Book Review
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『海』を舞台にした物語、海が主役の物語、エトセトラ‥‥


=工事中
タイトル著者出版社刊行年読了
小 説 系
『魚雷艇学生』 島尾 敏雄新潮社1985.121998.1
『坂の上の雲』司馬 遼太郎文春文庫1978.4
『司馬遼太郎の跫音』司馬遼太郎他中公文庫1998.11998.8
『生まれ出づる悩み』 new! 有島 武郎角川文庫1969.41998.2
『深海の使者』 吉村昭文春文庫1976.4
『海の都の物語』上/下塩野 七生新潮社1993.10
『レパントの海戦』塩野 七生新潮文庫1992.04
『戦艦大和』吉田 満角川文庫
『海将伝』中村 彰彦角川書店1996.7
論 説 系
『海軍と日本』 池田 清中公新書1981.111998.8
『日本の安全保障』江畑 謙介講談社現代新書1997.10
『失敗の本質-日本軍の
組織論的研究
-』
戸部 良一他ダイヤモンド社1984.5



 あらすじ:昭和18年9月に海軍兵科予備学生として採用された著者が、一年弱の訓練期間に続き、少尉任官後配属された魚雷艇(『震洋艇』通称マルヨン)の指揮官として沖縄県加計呂麻島の前線基地に派遣されるまでを綴った自伝的小説。
 コメント:学徒出陣で海軍に入隊した者が現した手記としては故吉田満氏『戦艦大和ノ最期』が知られているが、それに勝るとも劣らない作品である。特に著者の島尾氏は元々文学的才能に恵まれた人物であり、その力量はこの小説にも如何なく発揮されている。
 殊に周囲の人々に対し向けられる乾いた視線は、孤高とも悲劇的陶酔や自己弁護から遠く、むしろ物語に登場する人物一人一人に注がれるさりげない観察眼と、その結果導き出された考察が、ともすれば重く息苦しさすら覚えかねない小説に、等身大の青年の息吹を織り込ませる事に成功したと言える。

 ―――関係ないが、三笠見物に行った時、お供にしたのはこの本です。



 周知の事実であるが、戦時中、陸軍の戦車部隊に属していた故司馬遼太郎氏は、生前大の海軍びいきだった。昭和40年代、サンケイ新聞に4年以上の長きに渡って連載された本著『坂の上の雲』を読んでも、その思いはひしひしと伝わってくる。
 あとがきによると、元々彼は正岡子規が好きで、その故郷松山を訪ねた折、この明治屈指の俳人が日本海海戦の作戦立案者、秋山真之の幼なじみであると知り、この作品の執筆を思い立ったようだ。しかし昭和二十年に絶息した、日本にあって稀有な性質を持ったこの防衛集団に対し強烈な思慕の念を抱くに至った直接の原因は、元海軍学徒兵であった阿川弘之の知るところ、前もって取材した相手が揃いも揃って大変な粒揃いであったところに一部由来するらしい。
 確かに本作品を読んでいて気付かされるのは、人間社会にとり血液循環に例えられる人事において動脈硬化に等しい症状を呈し、目を覆う惨状を二〇三高地に作りだした陸軍よりも、思いきった組織刷新を行い、ために揺るがぬ勝利を対馬沖において手中にした海軍に対する描写の、その熱の篭り具合である。

 明治の日本軍と言えば、
「薩の海軍、長の陸軍」
 に現される通り、その中枢を占める人間は特定の出身地で固められていたと言っても過言ではなく、故に素養も能力もなく、単にその地方の出というだけで多くの兵に死を命じるポストに就いた将校が非常に多かった。ただ幾分海軍が幸運だったところは、きっかけはどうであれ、その地位にいた男たちに、非凡な者が大勢いた点かも知れない。無論、陸軍とても傑出した人物は多数いたのだが、末肢は頭に逆らえないのが現実だった。

 新聞記者時代に鍛えた作者の資料読解力と持ち前の好奇心、そして天性の人の良さが、この小説に力強い翼と屈指の生命力を与えたであろう事は疑うべくもないが、欲を言えば、連合艦隊の主力にいた人物(取り分け、東郷元帥と秋山作戦参謀)のみでなく、その枝葉艦隊にいた将校や関係者(島村速雄、佐藤鉄太郎)にも、もう少しスポットをあてて欲しかった。



