意識が深い眠りの底から浮上してくる。次第に五感からの刺激が強まり、あたしはもぞもぞと寝返りを打った。
「ん……」
ゆっくりと瞼を開くと、光が目に飛び込んでくる。
朝だ。
視線を巡らして時計を探すと、時刻はまだ七時前だった。いつもの起床時間より幾分早いようだ。
窓の外からは低く、『でっでっ、ぽっぽー』とキジバトの鳴き声。どうやらこの声で目が覚めてしまったらしい。
時計がアラーム音を響かせるまで、もう少しまどろみを楽しもう――そう思って掛け布団を引き寄せたところで、ふいに部屋の様子がいつもと異なることに気付く。
未だぼんやりする頭でしばし考え、ようやく思い出した。今日の放課後に名雪があたしの家へ遊びに来るので、昨日のうちに部屋の片付けをしたことを。
別に普段から散らかしている訳でもないのだけれど、親友とは言え他人に知られるのが恥ずかしいものだって少しはある。……かなり、かも。
すっきりと片付けられた部屋の様子は、いつもより素っ気ない印象だった。まるで、自分の部屋じゃないところに泊まったような感じがして、少し落ち着かない。
そんなことを考えていると、いつの間にやら目が覚めてきてしまった。仕方がないので体を起こし、時計に手を伸ばしてアラームをオフにする。役目を果たすことなく止められた時計のスイッチが、不服そうにカチリと音を立てた。
カーテンを引っ張ると、外から眩しい朝日が差し込んできた。窓の近くに留まっていたハトが、あたしにびっくりしてバサバサと飛び去っていく。
「うぅ……んっ」
日の光を浴びながら、あたしは大きく伸びをした。朝、起きたときに眩しい光を浴びるのは、体内時計をリセットするために重要だと聞いたことがあるから――あんまり効果の程を実感したことはないけど。
眠る間だけ髪をまとめているゴムを取り外し、指で髪を軽く梳く。あたしの髪は猫っ毛なので、すぐ絡まってしまうのが難点だった。さらさらヘアの栞が羨ましかったりもする。
それから、ベッドの脇に並べてあったスリッパを履き、あたしはあくびを噛み殺しながら部屋を出た。
「おはよう、お姉ちゃん。今日は早起きなんだ」
洗顔を終えてからダイニングの入り口を潜ると、キッチンから栞が姿を現した。ひよこ柄のパジャマにピンクのエプロンを掛けた格好だ。
「おはよ、栞。ちょっと窓の外でハトがうるさくて……ふぁ」
答えている間にも、あくびが出てしまう。栞がくすっと笑った。
「最近、ハトが多いよね。お洗濯物とか気をつけなきゃいけないし。カラスが減っちゃったせいなのかなー」
栞は小首を傾げ、それからあたしに謝った。
「あ、お姉ちゃんごめんね。朝ご飯まだできてないの」
「別に謝んなくていいわよ。あたしが早く起きてきたのが原因なんだし」
「うん。もうちょっと待っててね」
言い残して、栞はパタパタとキッチンの方へ戻っていく。
ここ最近はずっと、栞は毎朝早起きしてお母さんを手伝っていた。朝食を作るついでに、自分達のお弁当も用意しているのだ。あたしには真似できそうにない。
眠い目をこすりつつ、リモコンのボタンを押してテレビの電源を入れる。いつもより早い時間の番組は、どこもローカルニュースばかりで面白くなかった。
と、そこへYシャツにネクタイ姿のお父さんが姿を見せた。
「香里がもう起きてるなんて珍しいな。雨でも降るんじゃないのか?」
「うー、そんなことないもん。今日は晴れるって言ってたし」
確かにあたしは朝が弱いけど、少なくとも親友ほどじゃない――と思いたかった。もっとも、家の中で一番起きるのが遅いのも事実だけれど。
