「メリーの引っ越し騒動」 ’98年8月15日
出産してからの一昼夜というもの、メリーには眠る時間などまったくありませんでした。
かなり興奮しているようでしたし、赤ちゃんの世話がひどく忙しかったのです。
しきりにもぞもぞと動きまわる赤ちゃん達に乳房の位置を教えてやったり、なめてやったりとせっせと働いていたのです。
それはそれは一心不乱に世話をしていたものだからメリーも疲れるのでしょう。急に動作を停止すると、小さな舌を出したまま大きく口を開けて「ハッハッハッハッハ」と異常に荒い息づかいをするのです。
まるで何かの発作が起こりかけていて、呼吸困難に陥りかけているような具合なのです。
ひとしきりそんな呼吸をした後、メリーは何かにはじかれたように再び活発に動き出し、赤ちゃんの面倒をみるのでした。
その様子があまりにも苦しそうだったので、メリーを病院に連れて言って佐藤先生に診てもらうことにしました。その結果は何の異常も認められず、母乳の出も良いとのことでした。
それは良かったのですが、病院に連れて行ったりしてメリーと赤ちゃんにかまいすぎたせいか、メリーは赤ちゃんをくわえて段ボール箱の産室から引っ越そうとしたのです。
引っ越し先は、タンスと壁の間にあるメリーがやっと通れるくらいの狭いすき間でした。
見かねた妻が古い猫ちぐらを出して来て、中にタオルを敷きつめてから娘の久美子の部屋に置いてやりました。
そこにメリーと赤ちゃんを連れて行き、「ここが新しい家だよ」と教えたのです。
それでもメリーはなおも引っ越しを2回こころみましたが、そのたびに妻に連れ戻されて、やっと猫ちぐらで赤ちゃんを育てる気になったようでした。