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 あらすじ:突然「私」の元へスケッチを持って現れた少年は、十年の月日を経て再び姿を現した。出会った時の病的な少年ではなく、陽に灼けた堂々たる体躯の青年として‥‥。
 その後、東京へ帰った「私」は、北海道の厳しい海と戦いながら、なお芸術に対する憧憬と傾斜を止められずに悩み苦しむ青年の心を切々と綴ってその寂寥に喘ぐ孤独な魂への励ましとなす。
 コメント:この短編小説に書き現された「海」の、その存在感と影響力は、太平洋や東京湾のように明るく伸びやかな海しか知らない私に取り非常に恐ろしげに写った。六節の大嵐は言わんや、もしも木本少年が海に取り憑かれた土地に生を享けなければ、或いは彼は望み通り芸術一筋の人生を歩んでいたかも知れないと思いを巡らす時、人一人の生涯すら捩じり伏せ、付き従わせてしまう「海」とそれに対する一個人の絶望的なまでの非力と虚無は、言葉を失わせる程に懸け離れ過ぎていやしないだろうか。
 この非情にして高圧な今一つの海の顔こそ、この小説の今一人の主人公である気がしてならない。

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 あらすじ:太平洋戦争勃発後の日本海軍は、連合軍により封鎖された大西洋に隔てられた3万キロかなたのドイツに大型潜水艦を派遣していたという史実を、可能な限り再録したノンフィクション小説。
 コメント:実はまだ未読了なので、本来コメントは避けるべきなのだが、戦前の日本の潜水艦が実施した作戦や艦内の生活が非常に詳しく描写されているので、この方面に興味ある方にはお勧めしたい。

 氏の著作の一部紹介:『帰還セズ』、『総員起シ』、『海の祭礼』(^^;、『海軍乙事件』、『幕府軍艦「回天」始末』
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 あらすじ:1571年10月7日ギリシャ中西部コリントス湾ナウパクトスで行なわれた16世紀最大の海戦に至るまでと経過を、欧州連合艦隊の幹部の目を通して綴る。
 コメント:『コンスタンティノープルの陥落(1453年)』、『ロードス島攻防戦(1522年)』に続く地中海三部作の締め括り。203隻からなるローマ教皇庁/スペイン王国/ヴェネツィア共和国連合艦隊に対し、オスマン・トルコ艦隊230隻が激突、欧州勢の勝利で終るが、まだ大砲が実用化されて1世紀強の帆船時代であるからして、戦闘の中心はもっぱら長銃と長剣を手にした兵士による白兵戦。
 この作戦の実施に辺り、最も奔走し、また人員物資両面において 一番多くを費やしたのが『アドリア海の女王』と呼ばれ、地中海貿易で栄え、ためにオスマン帝国の隆盛により最も深刻な打撃を受けたヴェネツィア共和国であった辺り、いかに彼らが通商航路の安全に心を砕いてきたかが窺われる。

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 概  要:1943年に海軍兵学校卒業後、重巡『摩耶』、戦艦『武蔵』、潜水艦『伊号四七号』に乗り組んだ経験を持つ著者が、73年と9カ月で潰えた日本海軍を「海軍と戦争」「海軍と政治」「海軍の体質」を柱に論じた、辛口『日本海軍論』。1世紀に満たなかった海軍の変遷を、勃興から終焉、栄光から失墜、完勝から惨敗までを実に冷徹に解説している。良著
 コメント:クリーンにしてスマートなイメージの強い海軍を、「(略)破滅の淵に日本をひきずり込む役をもたしかに果たした」(本文vi)とみなして論議を展開していく著者の筆は真摯にして容赦なく、他ならぬ彼自身が「海軍のメシを食った人間」と思えば圧倒されずにはいられない。
 昭和初期の海軍には、大陸政策や満州国建国などで暗躍する陸軍を正面から制し、対抗しなければならない義務と役割があったにもか関わらず、みすみすその尻馬に乗る形で戦争へと突入していった原因を、時代遅れのロマンティシズム、脆弱な交渉力と政治力、表面だけに留まった英国流儀と著者は見ている。その責任追及を論じた、いわば「告発の書」というべき性質が本書には備わっているが、感傷とも自己弁護とも過度の愛国主義とも無縁であるがゆえに、海軍入門書としては広く受け容れられる素地を持つものと確信する。
 巻末で池田氏自身もこう述べている: 
 氏の著作の一部紹介:『日本と海軍』(S41 絶版)『激闘 重巡摩耶』(R出版)
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