チオリダジンとQT延長、心室頻拍(Torsades de pointesを含む)、心室細動について
成分名 該当販売名 成分名 該当販売名 チオリダジン 塩酸チオリダジン メレリル散(日本チバガイギー) メレリル10,同25,同50,同100(武州)
薬効分類等 精神神経用剤 効能効果 精神分裂病 神経症における不安・緊張・抑うつ及び興奮 下記における不安・焦燥・興奮・多動 うつ病,精神薄弱,老年精神病
(1)経緯 チオリダジンは1962年2月に承認されたドパミン拮抗作用を有するフェノチアジン系
の抗精神病薬である。 チオリダジンの投与によるQT延長とそれに続く突然死の報告に基づき1976年に使用上の注意に記載し、注意喚起が行われてきたところである。また,本年6月にはチオリダ
ジン投与によるQT延長のリスクファクターやTorsades de pointesを含む心室頻拍を追
記するなど使用上の注意の改訂を実施して,本剤に対する適正使用の注意喚起を図った。
しかしながら、今般、本剤とフルボキサミンとの相互作用が疑われる副作用症例(心停止、QT延長症候群、心室細動)の報告等から、フルボキサミン等を「併用禁忌」として追記した。また、本剤の投与量に依存してQT延長の程度が増大するとの報告に基づき、
「用法用量に関連する使用上の注意」を新設し、更に注意喚起を行うこととした。
(2)症例の紹介 今回新たに「併用禁忌」としたフルボキサミンを併用した症例についてその詳細を紹介する。
(3)安全対策 チオリダジンは肝臓でチトクロームP450により代謝され、代謝酵素の分子種は主とし てCYP2D6とされているが、ほかにもCYP1A2,CYP2C19の関与が示唆されている。フルボ キサミンはこれらの酵素活性を阻害し、チオリダジンの肝臓での代謝が抑制され、血中濃度が上昇することによるQT延長や心室性不整脈が誘発されやすくなると考えられる。
本剤とフルボキサミンとの併用により本剤の代謝が阻害され血中濃度が上昇するとの研究報告及び副作用報告に基づき、「併用禁忌」の項に本剤とフルボキサミンの相互作 用を追記するとともに,パロキセチン(国内未承認)、フルオキセチン(国内未承認)、 β遮断剤(プロプラノロール,ピンドロール)についても併用禁忌とした。QT時間の延長は心電図上の測定値を基本心拍数で補正した値(QTc)が450msec以上になった状態を いうが、500msec以上は病的な異常とされ,600msec以上ではTorsades de pointes型心室頻拍を生じて意識消失から痙攣、更に心室細動に移行して突然死へと至る可能性がある。
チオリダジンによるQT延長、心室性不整脈を予防するためには適用患者の選択等下記に注意することが重要である。
1)適用患者の選択 QT延長症候群のある患者には投与しないこと。QT延長の既往歴のある患者及び低カ リウム血症、低マグネシウム血症のある患者には慎重に投与すること。
2)投与量 本剤は心毒性等の重篤な副作用が報告されているため、使用に際しては低用量から 開始するなど慎重に投与すること。
3)併用薬の確認 テルフェナジン、アステミゾール、フルボキサミン、パロキセチン、
フルオキセチン(国内未承認)、プロプラノロール,ピンドロール等の薬剤を投与中の
患者には投与しないこと。
〈参考文献〉
1)Carillo, J.A., et al.:J.Clin.Pharmacol. 19:494-499(1999)
2)平岡昌和:循環器疾患最新の治療 2000-2001,南江堂:319-322
3)Hartigan-Go K., et al.:Clin.Pharmacol. Ther. 60:543-553(1996)
4)日本病院薬剤師会編:「トルサード ドゥ ポワント」重大な副作用回避のための服薬指導情報集1、薬業時報社:158-161(1997)
症例の概要 No. 患者 1日投与量・投与期間 副作用 備考 性、 年齢 使用理由(合併症)
経過及び処置 1 女 20代、精神病性興奮 強迫性障害 食行動異常 神経性食欲不振症
チオリダジン 175mg 113日間(16週間) マレイン酸フルボキサミン 150mg 53日間(約7週間)
