2000年11月17日発売
劇薬・指定医薬品・要指示医薬品
パキシル錠10mg
パキシル錠20mg
PAXIL(塩酸パロキセチン水和物)
一般名
塩酸パロキセチン水和物
paroxetine hydrochloride hydrate
規制区分
劇薬、指定医薬品、要指示医薬品
禁忌(次の患者には投与しないこと)
1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.MAO阻害剤を投与中あるいは投与中止後2週間以内の患者(「相互作用」及び「重大な副作用」の項参照)
3.塩酸チオリダジン(メレリル等)を投与中の患者(「相互作用」の項参照)
組成・性状
パキシル錠10mg
成分・含量・・・1錠中パロキセチン10mg(塩酸パロキセチン水和物として11.38mg)
添加物・・・マクロゴール400
色・剤形・・・帯紅白色円形のフィルムコート錠
直径:約6.6mm、厚さ:約3.6mm、重量:約178mg
識別コード・・・SB23
パキシル錠20mg
成分・含量・・・1錠中パロキセチン20mg(塩酸パロキセチン水和物として22.76mg)
添加物・・・マクロゴール400
色・剤形・・・帯紅白色円形のフィルムコート錠
直径:約8.1mm、厚さ:約4.8mm、重量:約357mg
識別コード・・・SB24
効能・効果
うつ病、うつ状態、パニック障害
用法・用量
通常、成人には1日1回夕食後、パロキセチンとして20〜40mを経口投与する。投与は1回10〜20mgより開始し、原則として1週ごとに10mg/日ずつ増量する。なお、症状により1日40mgを超えない範囲で適宜増減する。
パニック障害には、通常成人として1日1回夕食後、パロキセチンとして30mgを経口投与する。投与は1回10mgより開始し、原則として1週ごとに10mg/日ずつ増量する。なお、症状により1日30mgを超えない範囲で適宜増減する。
1.慎重投与
(1)躁病の既往歴のある患者{躁転があらわれることがある}
(2)てんかんの既往歴のある患者{てんかん発作があらわれることがある}
(3)緑内障のある患者{散瞳があらわれることがある}
(4)抗精神病薬を投与中の患者{悪性症候群があらわれるおそれがある}(「相互作用」の項参照)
(5)高齢者((「高齢者への投与」の項参照)
2.重要な基本的注意
眠気、めまい等があらわれることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には十分注意させること。
3.相互作用
(1)併用禁忌(併用しないこと)
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
MAO阻害剤
塩酸セレギリン(エフピー) |
セロトニン症候群があらわれることがある。MAO阻害剤を投与中あるいは投与中止後2週間以内の患者には投与しないこと。また、本剤の投与中止後2週間以内にMAO阻害剤の投与(「重大な副作用」の項参照)を開始しないこと。 | 脳内セロトニン濃度が高まると考えられている |
塩酸チオリダジン
メレリル |
QT延長、心室性不整脈(torsades de pointesを含む)等の重篤な心臓血管系の副作用があらわれるおそれがある。 | 本剤が肝臓の薬物代謝酵素CYP2D6を阻害することにより、チオリダジンの血中濃度が上昇するおそれがある。 |
(2)併用注意(使用に注意すること)
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
L−トリプトファンを含有する製剤
アミノ酸製剤 経腸成分栄養剤 |
セロトニン症候群があらわれるおそれがある。(「重大な副作用」の項参照) | L−トリプトファンはセロトニンの前駆物質であるため、脳内セロトニン濃度が高まるおそれがある。 |
炭酸リチウム | 機序不明 | |
コハク酸スマトリプタン | 選択的セロトニン再取り込み阻害剤との併用により、脱力感、反射亢進、協調運動障害があらわれることがある。 | スマトリプタンはセロトニン受容体に作用することから、本剤との併用により、セロトニン作用が増強するおそれがある。 |
フェノチアジン系抗精神病薬
ペルフェナジン |
悪性症候群の兆候を示す症状が報告されている。(「重大な副作用」の項参照) | 本剤が肝臓の薬物代謝酵素CYP2D6を阻害することにより、患者によってはこれらの薬剤の血中濃度が上昇するおそれがある。本剤とペルフェナジンの血中濃度が約6倍増加したことが報告されている。
本剤とイミプラミンとの併用により、イミプラミンのAUCが約1.7倍増加したことが報告されている。 |
