SIDE B












「若がえったぁー!!ちょっと、どういうことなのよ!!」

アスカがリツコに詰め寄る。

「たぶんエヴァの影響ね。これから色々研究してみないことには何とも・・・クスッ!」

リツコが不気味に笑う。

`前から調べてみたかったのよねぇー!!良いチャンスだわ・・・’

「シンジさんはどうなんですか!?」

レイが涙目で聞く。

「今のところ心配はないわ。後遺症も見られません。」

リツコが優しく答える。

「要するに、ただ若返ったのぉ?私もやろうかしら?」

馬鹿なことを真剣に考えるミサト。アスカとマヤのの蹴りが飛ぶ。

グシャ

「ウグェ・・・」

さらばミサト。君のオマヌケさは忘れない・・・

「・・・さっ。バカはほっといてと。じゃあ、シンジは平気なのね!?良かったぁ。」

そう言いながらシンジに抱きつくアスカ。

「・・・ん?」

その衝撃で目を覚ますシンジ。ゆっくりと目を開ける。

「あれ?どうなってんだ?」

「シンジ!!」

「シンジさん!」

「シンちゃん!」

「シンジ君!」

全員が一斉に飛びつく。

「グェ・・・」

再び気を失うシンジ。

「キャァ!シンジ!ちょっとミサト!重すぎるんじゃないの!」

「キィー!!言ったわねぇー!何よ、アスカだって力一杯体当たりしたくせに!!」

「ふん!何よ、このビール腹!!」

「お子様体型!」

素晴らしく低レベルな争いを繰り広げる二人。

「・・・二人とも、邪魔・・・」

「そうですよ!シンジ君は病人なんですからね!」

そしていつの間にか、倒れたシンジの頭を膝の上に乗せているレイとマヤ。

「ちょっと!どさくさ紛れて何やってんのよ!」

「マヤ!あんた、潔癖性のふりして・・・侮れないわね・・・」

その間、リツコは一人、データを見ながらにやにや笑っていた。

「フフッ。これから面白くなりそうね・・・」

メガネがキラリと光った。






「・・・はぁ。で、いつ直るんですか?」

あれから回復したシンジは、泣くレイとアスカを必死に落ち着かせ、ミサトの愚痴を聞き、気を失うマヤを介抱してから、やっと静かになってみたら、聞かされた言葉が、

「シンジ君、あなた若返ったの。推定、十六歳ぐらいかしら。レイ達と同じね。」

である。

「・・・今のところ、何とも言えないわね。これから検査しましょうかぁー?」

怪しくリツコが微笑む。「しましょうか?」と聞いておきながら、もうしっかりとカルテを作って有るのが彼女らしい。

「・・・今は良いです、ハイ。自分で解明してみます・・・」

冷や汗混じりにそう言うシンジ。

「そう・・・リツコさん悲しいわ・・・あなたのことを心配して言ってるのに・・・」

いつの間にか出した布きれの切れ端を噛むリツコ。涙を流して悲しがる彼女。そのポケットから何かが落ちる。

「なんですか、これ?・・・目薬・・・」

その目薬はいわゆるピンク色の物で、若い女の子向けの物である。

シンジの目線が厳しくなる。

「ほほほほほほほ。やだぁ、もう!じゃ、またね!」

バンバンシンジを叩きながら独りでに出ていくリツコ。キャラクターが変わってきてるのは誰のせい?

