「寒い秋の夜に」         ’01年9月20日


モコ

 秋を飛び越して冬になってしまったみたいに急に寒くなりました。
 まだ夏の気分が抜けていない私は家の中ではTシャツと短パンで過ごしていたのですが、さすがに今夜はむき出しの足に冷たさを感じました。
 いつもでしたらテーブルの上に長く横たわって、私の読書の邪魔ばかりをしているしし丸も今夜はいません。
 モコやユキと妻が取り合いをしている藤イスも今夜はカラッポのままです。
 テレビではブッシュ大統領が盛大な拍手に包まれながら演説をしています。
 まだ10時を過ぎたばかりなのに、この部屋には私のほかには誰もいないのです。
 トラミは外に遊びに行ったきり、ちっとも帰って来ません。
 近所の家の庭で騒いでいるらしい猫の叫び声がガラス戸を通してかすかに聞こえて来ました。
 ミケがケンカをしているのかも知れません。
 部屋の明かりを消して2階に上がって行くと、暗闇の中からかすかな寝息が聞こえて来ました。
 闇の中に眼をこらして見ていると、私のふとんの上に丸くなっている白いものがいくつか見えて来ました。
 枕元で眠っているのはトラミでした。
 中ほどに横になっているのがしし丸、ふとんのわきの畳の上にいるのはユキでした。
 そして、ふとんの向こう側のすみで丸くなっているのが寝息の主のモコでした。
 モコの寝息はひときわ大きく、闇の中に響いていました。
 私はしし丸やモコを起こさないように気をつけながらそっと横になりました。
 ところが、私に気づいたトラミが私の耳もとでグルグルとのどを鳴らし始めてしまいました。
 私は手を伸ばして、トラミの気持ちが落ちつくように背中をなでました。
 けれども、トラミはうれしそうに体をくねらせながらグルグルとのどを鳴らし続けました。
 私はトラミをなでているうちに深い眠りに落ちてしまいました。

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