セルシンについて

 

【組成】 [散]・[細]:1%

 [錠]:1錠中1 mg,2 mg,3 mg,5 mg,10 mg

 [シ]:0.1%

 [注]:1アンプル(1 ml,2 ml),1 ml中5 mg。pH:6.0〜7.0 浸透圧比:(セルシン)約30,(ホリゾン)約27

 [坐]:1個中4 mg,6 mg,10 mg

 ジアゼパムは白色〜淡黄色の結晶性の粉末で,においはなく,味はわずかに苦い。アセトンに溶けやすく,無水酢酸又はエタノ−ルにやや溶けやすく,エ−テルにやや溶けにくく,無水エタノ−ルに溶けにくく,水にほとんど溶けない。融点:130〜134゜

【適応】 [内]:(1)神経症における不安・緊張・抑うつ

(2)うつ病における不安・緊張

(3)次の疾患における不安・緊張・抑うつ及び筋緊張の軽減:高血圧症,動脈硬化症,肺結核,がん,自律神経失調症,甲状腺機能高進症,胃・十二指腸潰瘍,幽門けいれん症,神経性嘔吐,周期性嘔吐,更年期障害,月経困難症,月経前緊張症,眼精疲労,神経性頻尿,アルコ−ル中毒,慢性リウマチ性疾患,腰痛症,頚肩腕症候群,頭部外傷後遺症,脳炎後遺症,不随意運動症

(4)次の疾患における筋緊張の軽減:脳脊髄疾患に伴う筋けいれん・疼痛

(5)麻酔前投薬

 [注]:次の疾患及び状態の不安・興奮・抑うつの軽減:麻酔前,麻酔導入時,麻酔中,術後,てんかん様重積状態,てんかん性もうろう状態,不安神経症,ヒステリ−,心気症,抑うつ状態,アルコ−ル中毒,面接前処置,分娩時

 [坐]:小児に対して次の目的に用いる:熱性けいれん及びてんかんのけいれん発作の改善

【用法】 [内]:用量は患者の年齢,症状により決定する。1回2〜5 mg,1日2〜4回。外来患者は原則として1日15 mg以内とする。筋けいれん患者は1回2〜10 mg,1日3〜4回。小児1日12〜4歳2〜10 mg,3歳以下1〜5 mg,1〜3回に分服

 [注]:疾患の種類,症状の程度,年齢及び体重等を考慮して用いる。初回10 mgをできるだけ緩徐に筋注又は静注。静注には,なるべく太い静脈を選んで,できるだけ緩徐に(2分以上の時間をかけて)注射。以後必要に応じて3〜4時間ごとに注射

 [坐]:小児1回0.4〜0.5 mg/kg,1日1〜2回,直腸内に挿入(増減)。1日1 mg/kgを超えないようにする

【注意】 [内]・[注]:

(1)一般的注意:眠気,注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので,投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意する

(2)禁忌

(a)急性狭隅角緑内障のある患者[弱い抗コリン作用により眼圧が上昇し,症状が悪化するおそれがある]

(b)重症筋無力症のある患者[筋弛緩作用により症状が悪化するおそれがある]

(c)(注射)ショック,昏睡,バイタルサインの悪い急性アルコ−ル中毒の患者[ときに頻脈,徐脈,血圧低下,循環性ショックが現れることがある]

(3)次の患者には筋注しない:未熟児,新生児,乳児,幼児,小児

(4)慎重投与

(a)心障害,肝障害,腎障害のある患者[心障害では症状が悪化,肝・腎障害では排泄が遅延するおそれがある]

(b)脳に器質的障害のある患者[作用が強く現れる]

(c)乳児,幼児[作用が強く現れる]

(d)高齢者[高齢者への投与の項参照]

(e)衰弱患者[作用が強く現れる]

(f)(内服)中等度又は重篤な呼吸不全のある患者[症状が悪化するおそれがある]

(g)(注射)高度重症患者,呼吸予備力の制限されている患者[静注時,無呼吸,心停止が起こりやすい]

(5)相互作用 併用注意

(a)フェノチアジン誘導体,バルビツ−ル酸誘導体等の中枢神経抑制剤,モノアミン酸化酵素阻害剤[相互に中枢神経抑制作用を増強することがある]

(b)アルコ−ル(飲酒)[相互に中枢神経抑制作用を増強することがある]

