のベンザミド系薬剤(メトクロプラミド、チアプリド等){内分泌機能調節異常又は錐体外路症状が発現しやすくなる}
5.副作用
(まれに:0.1%未満、ときに:0.1〜5%未満、副詞なし:5%以上又は頻度不明)
(1)重大な副作用
1)悪性症候群(syndrome malin):無動、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱が見られる場合は、投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。本症発症時には、白血球の増加や血清CPKの上昇が見られることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下が見られることがある。
なお、高熱が持続し、意識障害、呼吸困難、循環虚脱、脱水症状、急性腎不全へと移行し、死亡した例が報告されている。
2)痙攣:まれに痙攣が現れることがある。このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
3)遅発性ジスキネジア:長期投与によりまれに口周部等の不随意運動があらわれ投与中止後も持続することがある。
(2)その他の副作用
1)心・血管系:急激に増量した場合、心電図に変化が見られることがあるので慎重に投与すること。また、ときに血圧下降が、また、まれに血圧上昇、胸内苦悶、頻脈等があらわれることがある。
2)錐体外路症状:ときにパーキンソン症候群(振戦、筋強剛、流涎等)、ジスキネジア(舌のもつれ、言語障害、頸筋捻転、眼球回転、注視痙攣、嚥下困難等)、アカシジア(静坐不能)があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には、減量又は抗パーキンソン剤の併用等適切な処置を行うこと。
3)内分泌:ときに間脳の内分泌機能調節異常(ゴナドトロピン分泌及びプロラクチン分泌異常)に由来すると推定される乳汁分泌、女性化乳房、月経異常、射精不能等があらわれることがあるので観察を十分に行い、慎重に投与すること。
4)精神神経系:ときに睡眠障害、不穏・焦燥、眠気、興奮が、また、まれに物忘れ、ぼんやり、徘徊・多動、抑制欠如、無欲状態等があらわれることがある。また、ときに躁転や躁状態があらわれることがある。
5)自律神経系:ときに脱力・倦怠感、口渇、頭痛・頭重、めまい・浮遊感、しびれ、排尿困難、運動失調が、また、まれに熱感・熱発、発汗、鼻閉、肩こり、手の脱力感等があらわれることがある。
6)消化器:ときに悪心・嘔吐、便秘、食欲不振、胃部・腹部不快感が、また、まれに下痢、胸やけ、腹痛、食欲亢進等があらわれることがある。
7)肝臓:ときにGOT、GPT、アルカリフォスファターゼ等の上昇がみられることがある。
8)皮膚:ときに発疹が、また、まれに湿疹憎悪、痒み等があらわれることがあるので、このような場合には投与を中止すること。
9)眼:まれに視力障害、眼球冷感・重感、眼のちらつき等があらわれることがある。
10)その他:ときに浮腫があらわれることがあるので、このような場合には投与を中止すること。また、ときに体重増加、性欲減退が、また、まれに頻尿、腰痛等があらわれることがある。
6.高齢者への投与
本剤は、主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多く、高い血中濃度が持続するおそれがあるので、副作用(錐体外路症状等)の発現に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど慎重に投与すること。
7.妊婦への投与
本剤の妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益制が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
8.授乳婦への投与
本剤の新生児に対する安全性は確立していないので、授乳中の婦人には、治療上の有益制が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.幼小児への投与
本剤の幼小児に対する有効性と安全性は確立していないので、投与しないこと。
10.適用上の注意
薬剤交付時:PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、さらには穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。)
11.その他
(1)制吐作用を有するため、腸閉塞、脳腫瘍等による嘔吐症状を不顕性化することがあるので観察を十分に行い、慎重に投与すること。
(2)動物の慢性毒性試験で精巣萎縮を、また、繁殖試験において妊娠率の低下を起こすとの報告がある。
