リーゼについて

 

【組成】 [顆]:10%

 [錠]:1錠中5 mg,10 mg

 クロチアゼパムは白色〜淡黄白色の結晶又は結晶性の粉末で,においはなく,味はわずかに苦い。クロロホルムに極めて溶けやすく,メタノ−ル,氷酢酸,エタノ−ル,アセトン又は酢酸エチルに溶けやすく,エ−テルにやや溶けやすく,水にほとんど溶けない。0.1 N塩酸試液に溶ける。光によって徐々に着色する。融点:106〜109゜

【適応】

(1)心身症(消化器疾患,循環器疾患)における身体症候並びに不安・緊張・心気・抑うつ・睡眠障害

(2)麻酔前投薬

(3)次の疾患におけるめまい・肩こり・食欲不振:自律神経失調症。(3)はエモレックス,ベストマ−ゲを除く

【用法】 用量は患者の年齢,症状により決定するが,1日15〜30 mg,3回に分服。麻酔前投薬には就寝前又は手術前10〜15 mg

【注意】

(1)一般的注意:眠気,注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので,投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する

(2)禁忌

(a)急性狭隅角緑内障の患者[抗コリン作用により,症状を悪化させるおそれがある]

(b)重症筋無力症の患者[筋弛緩作用により,症状を悪化させるおそれがある]

(3)慎重投与

(a)心障害のある患者[血圧低下が現れるおそれがあり,心障害のある患者では症状の悪化につながるおそれがある]

(b)肝障害,腎障害のある患者[作用が強く現れるおそれがある]

(c)脳に器質的障害のある患者[作用が強く現れるおそれがある]

(d)乳・幼児

(e)高齢者(高齢者への投与の項参照)

(f)衰弱患者[作用が強く現れるおそれがある]

(g)中等度又は重篤な呼吸不全のある患者[炭酸ガスナルコ−シスを起こしやすい]

(4)相互作用 併用注意

(a)中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体,バルビツ−ル酸誘導体等),MAO阻害剤[これらの作用が増強されることがあるので,併用しないことが望ましいが,やむを得ず投与する場合には慎重に投与する]

(b)アルコ−ル[相互に作用が増強されることがある]

(5)副作用

(a)重大な副作用 依存性:大量連用によりまれに薬物依存を生じることがあるので,観察を十分に行い,用量を超えないよう慎重に投与する。また,大量投与又は連用中における投与量の急激な減少ないし中止により,まれにけいれん発作,ときにせん妄,振戦,不眠,不安,幻覚,妄想等の禁断症状が現れることがあるので,中止する場合には,徐々に減量するなど慎重に行う

(b)その他の副作用

(ア)精神神経系:眠気,ふらつきが,また,ときに眩暈,歩行失調,霧視,頭痛・頭重,振戦,手足のしびれが,また,まれに舌のもつれが現れることがある

(イ)肝臓:まれにGOT,GPTの上昇等が現れることがある

(ウ)循環器:ときに耳鳴,血圧低下,立ちくらみ,頻脈が現れることがある

(エ)消化器:ときに悪心・嘔吐,食欲不振,胃痛,便秘,口渇等が現れることがある

(オ)皮膚:ときに発疹,かゆみが現れることがある

(カ)骨格筋:ときに易疲労・倦怠感,脱力感等の筋緊張低下症状が,また,ときに筋痛,関節痛が現れることがある

(キ)その他:まれに浮腫が現れることがある

(6)高齢者への投与:高齢者では,運動失調等の副作用が発現しやすいので,少量から開始するなど慎重に投与する

(7)妊婦への投与

(a)妊娠中に他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)の投与を受けた患者の中に奇形児等の障害児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査報告があるので,妊婦(3カ月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にだけ投与する

(b)妊娠後期に他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム,ニトラゼパム)を連用していた患者から出生した新生児に哺乳困難,筋緊張低下,傾眠等の症状が発現したとの報告があるので,妊娠後期の婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にだけ投与する

