「床下のモコとしし丸」 ’00年9月24日
父親のモコです。
9月に入ったら急に涼しくなって、突然秋になってしまったようでした。
気持ちをざわめかせるほどにひんやりした風が吹き、赤トンボが造成地の草むらの上を飛んでいました。
「ああ、もう秋なんだな」としみじみしていたら、感傷的になっている私をからかうみたいに暑くなったりしました。
特に16日から17日にかけてひっきりなしに鳴っていた雷と大量の雨は、私にとっても生まれて初めての経験でした。
ところで、私の家では床の一部を張り替えてもらいました。
床下の通風が悪いので湿気がこもり、合板の床がへこんだりきしんだりするようになってしまったからです。
ところが、初めはこわごわと遠くから大工仕事をながめていたモコとしし丸が大工さんのスキをねらって床下に飛び込んでしまいました。
床下の通風口には鉄棒がはめ込んであるので床下から外に出ることはできません。
ですから、猫たちが床下にいるのに気づかずに床板を張り終えてしまったら大変です。
エドガー・アラン・ポーの「黒猫」のような怪談になってしまいます。
名前を呼んだら、モコはクモの巣をぺっとりと顔につけたまま出て来ました。
けれども、しし丸はちっとも出て来ません。
スライスチーズを1枚持って来て、ビニールの包装をパリパリと音を立ててはがしたり、チーズの匂いが広がるように細かくちぎったりしました。
すると、しし丸は誘惑に負けてしぶしぶと出て来ました。
それで、私はすばやくしし丸のシッポをつかんだのでした。