心停止、QT延長症候群、心室細動 精神病性興奮のためチオリダジン投与中の患者。チオリダジン投与開始約8週後に,強迫性障害,食行動異常のためマレイン酸フルボキサミン追加投与開始。チオリダジン投与前のNa
141mEq/L、K 3.1mEq/L。 投与開始16週後(マレイン酸フルボキサミン投与約7週後)
起立性低血圧が疑われる症状があらわれたが横臥により回復(血圧97/62,脈拍46)。
同日午後不穏状態で暴れ、不穏続くためネモナプリド1錠投与したところ、数秒後、心停止及び呼吸停止。心マッサージ、人工呼吸で数分後に回復し、血圧142/70,脈拍92,意識も回復し会話可能。O2開始、塩酸エチレフリン、塩酸ドパミン投与,しっかりした口調で会話可能となった。Na
146mEq/L,K 3.2mEq/L。 夕刻 カリウム補給。腹痛の訴えあり。再び精神興奮出現。
深夜脈拍触れず。チアノーゼ、呼吸停止発現。心マッサージにより回復。回復後当日朝より腹痛があったことを話した。救急転院。
(転院先にて) 血圧 118/48、脈拍 86 。K 2.7mEq/L,Ca 8.2mg/dLと低カリウム、低カルシウム血症あり。QTcは0.67秒と著明に延長。全薬中止。30分程度心室頻拍が続くが、心マッサージにより洞調律となった。
副作用発現5日後 QTc正常化、心室性不整脈はほぼ認めず。後日退院。 その後、QT延長は認められていない。
企業報告 併用薬:酸化マグネシウム、ニトラゼパム、補中益気湯、小建中湯
《使用上の注意抜粋(下線部追加改訂部分)》 〈チオリダジン、塩酸チオリダジン〉
禁忌(次の患者には投与しないこと)
1.QT延長症候群のある患者〔重篤な不整脈(Torsades de pointes等)の報告があり、症状を悪化させるおそれがある。〕
2.重篤な血液障害の既往歴のある患者〔白血球減少症や無顆粒球症等の報告があり、症状を悪化させるおそれがある。〕
3.テルフェナジン又はアステミゾールを投与中の患者[QT延長,心室性不整脈を起こすおそれがある。]
2.フルボキサミン,パロキセチン,フルオキセチン,β遮断剤(プロプラノロール,ピンドロール)を投与中の患者[本剤の代謝が抑制され血中濃度が上昇し,不整脈,QT延長等があらわれることがある。(「相互作用」の項及びページトップ参照)]
用法及び用量に関連する使用上の注意
本剤は心毒性等の重篤な副作用が報告されているため、使用に際しては低用量から開始するなど慎重に投与すること。
重要な基本的注意
起立性低血圧による失神があらわれることがあるので、本剤投与中は血圧を測定するなど十分観察を行うこと。
慎重投与
1.QT延長の既往歴のある患者及び、低カリウム血症、低マグネシウム血症のある患者〔QT延長が起こるおそれがある。〕
2.眼圧亢進、緑内障、尿閉(前立腺肥大症等)及び慢性便秘、又はその既往歴のある患者〔本剤は抗コリン作用を有しており、症状を悪化させるおそれがある。〕
3.循環調節障害(起立性低血圧等)の患者〔起立性低血圧の報告があり、症状を悪化させるおそれがある。
相互作用
併用禁忌(併用しないこと)
薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子 エピネフリン ボスミン注 エピネフリンの作用を逆転させ,血圧降下を起こすことがある。本剤はα遮断作用を有し併用によりエピネフリンのβ作用のみがあらわれるため。 フルボキサミン ルボックス デプロメール パロキセチン フルオキセチン (国内未承認) β遮断剤 プロプラノロール (インデラル) ピンドロール (カルビスケン) 不整脈、QT延長等があらわれることがある。 本剤は肝で酸化的に代謝されるが、これらの薬剤は本剤の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させると考えられる。
副作用
(1)重大な副作用(頻度不明)
