この記事はSan Jose Mercury Newsというローカル新聞に掲載されてた記事からです。 夫Patrik,妻Nancyの間の長男Connor君が2才で自閉症と判断されてからの自閉症と戦うハイテク 夫婦の姿が紹介されています。また彼らをサポートするCANという団体についても紹介されています。
Connor君のホームページ は妻Nancyが長男Connorを広く知ってもらうために作ったサイト。彼女はこのために ウエッブデザインの勉強を始めた。また自閉症を理解するために CAN という団体に出会い、現在はCANのウエッブマスターを引き受けている。 このCANは米国ロスアンジェルスに本拠地をおく自閉症を化学的に研究して治癒を 目指さす団体だ。
夫Patrik JonesはNetwork Appliance社のエンジニアだったが、長男の自閉症の診断後彼のために 6ヶ月の休暇を取り、世界でも最高の自閉症のデータベースを作ることを手がけた。このため 会社からは5000万円相当のコンピュータ機材の寄付を受け、科学者や医者に呼びかけNancyと共同で Autism Genetic Resource Exchange(AGRE) というサイトを立ち上げた。
このサイトには自閉症児を2人以上持つ150家族の自閉症、家族の経歴、血液サンプル、 抽出されたDNA情報などのデータがある。 この遺伝子データは無料で公開され、世界中の科学者、遺伝子学者たちがアクセスできるように なっている。利益追求に走りがちなバイオテクノロジ分野だが、この試みは斬新で世界でも類を見ない ものだ。現在Huntington病、Wilson病などは単一の遺伝子が原因であることが突き止められているが 今後自閉症のような遺伝子の複合的な組み合わせを研究するため膨大なデータベースを用意すること が必須だ。さらにこれらを分析する世界中の科学者たちの協力が必要であり、このサイトは今後重要な データを提供していくだろう。しかしこれだけの事を短期間で成し遂げるには夫婦の力だけでは 足りない。ここでCANが登場する。
CANは1995年にHollywoodの著名人、Protia Iversenによって設立された。 彼女の息子、Dovが自閉症と診断されたのがきっかけらしい。彼女とJonathan Shestack(また有名人) は著名な科学者たちに自閉症児の親として何ができるのかと問いたところ彼らの返事が遺伝子銀行 (Gene Bank)を作り、データベースを作ることだと言われた。1980年代の調査では一卵性双子で1人が 自閉症児なら90%の確立でもう1人も自閉症児だと言われており、遺伝子に何らかの関係が あることを示している。現在までの研究ではこれに関与している遺伝子の数は30にまで絞りこまれたが これらの複雑な組み合わせが引き起こしているといわれている。また公害などの環境も 引き金になっているという学者もおり、環境、遺伝子の複雑な係わりが自閉症の原因だと 思われている。CANではHollywoodの有名人に手伝ってもらい、数々の資金集めを行っている。CANが 支えているAGREの遺伝子銀行の理事にはNational Academy of Science(全米科学学会とでも訳す?) の学者5人が無給でAGREへのアドバイスを行っている。また全米の150家族の各種データもAGREの資金、 人材を投入して実際収集している。有名人がバックにつくと経済的に恵まれ非常に大胆な事ができる。 映画"Air Force One"ハリソンフォード主演の飛行機を舞台にした映画だがこの映画で2500万円のCANの資金が 集まったらしい。
CANは公の大学、政府主導の遅い研究にしびれをきらし、潤沢な資金をベースに独自の研究を行い、 広くデータを公開し、研究成果の共有を呼びかけている。この活動でどれだけの成果がでているのか はまだよくわからないが、著名人を利用した軍資金集めというのも役得なのでしょうか? 何となくすっきりしない気もするのです。