そうこうしているうちに、お母さんと栞がお盆にご飯を載せて持ってきてくれた。みんなで食卓を囲み、朝食タイムが始まる。朝ご飯の内容は、アジの開きにタケノコの味噌汁、だし巻き卵、そして菜の花のおひたし。ほんのり甘い卵を味わいつつ、やっぱり朝は和食が一番だと思う。
お父さんは新聞を読みながらだし、あとの二人はゆっくりペースなので、食べ終わるのはあたしが一番早かった。箸を置いて「ごちそうさま」を言い、食器を重ねて流しへと持っていった。
それから洗面所で歯を磨く。歯ブラシに歯磨き粉を載せて口に入れると、強烈な刺激が舌を痺れさせた。さすがエクストラ・ストロングミント味、こうでなくちゃいけない。あたしはようやく頭がすっきりしてくるのを感じた。
口をゆすいでいるとき、ふと洗面台に置かれたもう一つの歯磨き粉が目に留まった。栞が使っている『こどもはみがき』メロン味だ。こんな刺激のないものじゃ爽快感が足りないとあたしには思えるのだけど……。
そう考えていたとき、あたしはふいに名案を思いついた。
栞の歯磨き粉とあたしの歯磨き粉、二つのキャップをそれぞれ外し、両手に持ってチューブの口をぴったり合わせる。そして、右に持ったあたしのチューブをぎゅっと押した。ちょっとはみ出したものの、おおよそ一回分の歯磨き粉が左の方へ移動する。
後ろからスリッパの音がしたので、あたしは慌てて歯磨き粉を元の場所へ戻した。
「ん? どうかしたの、お姉ちゃん」
「ううん、別に。ちょっと歯磨き粉を床に落としそうになっただけ」
「そうなんだ」
慌てた様子が不審に思われたのだろうか。けれど、あたしがなんでもないようにごまかすと、栞は素直に頷いた。
栞は歯ブラシを取って水ですすぎ、『こどもはみがき』を付けた。あたしはタオルで手を拭いながら、横目でその様子を窺う。そして――
「ひわーっ」
歯ブラシを口にくわえた栞が、直後に悲鳴を上げた。大あわてでコップに水を注ぎ、口に含む。
「――っ!」
強いミント味のせいで水も刺激になったのだろう。栞はもう涙目だ。あたしの我慢もここまでだった。
「ぷっ。くくっ……あはははは!」
すぐに誰の仕業か気付いた栞が、涙の浮かんだ目であたしを睨む。
「おねえちゃんっ!」
「い、今の声、『ひわー』だって……あははははっ。お、おかしすぎる……」
「うーっ」
可愛らしい声で唸る妹に、あたしは頭を下げた。
「ご、ごめんごめん。ちょっとした……いたずら……あはははっ」
「お姉ちゃんのいじわる!」
朝っぱらからおなかが痛くなるぐらい大笑いしたあたしを、当然のことながら栞はなかなか許してくれなかった。
粘り強い交渉の結果、取引はアイスクリーム二つ分で決着。数は少ないけれど、商店街の洋菓子屋という指定が付いているので、結構懐が痛かったりする。
まあ、自分が蒔いた種なんだけどね。
「ただいまー」
「おじゃましまーす」
玄関のドアを開けて、あたしと名雪の声が家の中に響いた。
学校が終わって、あたし達二人はいったん商店街に寄った後、約束通りあたしの家へとやってきていた。
「さ、遠慮しないで上がって」
「うん。ありがと」
あたしにとって、友達を自分の家に招くというのは今回が初めてのことだった。今までは家の中がごたごたしていて、とてもそんな余裕はなかったのだから。
お客用のスリッパを名雪の足下に差し出してから、あたしも自分のスリッパを履く。それから名雪に先導して、あたしは階段を上がっていった。
二階に着いて、奥にあるドアの前まで行く。
「ここがあたしの部屋」
そう言ってあたしはドアノブを引いた。ところが、そこにあったのは思いもかけない光景だった。