三環系抗うつ剤
塩酸アミトリプチリン 塩酸ノルトリプチリン 塩酸イミプラミン |
これらの薬剤の作用が増強されるおそれがある。イミプラミンと本剤の薬物相互作用試験において、併用投与により鎮静及び抗コリン作用の症状が報告されている。 | |
抗不整脈薬
塩酸プロパフェノン 塩酸フレカイニド |
これらの薬剤の作用が増強されるおそれがある。 | |
β−遮断剤
マレイン酸チモロール |
||
酒石酸メトプロロール | メトプロロールと本剤の併用投与により、重度の血圧低下が報告されている。 | 本剤が肝臓の薬物代謝酵素CYP2D6を阻害することにより、メトプロロールの(S)体及び(R)体のT1/2がそれぞれ約2.1及び2.5倍、AUCがそれぞれ約5及び8倍増加したことが報告されている。 |
キニジン
シメチジン |
本剤の作用が増強するおそれがある。 | これらの薬剤の肝薬物代謝酵素阻害作用により、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。
シメチジンとの併用により、本剤の血中濃度が約50%増加したことが報告されている。 |
フェニトイン
フェノバルビタール |
本剤の作用が減弱するおそれがある。 | これらの薬剤の肝代謝酵素誘導作用により、本剤の血中濃度が低下するおそれがある。
フェノバルビタールとの併用により、本剤のAUC及びT1/2がそれぞれ平均25及び38%減少したことが報告されている。 |
ワルファリン | ワルファリンの作用が増強されるおそれがある。 | 本剤との相互作用は認められていないが、他の抗うつ剤で作用の増強が報告されている。 |
ジゴキシン | ジゴキシンの作用が減弱されるおそれがある。 | 健康人において、本剤によるジゴキシンの血中濃度の低下が認められている。 |
アルコール(飲酒) | 本剤服用中は、飲酒を避けることが望ましい。 | 本剤との相互作用は認められていないが、他の抗うつ剤で作用の増強が報告されている。 |
4.副作用
うつ病、うつ状態患者及びパニック障害患者を対象とした本邦での臨床試験において、本剤が投与された総症例650例中324例(49.8%)に643件の副作用が発現した。その主な内容は、嘔気(14.3%)、傾眠(13.1%)、口渇(9.2%)、めまい(6.0%)等であった。
臨床検査値の異常変動としては、軽度〜中程度のALT(GPT)上昇(7.1%)、γ−GTP(4.8%)等がみられた。(承認時)
(1)重大な副作用
1)セロトニン症候群:まれに(0.1%未満)激越、錯乱、発汗、幻覚、反射亢進、ミオクロヌス、戦慄、頻脈、振戦等があらわれるおそれがある。異常が認められた場合には、投与を中止する等適切な処置を行うこと。
2)悪性症候群:抗精神病薬との併用により、まれに(0.1%未満)無動、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合がある。
異常が認められた場合には、抗精神病剤又は本剤の投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。本症発症時には、白血球の増加や血清CK(CPK)の上昇がみられることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。
3)錯乱、痙攣:まれに(0.1%未満)錯乱、痙攣があらわれることがある。異常が認められた場合には、減量又は投与を中止する等適切な処置をおこなうこと。
4)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH):主に高齢者において、まれに(0.1%未満)低ナトリウム血症、痙攣等があらわれることが報告されている。異常が認められた場合には、投与を中止し、水分摂取の制限等適切な処置を行うこと。
5)重篤な肝機能障害:まれに(0.1%未満)肝不全、肝壊死等があらわれることがある。必要に応じて肝機能検査を行い、異常が認められた場合には、投与を中止する等適切な処置を行うこと。
(2)その他の副作用
5%以上 | 0.1〜5%未満 | 0.1%未満 | |
全身症状 | 疲労、倦怠(感)、ほてり、無力症 | ||
精神神経症錠 | 傾眠、めまい、頭痛 | 不眠、振戦、神経過敏、感情鈍麻、緊張亢進、錐体外路障害、知覚減退、離人症 | 躁病反応 |
消化器 | 嘔気、口渇、便秘 | 食欲不振、腹痛、嘔吐、下痢、消化不良 | |
循環器 | 心悸亢進 | 頻脈、一過性の血圧上昇又は低下 | |