「・・・ふぅ・・・でも、明日から大学、どうしようかなぁー?」

ため息混じりにシンジは外を見た。

窓からの日差しは、暖かに彼を照らした。






「・・・というわけで、明日からシンちゃんはレイ達の通う第三東京都市私立高等学校に編入しなさい。ちょうど良い機会じゃない、レイのことも、ネ?」

シンジがすっかり回復したのは、それから五日ばかりたってからのことだった。

あれから毎日きていたアスカとレイは、ただいま学校に行っている。

休むと言い張った彼女らの意見は、あっさりと却下され、渋々通っている。

退院の支度をしていたシンジに、いきなりミサトが駆け込んできたのである。

「へ?僕が高校生ぃ?ハハハハハハ!今の結構、面白かったです。」

まったく相手にしないシンジにミサトがむくれる。

「もう、シンちゃん!冗談じゃないんだってばぁー!役所に問い合わせたら、シンちゃんの経歴がもう書き変わってたのよ!」

「そんな!誰が・・・?」

考えるまでもない。リツコしか出来ないことであろう。MAGIでハッキングしたに決まっている。

理由は単純明快。「面白そうだから。」

その後ろで、レイとアスカが暗躍していたことには、さすがに気付かないシンジ。

「まいったなぁ。こうなると、リツコさん、僕にMAGI触らせないだろうし・・・実験が・・・高校か、僕二十二歳ですよ?」

「だぁーかぁーらぁー、あなたは十六歳なの!鏡で見たぁ?自分の姿。」

シンジのその姿は、確かに二十二歳には見えなかった。十六といっても、実際は十四ぐらいに見える。

もともと童顔な彼は、若返ったことによってますますそれが明確になった。

以前はハンサムと言った言葉がよく使われたが、今はどちらかというと可愛いという方があっている。

身長も、レイと同じぐらいしか無く、ミサトと比べると胸の上辺りまでしか無い。

「まいったなぁ。この歳で高校生か・・・なんかB級ドラマみたい・・・」

そう言ってむくれるシンジ。そんな顔を見て微笑むミサト。

「そんな顔したって、可愛いだけだぞ!じゃあ、ここに制服おいておくから。書類等はもう提出済み。万事オッケーよ!シンちゃんは、私の義弟って言うことでよろしく。」

そう言って、シンジの頭をぐりぐり触るミサト。

`何が万事おっけぇ・・・’とつっこもうとしたが、やめる。さすがはシンジ。ミサトには何を言っても無駄だということが身にしみている。

「もうシンちゃんたらぁ。このしとやかで美しいミサト様の弟になったのよ。ちょっとは嬉しそうにしなさいよぉ。」

そう言ってほっぺたをツンツン触るミサト。齢二九歳にもなると、「しとやかさ」という単語が「ずうずうしさ」に変わってくるから不思議である。

`オバタリアン、なってしまえば、怖くない(字余り)。’碇シンジ、心の俳句であった。

「ミ、ミサぁ・・・ああ?」

もはや、彼女の姿は消えていた。さすが、リツコの親友。シンジはそう実感せざるを得なかった。

「・・・一体・・・」

横を向けば、きちんと畳まれた制服が目にはいる。

「・・・高校か・・・」

そんなシンジの自重気味の呟きは、誰にも聞こえなかった。






「さぁーみんな!!転校生を紹介するわ!!では、どうぞ!!」

ガラガラ

教室で歓声が上がる。歓喜の喜びか、嘆きの叫びか。男女ともに叫んでいる。

「じゃあ、こっちで挨拶して貰おうかな。かもーん!かもーん!」

そう言って、ミサトが教壇を下りる。かわりにその少年が上がり、自分の名前を黒板に書いた。

「・・・六分儀シンジです。皆さん、よろしく。」

それだけ言うと、ニコッと笑った。キザな行為が、アンバランスにマッチしている。本人に自覚が無いところがシンジらしい。

ちなみに「六分儀」は彼の父親の旧姓である。さすがに同じ名前ではまずいだろうと言う事から、リツコが変えておいたらしい。表面上はさすがにまともである・・・のかな?

事情を知っているレイとアスカは複雑である。シンジの側に入れて嬉しい反面、外の子達に注目されるのは悲しい。

唸るアスカが横を見ると、レイも同じように顔をしかめていた。

それを見て、ちょっと笑うアスカ。二人の目線があい、思わず微笑む。

そのうちに、シンジの自己紹介が済み、シンジが席に着く。タイムリーにベルが鳴る。

「もう休み時間か・・・ハイ、じゃあ今日はここまで!(って言っても何にもしてないんだけど・・・)シンちゃん、またね!チュ」

投げキスしながら出ていくミサト。その一部始終を見ていたクラスがどよめく。

`・・・ミサト先生が?まさか放課後の禁断の関係!?(謎)うそっ?委員長として知らなければぁ!!ワクワク’

`・・・シンちゃんか・・・うらやましいのぉ・・・まてよ?ワシの場合だと「トウちゃん」?いややー!!’

`・・・ハッ、テープが切れていた!ウルウルウル・・・’

慌てふためくクラスを尻目にシンジは平然としている。

`まったくミサトさんは・・・まいっか。’

結構のんきである。さすがはこの男。若返って動じないだけのことはある。

「シンジ!」

「シンジさ・・・じゃなくて・・・六分儀君。」

アスカとレイが寄ってくる。

アスカはそのままだったが、レイは学校では「六分儀君」と呼ぶようにしていた。

彼女なりの気の使い方であろう。多少、照れくさいようである。

「レイ、アスカちゃ・・・あっ!」

言った後で慌てて口を噤むシンジ。しかし、クラスはそれを見逃さなかった。

`「レイ」?「アスカちゃん」?ますます気になる・・・’