(3)ラットで臨床用量の16倍(40mg/kg/日)以上、また、マウスで臨床用量の240倍(600mg/kg/日)以上を長期間経口投与した試験において、下垂体、乳腺等での腫瘍発生頻度が対照群に比し高いとの報告がある。
〔薬効薬理〕
胃・十二指腸潰瘍の場合
1.ラットでの熱灼潰瘍及び酢酸潰瘍の実験で潰瘍を縮小させ、治癒促進効果を示す。
2.イヌ及びウサギの胃・十二指腸における血流を増加させる。また、ラットでの視床下部後部電気刺激による胃粘膜血流の停滞ないし部分的虚血現象を抑制する。
3.イヌの胃及び小腸の運動を亢進し、内容物の排出及び通過を促進する。
精神分裂病、うつ病・うつ状態の場合
1.強力な抗ドーパミン作用(ラット)を有し、多の生体アミン抑制作用(ラット)をほとんど示さない。
2.イミプラミンでみられるラットでの生体アミンの神経終末への取り込み抑制作用を示さないが、サルでのレセルピン拮抗作用及び嗅球除去ラットでのmuricide behavior(同一ゲージ内に入れたマウスをかみ殺す行動)抑制作用を示す等、イミプラミンに類似した作用を示す。
3.クロルプロマジンやハロペリドールが強い作用を示すマウスでの麻酔遷延作用を全く示さず、眠気、脱力感等の自覚症状(ヒト)はみられない。
〔体内薬物動態〕
1.血清中濃度:健常人(男子)にスルピリド50mg又は100mgを1回経口投与すると、血清中濃度は投与約2時間後にピークに達した。
2.排泄:健常人(男子)にスルピリド50mg又は100mgを1回経口投与すると、投与24時間後までに投与量の26%〜30%が未変化体のまま尿中に排泄された。
〔臨床適用〕
1.臨床効果
(1)胃・十二指腸潰瘍:一般臨床試験536例(経口、筋注、筋注→経口投与例を含む)による胃・十二指腸潰瘍に対する治癒率は63.6%(341/536例)であり、治癒、縮小を含めると84.5%(453/536例)が有効であった。
(2)精神分裂病:一般臨床試験683例の精神分裂病に対する経口剤の総合効果は、終始経口投与で38.5%(230/597例)、やや有効も含めると62%(370/597例)、筋注→経口投与では67.4%(58/86例)、やや有効も含めると83.7%(72/86例)で、病期別総合効果はいずれの投与法によっても、発病初期、急性憎悪期が慢性期よりまさり、病型別には妄想型、緊張型が破瓜型よりまさっていた。
(3)うつ病・うつ状態:一般臨床試験498例(経口、筋注、筋注→経口投与例を含む)によるうつ病・うつ状態に対する総合効果は56.2%(280/498例)、やや有効も含めると77.7%(387/498例)であった。
2.副作用
(1)胃・十二指腸潰瘍:総症例6078例中、副作用発現例は225例で発現頻度は3.7%であった。
(2)精神分裂病、うつ病・うつ状態:総症例17010例中副作用発現例は2136例で発現頻度は12.56%であった。
〔非臨床試験〕
1.急性毒性(LD50 mg/kg)
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2.亜急性毒性・慢性毒性
SD系ラットに500〜4000mg/kgを1ヶ月間、250〜2400mg/kgを6ヶ月間経口投与した試験では、250mg/kg以上の投与群で投与6ヶ月後に、1000mg/kg以上の投与群で投与1ヶ月後にそれぞれ子宮重量の減少がみられた。また、雌雄ともに、2000mg/kg以上の投与群で非特異的な全身抑制症状、体重増加度の減少等が、4000mg/kg投与群で死亡例がそれぞれみられた。
ビーグル犬に200及び500mg/kgを3ヶ月間、50及び100mg/kgを6ヶ月間経口投与した試験では、下垂体の刺激像が特に雄で顕著にみられ、また、100mg/kg以上の投与群で精巣・前立腺重量の減少、精子形成の低下、前立腺の萎縮がみられたが、これらの変化は投薬中止3ヶ月後にはほぼ回復していた。
3.生殖試験
SD系ラットに32〜125mg/kgを経口投与した妊娠前及び妊娠初期投与試験では、妊娠率の低下がみられた。これは主として雌の内分泌機能の変化によるものと思われ、投与中止により速やかに回復した。
ICR系マウスに125〜500mg/kg、SD系ラットに500〜2000mg/kgを経口投与した胎児の器官形成期投与試験では、いずれも催奇形性はみられなかった。
SD系ラットに32及び250mg/kgを経口投与した周産期及び授乳期投与試験では、250mg/kg投与群で軽度の出産遅延がみられたが、仔の生殖能等の機能に対する影響はなかった。
4.薬物依存性
バルビタール依存サルでの1回40mg/kg及び80mg/kg経口投与による交叉身体依存性試験、サルでの40mg/kg及び80mg/kgを各2週間毎日1回反復経口投与後、1週間の禁断による身体依存性形成試験並びに胃内連続自由摂取試験により、身体的にも精神的にもサルに依存性を形成しないことが確認されている。
効能・効果のうち、胃・十二指腸潰瘍、精神分裂病は厚生省告示第111号(平成6年3月29日付)により1回30日分投薬が認められている。