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『葬儀屋女将細腕繁盛記』

○月×日
バイト先のクリーニング屋にキチガイのおっさんが来た。すでに店の外からどなり声を上げ、 店の中に入ってきた時点で彼の中でのキチガイアクセルはエンジン全開バリバリ フルスロットルだった。東京に出てきて、初めてのキチガイさんとの御対面で あったので心おどってしまった。入ってくるなりオッサンは「(頼んでた)クリニーング はできたのか?」とどなり出し、わけがわからずボー然としていたら、おやじは店内 にある全身鏡で御自慢の(本人の顔のようにダラシない)髪型を整えながら 「だいたいおまえらそんなツラでクリーニング何かできんのか?コノヤロー!」と 我々をののしって帰っていった。 

彼のなかでの「クリーニングできるツラ」というのはどんなツラなのかを色々想像してしまった。 ひょっとしたらオレの聞き間違いであのオッサンは「そんなツラでクンニリングスできんのか? コノヤロー!」といったかもしれない。どちらにしてもどんなツラだかわからんけど、、、。 これがこのキチガイのオッサンとのファーストコンタクトだった。 

○月×日
またキチガイのおっさんが店に来た。先日と同じく店に入ってくるなり「ズボンできてるか?」 とどなり出した。普通の客には引換証を提示してもらうところだが何せこのオッサンに関しては 別の意味でV.I.Pなので名前を聞いて名前で品物を探すことにした。 君島さんという名前らしく、適当に探していたが見当たらいので「このオッサンがウチの店に ズボンを出したっていう妄想をしているだけじゃねえのか」と思ってそれでも一応形だけ探している ふりをしていた。 その間も君島さんはある時は自分がゲストある時はホストになり、一人二役でトークショーを開いて マシンガントークを繰り広げていたのだがその内容が少しだけしか聞き取れなかったが面白かった。 「君島っていってもイチローじゃねえ。イチローは死んだんだよ。(けっこう前に死んだデザイナーの 君島イチローのこと)。ナガシマでもねーぞ。コノヤロー。早くズボンを出さねーか。成敗するぞ。 コノヤロー」結局我々は彼のズボンを見つけることができず、君島さんは(いつも怒っているが) 怒って帰ってしまった。たった2回だけ、それもお客と店員という形でしか会っていないけれども 君島さんのオレの心の中を占める割合が増えていることに気付いた。これが恋ってやつかしら? 愛しいあの方の姓がわかっただけでも今日は幸せなひでした。うふ(^_^) 

○月×日
君島さんが本当にズボンをウチの店に出しているか気になったオレは午前中のバイトをしているIさんに その疑問をぶつけてみた。するとやはり君島さんはズボンを出すことは出しているらしいが君島という 名前ではなく、ジェーマーという名前で出しているということがわかった。どうりでズボンが 見つからないわけだ。なぜ「ジェーマー」かを考えてみるとすぐにナゾを解けた。
「キミジマ」→「キミジェマ」→「キミジェーマー」→「ジェーマー」という三段論法ならぬ四段論法 である。
他のクソみたいにつまらない普通の客共は、クリーニングを出すときに本名を使うというのに、 そんな時でも遊び心を忘れずあだ名をつかうお茶目なジェニー様。いわばかまやつひろしがムッシュの 名義でホテルを予約したり、ビートたけしが「殿」名義で郵便貯金の口座を作るようなものである。 (ちがうか)
そんなこんなで愛しいあの人のあだ名までわかってしまったショッキングでスパンキングな 一日でした。 

そんなこんなで愛しいあの人のあだ名までわかってしまったショッキングでスパンキングな一日でした。

○月×日
いとしのジェー様がしばらくあらわれないのでおちこんでいると¥連の上品そうなマダムがしゃなりしゃなりとフランス気取りみえみえのウォーキングで店に入ってきた。
マダムが入ってきた瞬間、突然赤ん坊がミルクをはいたときのようなすごいにおいが店中に充満した。あまりの匂いに気をとられて気づかなったが、マダムが帰っていったあとにマダムのだしたベストスーツを見ると、スカートの中にウンコがべっとりびっしり、「これでもか!」というぐらいしみになってついていた。
スカートだけならまだしも、ベストにまで脱ぷん直後のものかとおもわれるクソがべっちょり、ねとねと、「スカートだけじゃもの足りねえのか、この変態!」といわんばかりにくっついていやがった。
ベストスーツは会社のものと思われるが、あのマダムは会社で一体何をやっているのだろうか?会社の同僚の赤ん坊のお守りをしていてその赤ん坊がもらしたクソを、好奇心と持ち前の変態性を活かして食らったところ、ウンコなのかゲロなのかどっちにカテゴライズしていいのかわかりかねるものをはいてパニックったままウチのコリーニング屋にかけこんだのか?それともウンコ投げ合戦か?しかも職場対抗の運動会のプログラムん一つとして。あのすまし顔は、「あんた達若造なんかとちがってあたしはウンコだってオカズとして食べれちゃうのよ。ウンコさえあればどんぶりで御飯軽く5,6杯食えちゃうんだからあんた達にそんなことができて?」っていうオレ達に対するあの種の優越感をたたえてる顔ってことかい?ちくしょー 上品そうな顔して年相応のいいもんしっかり食ってんじゃねーか?そんなこんなで身分の差、年齢の差を痛感させられた一日だった。

○月×日
バイトのかえりにいつもと違う道を通って帰ったらすばらしいものに出会った。二かいだての家の一階のシャッターをしめた部分全体にすばらしいキチガイ文をびっしりとかいた家をみつけたのである。家の
主は二階のでんきが点いていて窓もあいている所から察するに、二階部分に住んでいるらしい。彼が言うことには彼は誰かにいつでも見張られ、尾けられているらしく、その尾行者は暴力団風のかっこうに身を包み、時には女の人までつかって見張らせているらしい。そのような克発文めいたものもあれば、教育における大人(親、教師)と子供の現実的な関係についてや、噂についての自分なりの研究、戦争についての自分の思想、人の心を6つぐらいに分けて、その到達度(何の到達度かはさっぱりわからんが)を、+2,+1,0,-1,-2,という数字と◎,×,△,○などにわける心理ゲームだか何だかわからないものまで、多岐にわたるものであり、古たちイチロー風に言えば正に「言論の幕の内弁当」といった感じで、さいごまで全部読んでも結局何がいいたかったのかわからないという有難いものである。その代表的なものを一部原文のまま紹介。(原文)尚、この人は、意見、質問を手紙で随時募集しているので、彼と一晩中語りあおうと思っている勇気ある論客は手紙を送ってみるといいでしょう。電波から始まる恋もありKA.MO.NE!


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