`呼び捨てかいな・・・硬派なワシにはそんなこと・・・ちょっとエエかも・・・’

`あの三人、何かを隠していると見た。(もとからバレバレである)ケッケッケッ・・・’

「ハハハハハハ!」

とりあえず笑ってごまかすシンジ。誰も信じていないのはお約束。

「・・・六分儀君、ちょっと来て。」

すごい勢いで引っ張られていくシンジ。レイ、力の向こうに・・・

「・・・なにあれ?」

「・・・さあ?」

「・・・キラーン!」

クラスはいつまでも三人が出ていったドアを見つめていた。






「シンジ!またアスカちゃんって呼んだわねぇ!?まったく。もう恥ずかしくて、クラス戻れないわ!!!」

顔を赤くして怒鳴る反面、嬉しそうなのも否めない。彼女は実際、この呼び名を結構気に入っていた。

`だって、私だけなんだもん・・・シンジが「ちゃん」付けで呼ぶ娘・・・’

しかし、一人の女性としてみられていないことも確かである。

「・・・シンジ!あの年増は何て言ってるの?いつ治るって?」

「年増」=リツコ。一目瞭然である。

「アスカちゃん。ダメだよ、そんなこと言っちゃ。改造されちゃうよ。リツコさんは僕を若くしときたいようだから、どうかなぁ・・・MAGI使えないし・・・」

「ええー!!じゃあ、シンジこのままぁ?」

「・・・いや、身体の波長レベルさえ落ち着けば、僕でも元に戻る方法が見つかると思うんだけど・・・MAGIがなぁー・・・」

シンジはこのところ、NERVに行っていなかった。行っても追い返されるのだ、リツコと「若シンジ命限愛続会」といういかがわしいグループによって。

「あのババァ・・・許さないわ・・・」

結構、過激なレイ。もちろんシンジには聞こえないように小声だ。

「・・・シンジさん。大学はどうするの?お休み?」

「当分休学だね。幸い、今は施設を借りに行っているようなものだったから。でも仕事は行かなきゃいけないしぃ・・・」

そう言いながら顔をしかめるシンジ。童顔とのアンバランスさが妙に可愛い。

思わず顔をほころばせるレイ。

`これでシンジさんと二四時間一緒に入れるわ・・・作戦成功ね・・・あのオバサンに戸籍をいじって貰っただけのことはあるわ・・・’

名付けて「シンジさんとの距離を深めるラブラブ作戦」。(ネイミングbyレイ)

何を隠そう、リツコにシンジの戸籍を変えるように頼んだのはレイとアスカであった。リツコも最初は渋っていたが、興味深い実験材料と巨大な招き猫が手に入ると聞いて、すぐに取引が設立した。

`あとはあの赤毛猿を闇に葬るだけね・・・クスッ。’

レイの唇の端が妖しく歪む。

見ればアスカも不気味に微笑んでいる。この二人、結構似た者同士である。

シンジはそんなことには気付かず、今晩のおかずのことを考えていた。

`帰りにスーパー寄らないとなぁ、お米もないし。あ!車、運転できないんだ。そうかぁ。でもミサトさんには乗せて貰いたくないし・・・とするとお醤油はこの次の時にするかな・・・’