(c)シメチジン,オメプラゾ−ル[本剤のクリアランスが減少することがある]

(d)塩酸マプロチリン[相互に中枢神経抑制作用を増強することがある。また,併用中の本剤を急速に減量又は中止するとけいれん発作が起こることがある]

(e)ダントロレンナトリウム[相互に筋弛緩作用を増強することがある]

(6)副作用

(a)重大な副作用

(ア)依存性:大量連用により,まれに薬物依存を生じることがあるので,観察を十分に行い,用量を超えないよう慎重に投与する。また,大量投与又は連用中における投与量の急激な減少ないし中止により,まれにけいれん発作,ときにせん妄,振戦,不眠,不安,幻覚,妄想等の禁断症状が現れることがあるので,中止する場合には徐々に減量するなど慎重に行う

(イ)刺激興奮,錯乱:精神分裂病等の精神障害者に投与すると逆に刺激興奮,錯乱等が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には中止するなど適切な処置を行う

(ウ)呼吸抑制(内服):慢性気管支炎等の呼吸器疾患に用いた場合,呼吸抑制が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には中止するなど適切な処置を行う

(エ)舌根沈下による上気道閉塞,呼吸抑制(注射):ときに舌根の沈下による上気道閉塞が,また,慢性気管支炎等の呼吸器疾患に用いた場合,呼吸抑制が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には中止するなど適切な処置を行う

(オ)循環性ショック(注射):ときに循環性ショックが現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には中止するなど適切な処置を行う

(b)その他の副作用

(ア)精神神経系:(内服)ときに眠気,ふらつき,眩暈,歩行失調,頭痛,失禁,言語障害,また,まれに振戦,霧視,複視,多幸症等が現れることがある。(注射)ときに眠気,ふらつき,眩暈,歩行失調,頭痛,失禁,言語障害,また,まれに振戦,霧視,眼振,失神,複視,多幸症等が現れることがある

(イ)肝臓:ときに黄疸等が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場分には中止するなど適切な処置を行う

(ウ)血液:まれに顆粒球減少,白血球減少等が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には中止するなど適切な処置を行う

(エ)循環器:(内服)ときに頻脈,血圧低下等が現れることがある。(注射)ときに頻脈,徐脈,血圧低下等が現れることがある

(オ)消化器:ときに悪心,嘔吐,食欲不振,便秘,口渇等が現れることがある

(カ)過敏症:発疹等が現れることがあるので,このような場合には中止する

(キ)その他:ときに倦怠感,脱力感,浮腫が現れることがある

(7)高齢者への投与:高齢者では運動失調等の副作用が発現しやすいので,少量から開始するなど慎重に投与する

(8)妊婦・授乳婦への投与

(a)妊娠中に投与を受けた患者の中に奇形児等の障害児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査報告があるので,妊婦(3カ月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にだけ投与する

(b)新生児に哺乳困難,筋緊張低下,嗜眠,黄疸の増強等の症状を起こすことがあるので,妊娠後期の婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にだけ投与する。(注射)また,分娩時に静注した例にSleeping babyが報告されている

(c)分娩前に連用した場合,出産後新生児に禁断症状(神経過敏,振戦,過緊張等)が現れることがある

(d)ヒト母乳中へ移行し,新生児に嗜眠,体重減少等を起こすことがあり,また,黄疸を増強する可能性があるので,授乳婦への投与は避けることが望ましいが,やむを得ず投与する場合は授乳を避けさせる

(9)適用上の注意(注射)

(a)投与経路

(ア)経口投与が困難な場合や,緊急の場合,また,経口投与で効果が不十分と考えられる場合にだけ使用する。なお,経口投与が可能で効果が十分と判断された場合には,速やかに経口投与に切り換える

(イ)投与経路は静注を原則とする

(b)投与方法

(ア)急速に静注した場合,あるいは細い静脈内に注射した場合には,血栓性静脈炎を起こすおそれがある

(イ)動脈内に注射した場合には,末梢の壊死を起こすおそれがあるので,動脈内には絶対に注射しない

(c)投与部位:静注時に血管痛が,また筋注時に注射部痛,硬結がみられることがある

(d)配合変化:他の注射液と混合又は希釈して使用しない

(10)過量投与:過量投与が明白又は疑われた場合の処置としてフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与する場合には,使用前にフルマゼニルの使用上の注意(禁忌,慎重投与,相互作用等)を必ず読む