追加:不整脈:心室頻拍(Torsades de pointesを含む)、心室細動等があらわれることがあるので、このような場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。 無顆粒球症:無顆粒球症があらわれることがあるので、異常(初期症状として発熱、咽頭痛、全身倦怠等)があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
1)悪性症候群(Syndrome malin):発熱,意識障害,無動緘黙,強度の筋強剛,嚥下困難,頻脈,血圧の変動,発汗等があらわれることがある。このような場合には、投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。本症発症時には,白血球の増加や血清CPKの上昇がみられることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。なお、高熱が持続し、呼吸困難、循環虚脱、脱水症状、急性腎不全へと移行し、死亡した例が報告されている。
2)不整脈:心室頻拍(Torsades de pointesを含む)、心室細動等があらわれることがあるので、このような場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
3)突然死:血圧低下、心電図異常(QT間隔の延長,T波の平低下や逆転、二峰性T波ないしU波の出現等)につづく突然死が報告されているので、特にQT部分に変化があれば投与を中止すること。またフェノチアジン系化合物投与中の心電図異常は、大量投与されていた例に多いとの報告がある。
4)再生不良性貧血、溶血性貧血:類薬(クロルプロマジン)で再生不良性貧血、溶血性貧血があらわれたとの報告がある。
5)無顆粒球症:無顆粒球症があらわれることがあるので、異常(初期症状として発熱,咽頭痛,全身倦怠等)があらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
6)麻痺性イレウス:腸管麻痺(食欲不振、悪心・嘔吐、著しい便秘、腹部の膨満あるいは弛緩及び腸内容物のうっ滞等)を来し、麻痺性イレウスに移行することがあるので、腸管麻痺があらわれた場合には投与を中止すること。なお,この悪心・嘔吐は本剤の制吐作用により不顕性化することもあるので注意すること。
7)遅発性ジスキネジア:長期投与により、口周部等の不随意運動があらわれ、投与中止後も持続することがある。
8)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH):低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム排泄量の増加、高張尿、痙攣、意識障害等を伴う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)があらわれることがあるので、このような場合には投与を中止し、水分摂取の制限等適切な処置を行うこと。
9)眼障害:長期又は大量投与により、角膜・水晶体の混濁、網膜・角膜の色素沈着があらわれることがある。
10)SLE様症状:SLE様症状があらわれることがある。
【組成】 [散]:10%相当のチオリダジン
[錠]:1錠中10 mg,25 mg,50 mg,100 mg
塩酸チオリダジン100 mgはチオリダジン91 mgに相当
塩酸チオリダジンは白色〜微黄色の結晶性の粉末で,においはなく,味は苦い。水,メタノ−ル,氷酢酸又はエタノ−ルに溶けやすく,無水酢酸にやや溶けにくく,エ−テルにほとんど溶けない。水溶液(1→100)のpHは4.2〜5.2。光によって徐々に着色する。融点:159〜164゜
チオリダジンthioridazine(JAN)は白色〜微黄色の結晶性の粉末で,においはないか,又はわずかににおいがあり,味は苦い。メタノ−ル,エタノ−ル又はエ−テルに溶けやすく,水に溶けにくい。光によって徐々に着色する。融点:68〜72゜
【適応】
(1)精神分裂病
(2)次における不安・焦燥・興奮・多動:うつ病,精神薄弱,神経症,老年精神病
【用法】 1日30〜90 mg(高用量の場合には200 mg)を分服(増減)。原則として1日400mgまで増量することができる
用法・用量に関連する使用上の注意
