「かわいいイビキと」 ’01年2月10日
朝、眠りからさめかけた私の耳に笑いさざめく声が聞こえて来ました。
小学生くらいの子供達が2、3人で楽しそうにおしゃべりしているふうなのです。
でも、それはとても不思議なことでした。
私の家にはそんな小さな子供はいなかったからです。
夢の中のことかとも思いましたが、この音声は画像をともなっていませんでした。
けれども、眠りながらも私が気にしていたのは、もう起きなければいけない時間なのかどうかということでした。
もう少し眠っていたかったからです。
寝返りをうとうとすると、おしゃべりがやみました。
「あらっ?」と疑問符が私の頭の中に浮かびました。
「もしや?」と思い、私はふとんの上に手を伸ばしました。
やわらかくてあたたかいものがふとんの上に乗っていました。
トラミとは手ざわりが違っていました。
寝ぼけ頭がしだいにめざめて来ると、おしゃべり声は「スーピースーピー、キュルキュルキュー」というふうに聞こえるようになって来ました。
それはモコのイビキだったのです。
めずらしいことに、モコが私のふとんの上で寝ていたのです。
あらためて見回すと、トラミは私の足元のほうで寝ていました。
突然、イビキの音がぴたっと止まって、モコがむっくりと体を起こしました。
久美子が階段を降りる音がトントンと聞こえて来ました。
すぐさまモコは飛び起きて駆け出しました。
朝ご飯に遅れたら大変というふうでした。
寝ぼけながら起きていった私を見るなり妻は、「かわいいイビキとちっともかわいくないイビキが聞こえていたわよ」と笑いながら言いました。
「もちろん、かわいいイビキの主はモコちゃんだよ」と、久美子は私をからかうように言いました。
「ふん、どうせ」と言って、私は顔を洗いに行きました。
廊下に出ると、背中を丸めたモコが夢中で朝ご飯を食べていました。