(11)その他:投与した薬剤が特定されないままにフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与された患者で,新たに本剤を投与する場合,本剤の鎮静・抗けいれん作用が変化,遅延するおそれがある

(12)室温・(シロップ)遮光保存

(13)規制等:向指要,ジアゼパム局

 [坐]:

(1)一般的注意

(a)小児用の製剤である

(b)眠気,注意力・集中力,反射運動能力等の低下が起こることがあるので,投与後の患者の状態に十分注意する

(c)熱性けいれんに用いる場合には,発熱時の間欠投与とし,37.5゜の発熱を目安に,速やかに直腸内に挿入する

(2)禁忌

(a)急性狭隅角緑内障のある患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し,症状が悪化するおそれがある]

(b)重症筋無力症のある患者[筋弛緩作用により症状が悪化するおそれがある]

(c)未熟児・新生児[安全性は確立していない](未熟児・新生児への投与の項参照)

(3)慎重投与

(a)心障害,肝障害,腎障害のある患者[心障害では症状が悪化,肝・腎障害では排泄が遅延するおそれがある]

(b)脳に器質的障害のある患者[作用が強く現れる]

(c)乳児[作用が強く現れる]

(d)衰弱患者[作用が強く現れる]

(e)中等度又は重篤な呼吸不全のある患者[症状が悪化するおそれがある]

(4)相互作用 併用注意

(a)中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体,バルビツ−ル酸誘導体等),モノアミン酸化酵素阻害剤[作用が増強されることがある]

(b)シメチジン,オメプラゾ−ル[本剤のクリアランスが減少し,作用が増強されることがある]

(c)アルコ−ル(飲酒)[相互に中枢神経抑制作用を増強することがある]

(d)塩酸マプロチリン[中枢神経抑制作用を増強することがある。また,併用中の本剤を急速に減量又は中止するとけいれん発作が起こることがある]

(e)ダントロレンナトリウム[筋弛緩作用を増強することがある]

(5)副作用

(a)重大な副作用

(ア)依存性:大量連用により,まれに薬物依存を生じることがあるので,観察を十分に行い,用量を超えないよう慎重に投与する。また,大量投与又は連用中における投与量の急激な減少ないし中止により,まれにけいれん発作,ときにせん妄,振戦,不眠,不安,幻覚,妄想等の禁断症状が現れることがあるので,中止する場合には,徐々に減量するなど慎重に行う

(イ)刺激興奮,錯乱等:精神分裂病等の精神障害者に投与すると逆に刺激興奮,錯乱等が現れることがあるので観察を十分に行い,異常が現れた場合には中止し,適切な処置を行う

(ウ)呼吸抑制:慢性気管支炎等の呼吸器疾患に用いた場合,呼吸抑制が現れることがあるので観察を十分に行い,異常が認められた場合には中止し,適切な処置を行う

(b)その他の副作用

(ア)精神神経系:眠気,ふらつき,ときに眩暈,歩行失調,頭痛,失禁,言語障害,興奮が,また,まれに振戦,霧視,複視,多幸症等が現れることがある

(イ)肝臓:ときに黄疸等が現れることがある

(ウ)呼吸器:ときに喘鳴,気道分泌過多が現れることがある

(エ)血液:まれに顆粒球減少症,白血球減少症等が現れることがある

(オ)循環器:ときに頻脈,血圧低下等が現れることがある

(カ)消化器:ときに悪心,嘔吐,食欲不振,便秘,口渇,下痢,流涎等が現れることがある

(キ)過敏症:発疹等の過敏症状が現れた場合には,中止する

(ク)その他:ときに倦怠感,脱力感,浮腫,四肢冷感,頻尿が現れることがある

(6)未熟児・新生児への投与:未熟児・新生児に対しては使用経験がなく,安全性が確立していないので投与しない(一般的に,脂肪組織が少ないため,予想より血中濃度が高くなる可能性があり,また,肝機能,腎機能が未熟であるので,半減期が延長されるとの報告がある)

(7)過量投与:過量投与が明白又は疑われた場合の処置としてフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与する場合には,使用前にフルマゼニルの使用上の注意(禁忌,慎重投与,相互作用等)を必ず読む

(8)適用上の注意 投与経路:直腸投与だけに使用し,経口投与はしない

(9)その他:投与した薬剤が特定されないままにフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与された患者で,新たに本剤を投与する場合,本剤の鎮静・抗けいれん作用が変化,遅延するおそれがある