本剤は心毒性等の重篤な副作用が報告されているため、使用に際しては低用量から開始するなど慎重に投与すること。
【注意】
(1)一般的注意:眠気,注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので,投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する
(2)禁忌
(a)昏睡状態,循環虚脱状態の患者[これらの状態が悪化するおそれがある]
(b)バルビツ−ル酸誘導体・麻酔剤等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者[中枢神経抑制剤の作用を延長し増強させる]
(c)エピネフリンを投与中の患者(相互作用の項参照)
(d)フェノチアジン系化合物及びその類似化合物に対し過敏症の患者
(3)原則禁忌:皮質下部の脳障害(脳炎,脳腫瘍,頭部外傷後遺症等)の疑いがある患者[高熱反応が現れるおそれがあるので,このような場合には全身を氷で冷やすか,又は解熱剤を投与するなど適切な処置を行う]
(4)慎重投与
(a)肝障害又は血液障害のある患者[肝障害又は血液障害を悪化させるおそれがある]
(b)褐色細胞腫,動脈硬化症あるいは心疾患の疑いのある患者[血圧の急速な変動がみられることがある]
(c)重症喘息,肺気腫,呼吸器感染症等の患者[呼吸抑制が現れることがある]
(d)てんかん等のけいれん性疾患又はこれらの既往歴のある患者[けいれん閾値を低下させることがある]
(e)小児(小児への投与の項参照)
(f)高齢者(高齢者への投与の項参照)
(g)高温環境にある者[体温調節中枢を抑制するため,環境温度に影響されるおそれがある]
(h)脱水・栄養不良状態を伴う身体的疲弊のある患者[悪性症候群が起こりやすい]
(5)相互作用
(a)併用禁忌:エピネフリン[エピネフリンの作用を逆転させ,血圧降下を起こすことがある]
フルボキサミン、パロキセチン、フルオキセチン、βブロッカー(プロプラノロール、ピンドロール){不整脈、QT延長等があらわれることがある。}
(b)併用注意
(ア)中枢神経抑制剤(バルビツ−ル酸誘導体・麻酔剤等),降圧剤,アトロピン様作用を持つ薬剤[相互に作用を増強することがあるので,減量するなど慎重に投与する]
(イ)アルコ−ル[相互に作用を増強することがある]
(ウ)ドパミン作動薬(レボドパ,ブロモクリプチン等)[相互に作用を減弱することがある]
(エ)リチウム製剤[副作用(中枢神経症状,錐体外路症状)が現れやすいとの報告がある]
(c)接触注意:有機リン殺虫剤[相互に作用を増強することがある]
(6)副作用
(a)重大な副作用
(ア)悪性症候群(Syndrome malin):発熱,意識障害,無動緘黙,強度の筋強剛,嚥下困難,頻脈,血圧の変動,発汗等が現れることがある。このような場合には,中止し,体冷却,水分補給等の全身管理と共に適切な処置を行う。本症発症時には,白血球の増加や血清CPKの上昇がみられることが多く,また,ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。なお,高熱が持続し,呼吸困難,循環虚脱,脱水症状,急性腎不全へと移行し,死亡した例が報告されている
(イ)突然死:血圧降下,心電図異常(QT間隔の延長,T波の平低下や逆転,二峰性T波ないしU波の出現等)につづく突然死が報告されているので,特にQT部分に変化があれば中止する。また,フェノチアジン系化合物投与中の心電図異常は,大量投与されていた例に多いとの報告がある
(ウ)再生不良性貧血,溶血性貧血:類薬(クロルプロマジン)で再生不良性貧血,溶血性貧血が現れるとの報告がある
(エ)麻痺性イレウス:まれに腸管麻痺(食欲不振,悪心・嘔吐・著しい便秘,腹部の膨満あるいは弛緩及び腸内容物のうっ滞等)を来し,麻痺性イレウスに移行することがあるので,腸管麻痺が現れた場合には中止する。なお,この悪心・嘔吐は本剤の制吐作用により不顕性化することもあるので注意する
(オ)遅発性ジスキネジア:長期投与により,ときに口周部等の不随意運動が現れ,中止後も持続することがある