皮膚 | 発疹、そう痒、紅斑性発疹 | 光線過敏症 | |
血液 | 白血球減少、ヘモグロビン減少、ヘマトクリット値増加又は減少、白血球増多又は減少 | 血小板減少症、異常出血、皮下漏血、紫斑 | |
肝臓 | ALT(GPT)の上昇 | γ−GTP、AST(GOT)、LDH、AL-P、総ビリルビンの上昇、ウロビリノーゲン陽性 | |
腎臓 | BUN上昇、尿沈値(赤血球、白血球)、尿蛋白 | ||
その他 | 発汗、排尿困難、性機能異常、視力異常、総コレステロール及び血清カリウムの上昇、総蛋白減少 | 急性緑内障、霧視、尿閉、高プロラクチン血症、乳汁漏出、末梢性及び顔面浮腫 |
5.高齢者への投与
主に高齢者において、まれに(0.1&未満)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)があらわれることが報告されているので注意すること。(「重大な副作用」の項参照)
6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与
(1)妊婦等:妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。{妊娠中の投与に関する安全性は確立していない}
(2)授乳婦:授乳中の婦人への投与は避ける事が望ましいが、やむを得ず投与する場合は授乳を避けさせること。{母乳中に移行することが報告されている。(「薬物動態の項」参照)}
7.小児への投与
小児等に対する安全性は確立していない。
8.過量投与
症状・兆候:外国において、本剤単独2000mgまでの、また、他剤との併用による過量投与が報告されている。過量投与語にみられる主な症状は、「副作用」の項にあげる症状の他、瞳孔散大、発熱、不随意筋収縮及び不安等である。
飲酒の有無にかかわらず、他の精神病薬と併用した場合に、昏睡、心電図の変化があらわれることがある。
処置:特異的な解毒剤は知られていないので、催吐、胃洗浄等を行うとともに、活性炭投与等適切な療法を行うこと。
9.適用上の注意
薬剤交付時:PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。{PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。}
10.その他の注意
急激な投与中止により、めまい、知覚障害、睡眠障害、激越、不安、吐き気、発汗等があらわれることがある。投与を中止する際には、徐々に減量すること。
薬物動態
1.血中濃度
(1) 健康成人(20〜27歳)に本剤10、20又は40mgを単回経口投与した時の投与量で補正した最高血漿中濃度(Cmax)の平均値は10mg群と比較して20及び40mg群でそれぞれ1.98及び4.69倍であり、投与量の増加を上回った増加が確認された。
また、40mg群の投与量で補正した血漿中濃度曲線下面積(AUC)は20mg群の2.48倍であり、Cmaxと同様に投与量の増加を上回った増加がみられ、薬物動態の非線形性が確認された。
1)健康成人に単回経口投与した時の薬物動態学的パラメータ
1.投与量10mg
Cmax(ng/mL):1.93±1.38 Tmax(hr):4.61±1.04 AUC(ng・hr/mL):− T1/2(hr):−
2.投与量20mg
Cmax(ng/mL):6.48±4.10 Tmax(hr):5.05±1.22 AUC(ng・hr/mL):119.6±100.1
T1/2(hr):14.35±10.99
3.投与量40mg
Cmax(ng/mL):26.89±11.00 Tmax(hr):4.58±0.96 AUC(ng・hr/mL):447.2±254.8
T1/2(hr):14.98±11.51
(1) −:算出できず
平均値±標準偏差(n=19)
Tmax:最高濃度到達時間
T1/2:消失半減期
(2) 健康成人(21〜27歳)に本剤20mgを1日1回10日間反復経口投与した時の血漿中濃度は、初回投与5時間後にCmax12.5ng/mLに達し、T1/2は約10時間であった。Cminは反復投与7日目に定常状態(約23ng/mL)に達した。反復投与時の血漿中濃度は、最終投与5時間後にCmax59.5ng/mLに達し、T1/2は約15時間であった。
(3) 健康高齢者(65〜80歳)に本剤20mgを単回経口投与した時の血漿中濃度は投与約6時間後にCmax7.3ng/mLに達し、T1/2は約18時間であった。
(4) 食事の影響(海外データ):健康成人に本剤20mgを空腹時又は食後に単回経口投与した時の薬物動態学的パラメータに差は認められず、食事の影響はないと考えられる。
