「メリーの散歩」 ’01年2月25日
モコが朝からそわそわしていて落ちつかないのです。
ここ数日というもの急に暖かくなって春めいて来ましたから、きっとそのせいなのだと思います。
私がトイレに行こうとして立ち上がると、モコはすばやく起き上がり玄関に向かってとことこと歩いていくのです。
そして、靴やサンダルが脱ぎ捨ててある間に腰を下ろすと何かをじっと待っているのです。
私がトイレから出て来たときにもモコはそこにいて、大きな丸い目に期待を込めて私を見るのです。
でも、私にもしなければならない用事があります。
連れて行ってもらえそうもないことがわかるとモコはすごすごと居間に戻って来て、イスの上に横になるとそのまま眠ってしまいました。
けれども、モコがあまりにもしょげているのを見かねて、久美子が少しの時間だけ散歩に連れて行ってやることにしました。
久美子も出かける用事がありましたし、2匹も連れて行くことはできないのでメリーが居間で寝ているすきにそっと出て行くことにしました。
2階から見ていると、モコはきょろきょろしながら通りを渡って大きな駐車場に行き、コロンと横になりました。
そして、気持ち良さそうにゴロンゴロンと何度も転がっていました。
それを見つけたトラミが急いでモモの木を降りて走って行きました。
引き綱でつながれているモコをからかうようにトラミはモコのまわりを跳び回っています。
その時、「バンバン!」と居間のドアを叩く音が聞こえて来ました。
「えっ?」といぶかしみながらドアを開けると、叩いていたのはメリーでした。
メリーはすばやくあたりを見まわしてから、トントンと2階に上がって行きました。
まるで何かに気づいていて、モコの姿をさがしているみたいでした。
モコが散歩に行っているのがわかっているみたいに、メリーは玄関の内側でモコが帰って来るのを待ち構えていました。
モコを連れて帰って来た久美子に向かってメリーは、「わたしも連れて行って」というふうに甘えました。
でも、久美子はもう出かけなければいけない時間でした。
連れて行ってもらえないことがわかるとメリーは、そばで満ち足りた顔をしているモコにやつあたりをして前足でバシン!と叩きました。
いきなり叩かれたモコがびっくりしている間に、メリーはさっさと私の足元に来てしまいました。
そして、メリーは大きな目を開けて私を見上げると最上の甘え声で、「ミャーン!」と鳴いたのです。
それで私もとうとう降参して赤い引き綱を持って来ました。
ウキウキと外に出たメリーはその辺にあるものの匂いを片っぱしから何でもかんでも嗅いでいました。
ドアから外には出たのですが、門扉までなかなか行き着かないのです。
もちろん、私の家の門扉がドアからずっと遠くにあるわけではなくて、石段が3段あるだけなのですが。
そのうちにメリーは草をむしゃむしゃと食べ始めてしまいました。
それは鉢植えの「猫の草」で、メリーたちがあらかた食べつくしてしまったので外に出しておいたものでした。
しばらく外に置いてあったので草は5センチくらい伸びていました。
結局、メリーは「猫の草」が食べたかっただけのようでした。
「猫の草」の鉢を持って私はメリーと一緒に家に入りました。
家の中に入った後もメリーは「猫の草」を食べ続けていました。
毛玉がたまっているのかも知れません。