【組成】 [錠]:1錠中1 mg,2 mg
ロフラゼプ酸エチルは白色の結晶性の粉末で,においはない。ジメチルスルホキシドに溶けやすく,アセトン又はクロロホルムにやや溶けやすく,アセトニトリル,氷酢酸又は酢酸エチルにやや溶けにくく,エタノ−ル,エ−テル又はトルエンに溶けにくく,水,ヘキサン又はヘプタンにほとんど溶けない。融点:約199゜(分解)
【適応】
(1)神経症における不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
(2)心身症(胃・十二指腸潰瘍,慢性胃炎,過敏性腸症候群,自律神経失調症)における不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
【注意】
(1)一般的注意:眠気,注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので,投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意する
(2)禁忌
(a)急性狭隅角緑内障のある患者[眼圧を上昇させるおそれがある]
(b)重症筋無力症のある患者[筋弛緩作用により症状を悪化させるおそれがある]
(3)慎重投与
(a)心障害のある患者
(b)肝障害,腎障害のある患者[血中濃度が上昇するおそれがある]
(c)脳に器質的障害のある患者[作用が強く現れることがある]
(d)高齢者[高齢者への投与の項参照]
(e)乳児・幼児・小児[乳児・幼児・小児への投与の項参照]
(f)衰弱患者[副作用が発現しやすい]
(4)相互作用 併用注意
(a)フェノチアジン誘導体(塩酸クロルプロマジン等)・バルビツ−ル酸誘導体(フェノバルビタ−ル等)等の中枢神経抑制剤,モノアミン酸化酵素阻害剤(塩酸サフラジン)[両剤の作用が増強されることがある]
(b)シメチジン[本剤の血中濃度が上昇することがある]
(c)アルコ−ル[両剤の作用が増強されることがある]
(5)副作用
(a)重大な副作用
(ア)依存性:大量連用により,まれに薬物依存を生じることがあるので,観察を十分に行い,用量を超えないよう慎重に投与する。また,大量投与又は連用中における投与量の急激な減少ないし中止により,まれにけいれん発作,ときにせん妄,振戦,不眠,不安,幻覚,妄想等の禁断症状が現れることがあるので,中止する場合には徐々に減量するなど慎重に行う
(イ)刺激,興奮,錯乱:精神分裂病等の精神障害者への投与によりこのような症状が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には,中止するなど適切な処置を行う
(ウ)幻覚:まれに幻覚が現れることがあるので,観察を十分に行い,このような症状が現れた場合には中止し,適切な処置を行う
(b)その他の副作用
(ア)精神神経系 (1)眠気,ときに頭がボ−ッとする,朝起きづらい,めまい,ふらつき,頭痛,霧視,舌のもつれ,しびれ感,また,まれに健忘,不眠,いらいら感,複視,耳鳴,言語障害(構音障害等)が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には,中止するなど適切な処置を行う (2)まれに味覚倒錯が現れることがある
(イ)消化器:ときに腹痛,食欲不振,嘔気,便秘,口渇が,また,まれに胃痛,心窩部痛,胸やけ,下痢,口内炎が現れることがある
(ウ)肝臓:ときにGOT,GPT,γ‐GTPの上昇が現れることがある
(エ)血液:ときに白血球数減少,好酸球増多が現れることがある
(オ)泌尿器:まれに残尿感,頻尿が現れることがある
(カ)過敏症:ときに発疹,皮膚掻痒感が現れることがあるので,このような場合には中止する
(キ)骨格筋:ときに倦怠感,脱力感,易疲労感,筋弛緩が現れることがある
(ク)その他:ときに性欲減退,尿ウロビリノ−ゲンの増加,また,まれに発赤,冷感,不快感,いびきが現れることがある
(6)高齢者への投与:高齢者では,運動失調等の副作用が発現しやすいので少量から開始するなど慎重に投与する
(7)妊婦・授乳婦への投与
(a)妊娠中に他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)の投与を受けた患者の中に,
奇形児等の障害児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査報告があるので,妊婦(3カ月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にだけ投与する
(b)新生児に哺乳困難,筋緊張低下,嗜眠,黄疸の増強等を起こすことが他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム,ニトラゼパム)で報告されているので,妊娠後期の婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にだけ投与する
(c)分娩前に連用した場合,出産後新生児に禁断症状(神経過敏,振戦,過緊張等)が現れることが他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)で報告されている
(d)動物実験で母乳中へ移行すること及び他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)では,ヒト母乳中へ移行し,新生児に嗜眠,体重減少等を起こすことが報告されており,また,黄疸を増強する可能性があるので,授乳婦への投与は避けることが望ましいが,やむを得ず投与する場合は授乳を避けさせる