シンジはやっぱり、のんきであった。






「六分儀君て何処から転校してきたのぉ?」

「好きなタイプは?食べ物、その他聞かせて!」

「ワ、ワタ、ワタシとぉおお、と、と、と、お・・・」

ドモル子もいればハキハキとした子まで。まさに十人十色の見本市である。シンジの回りをひしめくようにたむろしている。

休み時間が終わり、退屈な事業が終わり、お昼休みになった。

さっきはレイ&アスカの最強(最恐?)コンビのせいで近寄れなかったが、今度は負けてはいられない。

彼女たちが最も好む習慣。そう、それは「団結」。

たとえ顔が十人並みでも、名前すら与えられない雑魚キャラでも、「押しきっちゃえば」なんとかなるのが団体の強さ。そう、まさに「なんとかなる」のである。

「・・・はぁ、別にこれと言ってとくには・・・」

淡々と答えるシンジ。シンジにしてみれば、しょせんは「女の子」である。しかし、一応は話を聞く。

「じゃ、じゃあ、惣流さんと綾波さんとはど、ど、ど、ど、ど、どういう関係なんですか!!」

爆弾発言。まさにそんな名前がぴったりの質問であった。

その瞬間、騒がしかったクラスが嵐の前の静けさのように止まった。

ありとあらゆる耳達が一斉にシンジの方を向く。

しかし、そんなことにシンジは気付かない。

「アスカとレイ?ご近所さんだけど・・・それが何か?」

その時、シンジは確かに聞いたような気がした。

クラスの99。89%がヨッシャーと小声で叫ぶのを。

「じゃあ、わた、わた、私とお付き、き、き、き・・・」

彼女がその台詞を言い終えることはついになかった。

バン

行きよいよく誰かが席を立つ。

「ちょぉっとまぁったぁ!!このアスカ様を忘れてもらっちゃあ、困るわね!」

アスカの怒りの目線がその哀れな少女に飛ぶ。

火花、そして殺気。

恐怖の余り、身がすくんでしまうその少女。目には涙が浮かんでいる。

「・・・泣いてすまそうたって、そうは問屋がおろさないわ・・・あなた、消えなさい・・・」

レイがその少女の耳元にボソッと呟く。冷たい冷気が少女の身体を支配する。

「ヒ、ヒィィィ!」

ざざざっともの凄い勢いで去っていく少女。後ろ向きで走る競技がオリンピックにあるのならば、間違いなく金メダルを取れるだろう。

そんな状況をじっと見ているシンジ。彼にして見れば単なる子供の喧嘩である。

「・・・ほらほらアスカ、レイ。お友達をいじめちゃダメだよ。さ、お昼にしよう。」

あくまでもにこやかなシンジ。

「やだぁ、シンジ。いじめてなんかいないわ。ね、レイ?」

「そう。ただお話ししてただけなの・・・」

くるりと振り向く二人。そこには営業、いやシンジ用スマイルを浮かべた天使が二人いた。瞳をうるうると輝かせた彼女たちの笑顔は見た物すべてをときめかせた。(シンジ以外)

そのかわり身にかかった時間、約0。0000003秒。タダ物ではない。(いや、それは元から分かっていたことなのだが・・・)

「じゃあ、お昼にしよう。いつもは何処で食べているんだい?」

そう言って、シンジがにっこりと笑った。






「いっただきまぁーす。」

屋上はちょっとした宴会になっていた。

アスカ&レイはもちろん、ヒカリ、ケンスケ、トウジまでが加わり、ミサト&自称「近くに寄っただけ」リツコの行かず後家コンビまでいる。

「ちょっと、何であんたまでいんのよ。」

ミサトがリツコに問う。彼女にしてみれが、分け前が減るのが悔しいらしい。

「そう言うあなたはどうなの・・・私はただ近くに寄ったからシンジ君の様子をついでにチェックしようと思っただけ。ふっ、完璧な理由ね。」

`うそつけ・・・’

シンジ、心の叫び。

本当のところは、突然現れたリツコが、涙を目にいっぱいため、人差し指をくわえて、物欲しげな目でじぃーっとシンジの横に立っていたのであった。それを気の毒に思った、いや思わされたシンジが無理矢理誘う羽目になってしまったのである。

リツコが勝ち誇った目でミサトを見る。なぜか、手にはもう箸が握られている。

「わ、私だって担任として衛生管理を・・・何よその目。いいわよ!分かったわよ!だって毎日カップ麺じゃ味気ないんだもん・・・」

そう言って顔を手で覆うミサト。しかし、その手の間からちゃんと自分の皿を確保する。

さすがは「結婚できない」コンビ。食うことにかけてはアスカとレイコンビの上を行くチームプレイを見せる。

「はいはい。泣きまねしなくても沢山ありますから。みんなで食べましょう。」

そう言ってシンジが手提げから重箱をだし、真ん中にデンと置く。その量、重箱八段分。どうやって持ってきたのかは永遠の謎である。

「じゃあ、食べましょう。」

そう言ってシンジが蓋を開けた瞬間、火花が散った。

ヒカリとシンジは普通に箸とシンジが用意した紙皿を持っている。これが一般的だと言えよう。

ケンスケ&トウジペアは特別に借りた弁当箱の蓋を皿代わりに使う作戦。これもまあ、常識的だといえよう。

非常識的、いや非人間的に構える不気味な四人組がいた。

何処からともなく出現した丼を構えるアスカ。彼女は箸より面積の大きい特大スプーンを選んだ。

長い箸を両手に構えるレイ。皿は大皿。麺類など、箸で取りやすい物を集中的に攻めていく作戦だ。

ミサトは不気味な調味料達とノンアルコール・ビールを片手に、おたまを持っている。彼女にお皿はいらない。彼女の場合、バキュームのような腹がその代わりを立派につとめてくれる。