(カ)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH):まれに低ナトリウム血症,低侵透圧血症,尿中ナトリウム排泄量の増加,高張尿,けいれん,意識障害等を伴う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)が現れることがあるので,このような場合には中止し,水分摂取の制限等適切な処置を行う
(キ)眼障害:長期又は大量投与により,角膜,水晶体の混濁,網膜・角膜の色素沈着が現れることがある
(ク)SLE様症状:SLE様症状が現れることがある
(b)その他の副作用
(ア)循環器:血圧降下,頻脈,不整脈又は心疾患悪化がみられることがあるので,観察を十分に行い慎重に投与する
(イ)血液:白血球減少症,顆粒球減少症,血小板減少性紫斑病等が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には,減量又は中止する
(ウ)消化器:食欲高進,食欲不振,悪心・嘔吐,便秘等が現れることがある
(エ)肝臓:まれに肝障害が現れることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には,減量又は中止する
(オ)錐体外路症状:パ−キンソン症候群(手指振戦,筋強剛,流涎等),ジスキネジア(けいれん性斜頚,顔面及び頚部のれん縮,後弓反張,眼球回転発作等),アカシジア(静座不能)が現れることがある
(カ)眼:視覚障害が現れることがある
(キ)内分泌:ときに乳汁分泌,射精不能,月経異常等が現れることがある
(ク)精神神経系:不眠,眩暈,頭痛等が現れることがある
(ケ)過敏症:過敏症状又は光線過敏症が現れた場合には中止する
(コ)その他:口渇,鼻閉,倦怠感が現れることがある
(7)高齢者への投与:高齢者では起立性低血圧,錐体外路症状,脱力感,運動失調,排泄障害等が起こりやすいので,患者の状態を観察しながら慎重に投与する
(8)妊婦・授乳婦への投与
(a)動物実験(マウス,ラット)で催奇形作用(口蓋裂の増加)が報告されているので,妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい
(b)母乳中へ移行することが報告されている
(9)小児への投与:フェノチアジン系薬剤を小児に使用した場合,錐体外路症状,特にジスキネジアが起こりやすいとの報告がある
(10)適用上の注意 投与時:治療初期に起立性低血圧が現れることがあるので,このような症状が現れた場合には減量等適切な処置を行う
(11)過量投与
(a)徴候,症状:傾眠から昏唾までの中枢神経系の抑制,血圧低下と錐体外路症状である。その他,激越と情緒不安,けいれん,口渇,腸閉塞,心電図変化及び不整脈,呼吸抑制等が現れる可能性がある
(b)治療:本質的には対症療法かつ補助療法である。早期には胃洗浄が有効である
(12)その他
(a)制吐作用があるため,他の薬剤に基づく中毒,腸閉塞,脳腫瘍等による嘔吐症状を不顕性化することがある
(b)本剤による治療中,原因不明の突然死が報告されている
(13)室温・遮光保存
(14)規制等:指,劇(10 mg,25 mg錠を除く),塩酸チオリダジン局
【作用】
(1)薬効薬理
(a)静穏作用:感情興奮抑制作用が運動抑制に先行して現れる(ラット)。感情の興奮を弱め,静穏作用に導く(ヒト)。激越型のうつ状態の患者に効果
(b)運動抑制作用:自発運動や条件回避反応の抑制や,カタレプシ−引起し作用は弱い(ラット)
(2)体内薬物動態(海外)
(a)血中濃度:精神分裂病患者にチオリダジン200 mgを1回経口投与後の血漿中濃度は3.3時間で最高0.75 μg/ml
(b)代謝:血中未変化体は28%,血中代謝産物はメソリダジン及びスルホリダジンなどのS‐酸化活性代謝産物
(c)排泄:精神分裂病患者におけるチオリダジンの排泄率は糞中30〜45%(5日間),尿中31〜36%(16日間)
(3)非臨床試験 毒性LD50(mg/kg)マウス:経口=385,ラット:経口=1060
【長期投与】
<内服>精神分裂病(03):30日