「わぁーっ」
「……えっ?」
感嘆の声を上げる名雪と、絶句するあたし。
部屋を埋め尽くしているのは無数のぬいぐるみだった。クマやウサギ、ネコといった定番から、アリクイやアルマジロのような変わり種、さらにはカブトガニのような異色のものまで。色とりどりのふわふわ、もこもこが部屋のそこここに鎮座ましましている。
「すっごく可愛いね〜。全部、香里のなの?」
「あ、あの……えっと」
頬が、かーっと熱くなるのを感じた。
ぬいぐるみは確かにあたしのだ。そう、それは別に問題じゃない。
おかしいのは、このぬいぐるみは昨日片付けたはずだってこと。名雪にあたしの趣味が知られるのが恥ずかしくて、全部押し入れにしまったはずなのだ。それが、今こうして片付ける前と寸分違わない状態に戻っている。あたしは混乱した。
いなせな直立ワニのバナナ君は、絶妙な角度でニヒルな笑みをこちらに見せていた。ピンクのオランウータン一家は、仲睦まじい様子で身を寄せ合っている。
自分は寝ぼけて片付け忘れたのだろうか、思わずそんなことを考えてしまう。何故って、ここまでぬいぐるみ達を元通りに配置できるのは、あたしを除けば――
そこでようやく、あたしは事態を把握した。振り向き、もう一つのドアに向かって叫ぶ。
「し、栞っ。あんたねー!」
「あはは。バレちゃった」
音もなくドアが開いたところを見ると、どうやら細く開けてこちらを窺っていたらしい。現れたのは、何がそんなに嬉しいのかニコニコ顔をした男女――栞と相沢君だった。
「あ、こんにちは栞ちゃん。おじゃましてます」
隣に立っていた名雪が、栞に挨拶する。
「いらっしゃい、名雪さん。ゆっくりしていってくださいね」
「おう、こんにちは名雪。久しぶりだな」
栞に続いて何故か相沢君もそれに応えた。
「祐一とは毎日会ってるよ」
「一日会わなけりゃ久しぶりだろ」
「さっき教室で分かれたばっかりだもん……」
「三十分も会わなければ立派に久しぶりだ」
「あー、もう。そんな馬鹿な話は置いといて」
微妙に聞き覚えのあるやりとりを断ち切って、あたしは栞を睨んだ。
「栞、なんでこんなことをするのよっ」
栞はあたしの視線なんかどこへ吹く風で、
「駄目だよ、お姉ちゃん。友達に隠し事なんて」
などとのたまった。
「えっ、何? どうしたの?」
一人事情が分からない名雪に、栞が説明する。
「お姉ちゃん、実はぬいぐるみコレクターなんです。でも、名雪さんに知られるのが恥ずかしくて、昨日ぬいぐるみを全部見えないところに片付けちゃったんですよ。
だけど、親友に隠し事なんて良くないですよね。だから、私が元に戻してあげました」
「わ、そうだったんだ」
いかにもあたしのためのように言っているけど、絶対嘘だ。今朝のいたずらに対しての意趣返しに決まってる。
「香里、別に隠さなくてもいいと思うけど……。わたしもぬいぐるみ、好きだよ?」
「……あー、はいはい。そうかもね」
なんだかもう、どうでも良くなってきた。
多分、あたしが見栄とか体裁とかを気にし過ぎなんだろう――いや、どっちかと言えばこの子達が気にしなさ過ぎのような感じもしないでもないけど。
いずれにしても、名雪の素直さは見習いたいと常々思ってはいたのだ。その意味では栞に感謝すべきなのかもしれない。
「そうだな。香里がぬいぐるみ集めてたってちっとも変じゃない。可愛い趣味と言えるんじゃないか?」
……ニヤけながらそんなことをぬけぬけと言う、この男の所業を除いては。
「そこの悪人面、どうせあなたの入れ知恵なんでしょ?」