(c)分娩前に連用した場合,出産後新生児に禁断症状(神経過敏,振戦,過緊張など)が現れることが,他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)で報告されている

(d)ヒト母乳中へ移行し,新生児に嗜眠,体重減少等を起こすことが,他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)で報告されており,また黄疸を増強する可能性があるので,授乳婦への投与は避けることが望ましいが,やむを得ず投与する場合は授乳を避けさせる

(8)遮光・室温保存

(9)規制等:向指要,クロチアゼパム局

【作用】

(1)薬効薬理:視床下部及び大脳辺縁系,特に扁桃核に作用し,不安・緊張などの情動異常を改善

(a)静穏作用

(ア)闘争性マウス,嗅球摘出ラットによる馴化作用及びサルの行動観察ではジアゼパムよりやや弱い

(イ)(ラット)コンフリクト行動(神経症的行動モデル)の寛解作用はジアゼパムより強い

(ウ)抗不安作用との相関が高いマウス,ラットでの抗ペンチレンテトラゾ−ル作用はジアゼパムより強い

(エ)(ラットin vitro)脳内ベンゾジアゼピン受容体に対しジアゼパムとほぼ同等の高い親和性

(b)筋弛緩作用:(マウスの回転カゴ試験及び回転棒試験,ラット後肢試験)筋弛緩作用はジアゼパムより弱い

(c)鎮静・催眠作用:(マウス)Photocell法による自発運動抑制作用,クロルプロチキセン麻酔増強作用及び正向反射に及ぼす影響はジアゼパムより弱い

(2)体内薬物動態:健康成人に10 mg 1回経口投与時の血中濃度は未変化体が最も高く,代謝物の中では7位エチル基のα‐オキソ化・N‐脱メチル化体と7位エチル基のα‐水酸化体が比較的高い。半減期は未変化体及び活性代謝物N‐脱メチル化体,α‐水酸化体では4〜5時間,α・β‐水酸化体は11時間,α‐水酸化・N‐脱メチル化体とα‐オキソ化・N‐脱メチル化体は18時間

(3)臨床適用

(a)臨床効果(二重盲検比較試験を含む179施設1,393例の有効率。麻酔前投薬10〜15mg,その他1日15〜30 mg):心身症(消化器疾患,循環器疾患)58.5%(523/894),自律神経失調症57.6%(83/144),麻酔前投薬63.1%(224/355)。二重盲検比較試験で有用性が認められている

(b)副作用及び臨床検査値の変動:副作用は4.9%(692/14,032)に,眠気2.8%,めまい・ふらつき0.9%,倦怠感0.3%等。臨床検査値ではGOT,GPT値の上昇7例

(4)非臨床試験

(a)毒性

(ア)LD50(mg/kg)ddマウス:経口=♂957.2♀1011.1,皮下=♂2877.9♀2837.2,腹腔内=♂♀440.2,Wistarラット:経口=♂1616.7♀1460.7,皮下>♂♀5000,腹腔内=♂707.7♀681.8

(イ)胎児試験:100 mg/kg投与群にマウス胎児の発育と骨格に軽度の影響

(ウ)薬物依存性:ラット及びイヌでは,薬物依存性はベンゾジアゼピン系化合物に類似し,その程度はジアゼパムより弱い

(b)動物における吸収・分布・排泄

(ア)ラットに35S‐標識体を経口又は腹腔内投与後,3日間の尿中に約50%,糞中に約40%排泄。投与経路別排泄率に差がなく,消化管吸収は良好

(イ)ラットに35S‐標識体を経口投与時の各組織中濃度は0.5〜1時間後に最高,肝,腎及び副腎に高濃度。3週間にわたる連続投与でも各組織中濃度は1回投与時に比べ著しい上昇はなく,蓄積性は認められない

(ウ)ラットに35S‐標識体を経口投与後,1日目に尿中に約40%,糞中に30%,3日目には尿中に約50%,糞中に約40%排泄 (吉富による)

【長期投与】

<内服>高血圧性疾患(11):30日,機能性消化障害(他に分類されないもの)(22):30日

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