「ネゴシだね」 ’01年5月2日
「ああ、それはネゴシだね」と、成田整形外科の先生は言った。
「たしか、以前にもおなじようなのをやったことがあるでしょ」と言って、先生はカルテをパラパラとめくった。
私の頭にはまず「ネゴシエーション」という単語が浮かんだ。
次に漢字を当てはめて、「寝腰」という組み合わせができた。
「これだね。平成4年だね」と言って、先生は開いたページを指先で叩いた。
ふだん西暦で考えるくせのある私は平成4年と言われても何も思い浮かばなかった。
でも、おそらくそれは私が両手にケガをした年のことなのだと思いあたった。
あの時は両手が使えなかったので、立つ時にはピョンと跳び上がるような無理な立ち方をしていた。
それで腰の筋肉(大腰筋)を痛めたのだ。
「あお向けに寝ていると腰の下にこぶしが一つ入るくらいのすきまができるんだが、この状態はこの大腰筋がずっと緊張している状態なんだね。
ふつうは寝返りをしたりして向きを変えてこの緊張をやわらげようとするんだが、何かの原因で不自然な寝方が続くとそれが痛みのもとになることがあるんだよ」
と言われて、私には思いあたることが確かにあった。
今朝、目をさますと私は腰のうしろ全体に張り詰めたようなにぶい痛みを感じたのです。
重い荷物を持った時などに、それと気づかないうちに腰を痛めたのかも知れないと私は考えました。
背骨の軟骨部分が圧迫されて軽いヘルニア状態になっているのではないかと思い、いつになく私は不安に襲われました。
それでさっそく成田整形外科に行ったのです。
そして、確かに私は昨夜はきわめて不自然な寝方をしていたのです。
トリミングしたモコは毛刈りをしたばかりの羊のように丸裸で寒そうでした。
あまりにも寒かったのでしょう。
モコは私のふとんに来て横になったのです。
それで私はモコにふとんをかけてやりました。
いつもならそんなことは絶対に許さないモコがおとなしくふとんに入って寝ていました。
「スーピー、スーピー」というモコの寝息が私の耳元で響いていました。
夜半に私は何度もうっすらと目をさましました。
そして、となりでモコがぐっすりと眠っていることをたしかめてはまた眠りに落ちたのでした。
寝返りをしてモコを起こしてしまったりすることを恐れていたので、私はずっとおなじ姿勢で寝ていたのでした。