2.代謝・排泄(海外データ)
(1) 健康成人に14C標識塩酸パロキセチン30mgを単回経口投与した時の放射能は、投与後168時間以内に投与量の約64%が尿中にほとんど代謝物として排泄され、糞中には約35%が排泄された。
(2) ヒト肝ミクロソームを用いたin vitro試験により、本剤のCYP2D6に対する阻害様式は拮抗阻害であり、sparteineの水酸化を指標としたKi値は0.15μMであった。
(3) 本剤は主に肝臓のCYP2D6により代謝されることから、薬物動態の非線形性はCYP2D6による代謝の飽和と考えられる。
(4) 本剤がCYP2D6を阻害し、表現型がExtensive MetabolizerからPoor Metabolizer様へ変換することから、CYP2D6で代謝される薬剤との相互作用が考えられる。(「相互作用」の項参照)
なお、この表現型の変換は休薬後約1週間で回復する。
3.腎機能障害時の血漿中濃度(海外データ)
(1) 腎機能障害者に本剤20mgを1日1回18日間反復経口投与した時、高度の腎機能障害者(クレアチニンクリアランス値30mL/分未満)において、血漿中濃度の上昇及びAUCの増大が認められた。
4.肝機能障害時の血漿中濃度(海外データ)
(1) 肝機能障害者に肝機能低下の程度に応じ本剤20又は30mgを1日1回14日間反復経口投与した時、血漿中濃度の上昇、T1/2の延長及びAUCの増大が認められた。
5.血漿タンパク結合率及び血球分配率
(1) ヒト血漿にパロキセチンの100又は400ng/mLを添加した時の血漿タンパク結合率は、それぞれ約95及び93%であった。また、パロキセチンはワルファリン、グリベンクラミド及びフェニトインの血漿タンパク結合率に影響を及ぼさなかった(in vitro)。
(2) ヒト血液に14C標識塩酸パロキセチンを添加した時の血球分配率は51%以上であり、血球移行が認められた(in vitro)。
6.乳汁移行(海外データ)
(1) 授乳婦の患者に本剤10〜40mgを1日1回8日間以上反復経口投与した時、投与量の約1%が乳汁中へ移行した11)。
(2)(参考) 胎盤・胎児移行(動物試験):妊娠ラットに14C標識塩酸パロキセチンを経口投与した時、放射能の胎盤・胎児への移行が認められた。
臨床成績
1. 国内で実施された臨床試験の概要は次のとおりである。
(1)うつ病・うつ状態
二重盲検比較試験及び一般臨床試験において、うつ病・うつ状態に対して1回10〜40mg、1日1回投与の有効率は50.4%(229/454)であった。
なお、高齢のうつ病・うつ状態患者を対象とした一般臨床試験での有効率は55.1%(27/49)であり、認められた副作用の種類、副作用発現率及びその程度は、非高齢者と同様であった。
(2)パニック障害
二重盲検比較試験及び一般臨床試験21)において、パニック障害に対して1回10〜30mg、1日1回投与の有効率は60.2%(106/176)であった。
なお、プラセボを対照とした二重盲検比較試験において本剤の有用性が確認された。
特徴
抗うつ作用を持つ、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)。
薬効薬理
1.抗うつ作用
(1)マウス強制水泳試験において反復投与により用量依存的な無動時間の短縮作用を示した。
(2)マウス尾懸垂試験において用量依存的な無動時間の短縮作用を示した。
(3)縫線核破壊ラットのムリサイド行動に対して用量依存的な抑制作用を示した。
2.抗不安作用
(1)ラットsocial interaction試験において反復投与によりsocial interaction時間の増加を示した。
(2)ラットVogal型コンフリクト試験において反復投与により抗コンフリクト作用を示した。
(3)ラット高架式十字迷路試験において反復投与によりopen armにおける滞在時間及び進入回数を増加させた。
化学名
(-)-(3S,4R)-4-(4-fluorophenyl)-3-{(3,4-methylenedioxy)phenoxymethyl}piperidine monohydrochloride hemihydrate
分子式、分子量
C19H20FNO3・HCl・1/2H2O:374.84
承認時期
2000年9月22日輸入製造承認取得
再審査期間
6年
製造元
イギリス:SmithKline Beecham Pharmaceuticals
輸入・販売元
スミスクライン・ビーチャム製薬株式会社