「そしてトラは」         ’99年12月17日


 15日の夕方、家の前の豆腐屋さんに木綿豆腐を買いに行きましたら、坂の上の方からとぼとぼと歩いて来る猫がいました。
 私の足元までやって来ると、「ニャアッ!ニャアッ!」ともの悲しそうに鳴きました。
 トラでした。
 どこに行っていたのか、また帰って来たのです。
 猫の缶詰を開けて皿に出してやったら、すごい勢いでばくばくと食べてしまいました。
 食べ終わっても皿をぺろぺろとなめているので、仕方無くもう一つ缶詰を開けてやりました。
 それでも、食べる勢いはおとろえませんでした。
 食べられる時に食べられるだけ食べておこうというふうでした。
 迷子になってから、食べる物も無くてかなりつらい思いをしたようでした。
 後で近所の人から聞いた話では、今朝もトラは白黒ぶち猫に追われて逃げ迷っていたようでした。
 その夜、トラは久美子の部屋で寝ました。
 よほどうれしかったのか、トラはしきりに久美子に甘えていました。
 朝になると、トラは家の外に出されました。
 外に出しておけばトラの家に帰る道筋を見つけに行くかと思っていたのですが、トラにはそんな気はまったく無いふうで家の近くから動こうとはしませんでした。
 それで、昨夜もトラは久美子の部屋で寝ることになりました。
 私はトラの写真を撮って迷子ネコの貼紙を作りました。
 とりあえず、私の家のブロック塀に一枚貼りました。
 それから、美容院さんにも頼んで一枚貼ってもらいました。
 トラの家はそれほど遠くないと思いますので、貼紙を見たら何か反応があるかも知れません。
 トラは今夜も久美子の部屋にいます。
 モコ達とは違って、久美子の布団に潜り込んで来て寝るそうです。
 トラも必死にこの家においてもらおうとしているようでした。

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