う、と相沢君がたじろぐ。言うほど人相が悪いわけじゃない――せいぜい目付きが鋭い程度だ――けど、本人はかなり気にしているらしい。
「まあ、誰の発案でもいいけど。どっちにしろ、コレはもういらないみたいねー。名雪、二人で一緒に食べよっか?」
あたしは左手に持った袋を持ち上げた。
「えっ?」
「あっ! そんなぁ……」
自分にに話を振られてびっくり顔の名雪と、すぐそれが何かに気付いた栞。
そう、それこそは切り札、帰りに洋菓子屋で買ったアイスクリームだった。それを手にしている限り、主導権はあたしにあるのである。
「さ、どうするのかしら?」
栞は一瞬躊躇した後、素直に頭を下げた。
「うぅ。ごめんなさい、お姉ちゃん」
一つ勝利。あたしは相沢君にも視線を投げる。
「祐一さん……」
潤んだ瞳で栞に懇願されたら、相沢君も折れるほかはなかった。
「す、すまん。香里」
そしてもう一つ。あたしは満足して、アイスクリームの袋を栞に手渡した。
「これに懲りて、子供じみたいたずらはやめることね」
あたしの台詞に、栞と相沢君の瞳が『お前が言うな!』と言いたげなのが感じ取れて、実に小気味がいい。あたしって小姑の素質あるかも。
すごすごと戻っていく二人を見送ってから、あたしと名雪も部屋へ入る。
「駄目だよ香里、あんまり栞ちゃんに意地悪しちゃ」
テーブルを挟んで腰掛けたところで、名雪があたしにそう言った。あたしは洋菓子屋でアイスと一緒に買ったシュークリームをテーブルの上に取り出しながら答えた。
「大丈夫だって。あれは姉妹の親愛の念を示すものなんだから」
「そうなの?」
「うん。そうなの」
我ながらいい加減だ。
そこでつい調子に乗って、今朝の件まで名雪に話してしまったのが運の尽きだった。名雪はあたしのいたずらが過ぎると感じたようだ。
「ちゃんと栞ちゃんに謝らなきゃ駄目」
名雪はにっこりと笑顔であたしに告げる。
「でも……」
あたしの抗議に、名雪は首を横に振った。彼女はワニのバナナ君を抱えている。その喉元には長さ三十センチの物差し――つまり、人質ならぬワニ質だ。
「でもは無し、だよ」
「……わ、分かったわよ。バナナ君の命には代えられないわ」
あたしは不承不承頷く。まあ、自分でも少しやり過ぎたかなとは思っていたし。
名雪に付き添われて謝りに行くと、二人はあっさりと許してくれた。お詫びも兼ねて、四人でシュークリームを食べることにする。
栞が淹れてくれたアールグレイの香りと、カスタードのふんわりした甘さ、そして弾むお喋り。その日の午後は名雪のおかげで楽しく過ごすことができた。
やっぱりあたしは、この天然娘にはかなわない。
次の日のお昼休み。
日直の用事があったせいで、あたしは学食の争奪戦に出遅れてしまった。今から行ったとしても、席が空くまでかなり待たされることになるだろう。
購買部で何かを買うほかはなさそうだったが、売れ残りのあんパンとかコッペパンを食べるのも今一つ気が進まない。
こうなると分かっていたら、登校するときに駅の近くのパン屋で昼の分を買っておくんだった。もっとも、あそこはあそこで店主と客が賞味期限ギリギリのチキンレースを競うリスキーなお店なんだけど。
そんなことを考えながら廊下を歩いていると、窓越しに外の風景が目に入った。寒かった冬も終わって、だんだん中庭にも人影が増えてきている。その中に一組、あたしが良く見知った男女が混ざっていた。言わずと知れた栞と相沢君だ。
あたしは一計を案じ、上履きのまま外へと出た。まだ空気は少し冷たいものの、穏やかな春の日差しが肌に心地良い。