リツコはリツコでこういう時のために作られた珍妙なフォークで戦い(?)に挑む。MAGIによって計算され、作られた最もばかげた発明品である。後ろにはマヤに泣いて懇願されたお持ち帰り用パックがひそんでいる。

不気味に笑う四人。そして火蓋は切られた。

「お、コロッケかいな、うまそうやな・・・なぁあああ!?」

無邪気に自分の好物に箸を伸ばしかけたトウジに魔の手が走る。

シュッ

音速の勢いでレイの鋭い箸が五つ有ったコロッケの内の二つを突き刺す。

風圧で飛ばされるトウジ。

「ま・だ・な・ん・も・食・っ・て・な・い・の・にー!!!」

鈴原トウジ:リタイア。

レイの箸が交差した瞬間、ミサトのおたまとアスカのスプーンが残りの三つに向かう。

ガチャン

「おお!クロスカウンター!」

シンジが叫ぶ。しゃもじをマイクのように持って、だて眼鏡をかける。

ガン!ドガン!

互いの武器(??)が交差し、封じられる。

その一瞬の隙を見逃さないリツコ。余裕で二つをフォークでさらう。

「ホッホッホッ!」

高々と笑うリツコ。

「くそぉー!」

唸るアスカ。彼女はシンジの作るカレーコロッケの大ファンだった。

残るコロッケはあと一つ。アスカとミサトの視線が飛び交い、熱い火花が散る。

「もう負けられないのよ・・・行くわよ、アスカ!!」

「三十前に一花咲かせて見せるわ!」

おたまVSスプーン。かつて、こんなにくだらなく、かつ迫力のある戦いが存在しただろうか?

互いに睨み合う二人。なぜか木枯らしが吹いてくる。

「カァァァァァァァ!!」

「ダァァァァァァァ!!」

シンジはただただその戦いを見守った。

「あれ、コロッケみんな食べないの?じゃあ私が。」

ゆっくりと普通のスピードで箸を伸ばし、コロッケを口に入れるヒカリ。

「あっ・・・」

「あり・・・」

呆然とその様子を見つめるアスカとミサト。

ごっくん。

「あれ、どうしたんですか?」

無邪気にヒカリが尋ねる。

「ひ、ひぃかぁりぃちゅあん!あぁなぁたぁ、一体全体何をやったと思ってるのかなぁ!!?」

「洞木さん。どうやら痛い目見ないと分からないようね・・・」

ごごごごごと異様な妖気が辺りを取り囲む。レイは弁当をちゃっかり持って、そして外のみんなも屋上の端まで移動する。(後ずさるとも言う)

「ヒ、ヒィィィィィ!!ごめんなさぁーい!」

涙ぐむヒカリ。しかし、そんなことではアスカとミサトの怒りは収まらなかった。

「ごめんで済んだら警察はいらないのよぉ!」

「食い物の恨みは万死に値する。それを身を持って知りなさい!!」

ちゅどーん

七色の爆発が起こった。

「キャアアアアアア!!!」

吹っ飛ばされるヒカリ。さようなら、君の勇士は忘れない。

洞木ヒカリ:試合放棄。

「ふっ、散ったわね。」

「ざまあみなさい!大人をなめるんじゃないわよ!!」

それぞれ腰に手を当てて笑うアスカとミサト。奇妙な連帯感が生まれる。

アスカはともかく、ミサト、教師のはずなのにいいのか?

「いいの!許されるの!」

そうですか・・・それはどうも。

その向こうでは、漁夫の利を得たレイとリツコが第二のポイント、からあげに箸を伸ばしかけていた。






[CONTINUED TO SIDE C]





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050298


こんにちは、CARLOSです。

「ハイブリッドな子供達」SIDE A&SIDE B、いかがでしたでしょうか?


今回は、思いっきりギャグに走ってみました。AとBの差が激しすぎますね。(笑)第一章だけ読んだ人はシリアス物だと思ったことでしょう。



もう、16000ヒットかぁ。嬉しいなぁ。本当に、うっれしっいどぇーす!!(何語?)沢山の方からの催促メール、ありがとうございました。とっても嬉しいです。



この作品、個人的には気に入ってます。飛んでるし。読んでて、少しでも「ばかばかしいけど面白い」と思って下さったら幸いです。是非是非知らせて下さい。



「堕天使」第八章も着々と進んでおります。ただいま九枚目!でもちょっと詰まってます。(笑)



ではまた、感想メール待ってまぁーす。


PS:レイアウトについての感想、是非聞きたいです。よろしくお願いします。

なお、更新は感想メール五通で・・・

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