(10)室温・遮光保存

(11)規制等:向指要,ジアゼパム局

【作用】 [内]・[注]:(1)薬効薬理

(a)馴化,鎮静作用:大脳辺縁系に特異的に作用し,正常な意識・行動に影響を及ぼさずに馴化,鎮静作用(粗暴猿,闘争マウスに対する馴化作用。ラット,ウサギにおける条件刺激に対する回避行動の抑制作用。中隔野損傷ラットの興奮に対する鎮静作用)

(b)筋弛緩作用:主として脊髄反射抑制により筋の過緊張を緩解(マウス傾斜板法,除脳硬直ネコ)

(c)抗けいれん作用:ストリキニ−ネけいれん,メトラゾ−ルけいれん,電気ショックけいれんに対し抗けいれん作用(マウス)

(d)子宮筋弛緩作用:子宮筋に作用し,子宮筋の異常緊張を除去(マウス摘出子宮,ヒト子宮)

(2)臨床適用 副作用及び臨床検査値の変動:注射で25%(578/2,312)に,眠気232例,ふらつき54例,構音障害41例,逆説反応23例,頭痛・頭重19例等の精神神経症状,血管痛77例,注射部疼痛・異和感42例等の注射局所の反応,悪心・嘔吐33例,口渇19例等の消化器症状,舌根沈下による上気道閉塞23例等の呼吸器症状,血圧低下16例等の循環器症状,倦怠感・脱力感57例等

(3)非臨床試験

(a)毒性LD50(mg/kg)マウス:経口=720,ラット♂:静注=59,皮下=63.5,腹腔内=46.5

(b)生殖試験:ラットの器官形成期の1日500 mg/kg経口投与群で胎児死亡率が高く,発育遅延の頻度が増加。100 mg/kg以下の経口投与,10 mg/kg以下の腹腔内投与では異常は認められなかった (武田薬品による)

 [坐]:(1)薬効薬理

(a)マウスにおける経口投与との比較:投与後30分のED50(mg/kg)抗Bemegrideけいれん:直腸内=0.25,経口=0.56,抗電撃けいれん:直腸内=0.45,経口=0.71

(b)作用機序:ベンゾジアゼピン受容体は中枢でGABA受容体と複合体を作り,ジアゼパムのベンゾジアゼピン受容体結合によりGABAのGABA受容体に対する親和性が高まり,GABA結合量が増加,Clイオンチャンネルの開口を促進,興奮性シナプス伝導を抑制

(2)体内薬物動態:健康成人14例に10 mg単回直腸内投与後1.2時間で平均最高血清中濃度321 ng/ml,平均消失半減期34.9時間。小児6例(平均14.8カ月)に0.5 mg/kg単回直腸内投与後1.5時間で平均最高血清中濃度379 ng/ml,平均消失半減期32.8時間

(3)臨床適用

(a)臨床効果(有効率):比較試験を含み86.6%(258/298)[熱性けいれんの再発防止96.2%(176/183),けいれんの救急治療71.3%(82/115)]

(b)副作用:副作用は30.6%(117/382)に,ふらつき19.1%(73例),眠気14.1%(54例),興奮,喘鳴,運動失調,入眠,下痢,悪心・嘔吐,筋緊張低下等が各数例

(4)非臨床試験

(a)毒性LD50(mg/kg)ddyマウス(6週齢):直腸内=♂467♀523,経口=♂607♀651,JCL‐SDラット(3〜4日齢):直腸内=♂138♀131,経口=♂259♀249,(4週齢):直腸内=♂670♀593,経口=♂2041♀1895,ビ−グル(3週齢)♂♀:直腸内>800

(b)局所刺激:ウサギに1日1回30日間直腸内連続投与で投与局所の肛門周囲皮膚にほとんど異常を認めず,直腸粘膜に対する影響も軽微

(c)動物における吸収・分布・排泄:ラットに14C‐標識体を直腸内投与後の血液及び各組織内の濃度は0.5時間で最高,以後漸減,48時間後には直腸,肝,甲状腺,大腸,腎でわずか。120時間までの尿中に26.5%,糞中に63.9%排泄 (和光堂による)

【長期投与】

<内服>高血圧性疾患(11):30日,うつ病(65):30日

【備考】 坐剤について再審査期間中(平成4年7月3日から6年)

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