抜き足差し足で、栞の背後から二人に近づく。相沢君はあたしに気付いたようだけど、黙っているよう仕草で合図。相沢君は視線だけで頷いてみせた。
そして――
「いただきっ」
「きゃっ!」
楽しそうに談笑していた栞のお弁当箱から、あたしはだし巻き卵を一つかすめ取る。
「……もう、お姉ちゃんっ。お行儀悪いよ」
「まあ、いいじゃない。細かいことは気にしないの」
口をとがらせる栞に、あたしはウィンクを返した。そして、だし巻き卵を口に運ぶ。
「……へぇ、なるほどね」
一口味わって、あたしは少し驚いていた。あたしの様子に、栞が不安そうな顔になった。
「もしかして、美味しくないかな?」
「そんなことないぞ。以前よりも上達してるくらいだ」
相沢君がすぐにフォローを入れる。あたしも頷いて同意した。
「ちゃんと美味しいわよ。そういうことじゃなくて、ちょっとびっくりしただけ。家の味とはずいぶん違うんだなって思ったの」
あたしの言葉を聞いて、栞に笑顔が戻った。
「あ、うん。祐一さんの好みに合わせたものだから」
「そうなのか?」
今度は相沢君が驚いている。
「あたしの家のだし巻き卵は、もっと甘いわね。これはお砂糖じゃなくてみりんを使ってるのかしら」
「うん。さすがお姉ちゃん」
あたしの推測に栞が首肯した。今年になるまで料理を作ったこともなかった子が、よくぞ成長したものだと感慨深い。
「そっか。栞は俺の好みを研究してくれたんだ。ありがとな」
相沢君に礼を言われて、栞は頬を染めながら「大したことじゃないですよ〜」と照れた。そこへ相沢君が畳みかける。
「じゃあ次は、我が家に伝わる伝説の味覚、ハバネロ激辛オムレツ地獄変も頼む」
「そんな凶悪そうなもの思いつく人、嫌いですっ」
この二人のやりとりはテンポが良くて、端から見ていて楽しい。
あたしとしては、いたずら相手の栞を取られちゃったみたいで少し寂しいような気もするけど、これはこれでいいんだって素直に思える。
「はぁ……。あんた達を見てたらお腹いっぱいになっちゃったわ。ごちそうさま」
あたしはそう言って立ち上がった。
「香里、もう昼飯は食ったのか?」
「ううん、まだ。ま、購買部に行って売れ残りのパンでも買うことにするわ」
肩を竦めたあたしに、栞がお弁当箱を差し出す。
「お姉ちゃん、良かったら私のお弁当を半分……」
「駄目よ。あんたはただでさえ食が細いんだから、そのくらいはちゃんと食べておきなさい」
「はぁーい」
栞は素直に頷いた。卵を横取りしたあたしが言うのもなんだけど。
「じゃ、あたしはもう行くわ」
「おう」
「お姉ちゃん、また後で」
手を振って、あたしは二人の元を離れた。
中庭では、他にも幾人かがグループを作って昼食を摂っている。まだその数はまばらだけれど、これから暖かくなるに従ってその人数は増えていくんだろう。凍てつく冬の時間はもう過ぎ去ったのだから。
――そして一緒に、あたしの中にあった冬も。
空に目を向けると、一瞬眩しい太陽が視界に入った。目を閉じて瞼越しにその光を感じ取る。明るいオレンジ色に満たされた世界は、ほどよくぽかぽかと暖かい。
そう、季節は既に春だ。落葉樹の枝には新しい緑が芽吹き、花壇の植物も間もなく花を咲かせ始める。花の蜜に惹かれてそのうち虫達も姿を現すだろう。
雪に閉ざされて止まっていた時間が再び動き出した。それは新生の季節なのだから。
だからあたしも生まれ変わり、前を向いて歩こう。今度こそ、自分の弱さに負けないように。
暖かな陽光をいっぱいに浴びながら、そんな風に思った春の日だった。
Fin.