(8)乳児・幼児・小児への投与:乳児・幼児・小児に対する安全性は確立していない
(9)過量投与:過量投与が明白又は疑われた場合の処置としてフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与する場合には,使用前にフルマゼニルの使用上の注意(禁忌,慎重投与,相互作用等)を必ず読む
(10)その他:投与した薬剤が特定されないままにフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与された患者で,新たに本剤を投与する場合,本剤の鎮静・抗けいれん作用が変化,遅延するおそれがある
(11)室温保存
(12)規制等:向指要
【作用】
(1)薬効薬理:質的にはジアゼパム等のベンゾジアゼピン系抗不安薬に共通した中枢神経作用を持つが,作用強度や薬理学的プロフィルは他のベンゾジアゼピン系抗不安薬とは異なる。鎮静作用,意識水準の低下,筋弛緩作用及び協調運動抑制作用は比較的弱いが,抗けいれん作用や抗コンフリクト作用は強い
(a)抗コンフリクト作用:5 mg/kgで発現,その強度はジアゼパムの2倍,ロラゼパムの8倍(ラット)
(b)馴化静穏作用:誘発攻撃行動(muricide)に対する抑制作用は嗅球摘出誘発でロラゼパムの1/6,中脳縫線核破壊誘発でロラゼパムの1/3,ジアゼパムとほぼ同等(ラット)
(c)抗けいれん作用:抗ペンテトラゾ−ルけいれん作用はロラゼパムと同等,ジアゼパムの7倍(マウス)
(d)麻酔・睡眠増強作用:チオペンタ−ル麻酔増強作用はロラゼパムの1/4,ジアゼパムの1/2(マウス)。ベンゾジアゼピン系睡眠導入薬で特に強く発現するクロルプロチキセン睡眠増強作用は弱く,ニトラゼパムの1/14(マウス)
(e)筋弛緩作用・協調運動抑制作用:傾斜板法による筋弛緩作用はジアゼパムとほぼ同等(マウス)。回転棒法による協調運動抑制作用は極めて弱く,ロラゼパムの1/7,ジアゼパムの1/4(マウス)
(f)運動系機能に及ぼす影響:脊髄多シナプス反射及び後根反射電位並びに除脳固縮による頚部筋放電に対する作用は,いずれもジアゼパムより弱い(ネコ)
(2)体内薬物動態
(a)吸収・代謝:経口投与後速やかに吸収,消化管通過時や肝によって初回通過効果を受け,未変化体は血中から検出されず,活性代謝物M‐1(エチルエステル基が加水分解されたカルボン酸体)及びM‐2(M‐1の脱炭酸体)として血中に存在。健常成人(17名)に経口投与時の最高血漿中濃度到達時間は平均1.2時間,半減期は平均122時間(60〜279時間)。連続投与時の血漿中濃度は1〜3週間程度で定常状態に到達すると考えられており,蓄積性は認められなかった
(b)排泄:尿中排泄は投与後14日間で50%,主要尿中代謝物は,M‐3(M‐2の3位水酸化体)の抱合体
(3)臨床適用:172施設,総症例1,497例(一般臨床試験726例,二重盲検比較試験771例)
(a)臨床効果:有効性評価対象例1,415例の改善率([ ]内,軽度改善以上)
(ア)神経症62.3%(458/735)[85.4%(628/735)]
(イ)心身症71.3%(485/680)[87.5%(595/680)]:胃・十二指腸潰瘍89.7%[96.2%],慢性胃炎75%[89.3%],過敏性腸症候群70%[84.6%],自律神経失調症65.3%[89.3%]
(ウ)計66.6%(943/1,415)[86.4%(1,223/1,415)]。神経症,心身症を対象とする二重盲検比較試験で有用性が認められた
(b)副作用及び臨床検査値の変動
(ア)14.05%(204/1,452)に265件,発現頻度0.5%以上の症状は眠気9.85%(143件),めまい1.17%(17件),ふらつき1.24%(18件)
(イ)高齢者(65歳以上)で9.09%(7/77)
(ウ)長期投与例(1年以上20例,2年以上5例を含む12週間以上49例)で,眠気6.12%(3例),めまい2.04%(1例),投与継続中にすべて消失。このうち12週以降発現例は217日目に眠気2.04%(1例)で,長期投与で副作用の発現頻度が高くなることはなかった
(エ)臨床検査値の変動は6例(11件)に,GOT上昇0.55%(4/731),GPT上昇0.54%(4/734),白血球数減少0.14%(1/726),好酸球増多0.32%(1/309),尿ウロビリノ−ゲン陽性0.15%(1/661)
(4)非臨床試験
(a)毒性LD50(mg/kg)マウス:経口=♂5506♀6777,皮下=♂1795♀2215,腹腔内=♂780♀777,ラット:経口>♂♀10000,皮下=♂2000♀2801,腹腔内=♂1021♀1121
(b)生殖試験:ウサギの胎児器官形成期経口投与試験では,50・100 mg/kg投与群で親動物の死亡,25・100 mg/kg投与群で流産,100 mg/kg投与群で胎児の吸収胚・死亡胎児数の増加が認められたが,他に異常は認められなかった
(c)依存性:サルでバルビツ−ル型の身体依存性及び精神依存性が認められたが,その強さはジアゼパムと同程度か若しくは弱かった
(d)抗原性・変異原性:認められなかった
(e)一般薬理:呼吸・循環器系,末梢神経系,平滑筋,肝・腎機能等に対する作用は他のベンゾジアゼピン系薬物に類似しており,特有な作用は認められなかった
【長期投与】
<内服>機能性消化障害(他に分類されないもの)(22):30日