「秋ですね。ユキ」         ’99年10月12日


秋ですね。ユキ

 昨夜は折れそうなほどに細い月が空に浮かんでいました。
 10月も半ばだというのに真夏日のように暑い日でしたが、夜になると涼しい風が吹いていました。
 今夜の月はだいぶ太って来て、ちょっとやそっとでは折れそうもありません。
 今夜もユキは木のイスに腹這いになってベランダの上に浮かんでいる三日月を眺めていました。
 ベランダに出ればもっと涼しいのですが、網戸越しにでもさわやかな空気は部屋の中に入って来ます。
 しし丸はドドドッと階段を駆け降りたりして騒がしいのですが、ユキはひっそりともの静かに外を眺めています。

 時々、犬の遠吠えが聞こえて来ます。
 犬を連れて夜の散歩をしている人が通りを歩いて行く足音が聞こえて来ます。
 塾帰りの子供たちが笑い騒ぎながら歩いて行きます。
 今、遠くで電車が線路の上を走る音が風に乗って聞こえました。
 ユキはちょっと鼻をひくひくさせてから、フワアッとあくびをしました。
 秋ですね。      

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