SF御三家
アーサー・C・クラーク
Arthur C. Clarke

(著者紹介)
 1917年、イギリス、サマーセット州に生まれる。アイザック・アシモフ、ロバート・A・ハインラインと並ぶSF御三家の一人。著書多数。故スタンリー・キューブリックによって映画化された「2001年宇宙の旅」はあまりにも有名。現在はスリランカにて隠遁生活を送る。

「宇宙島へ行く少年」 1954 

「2001年宇宙の旅」 1968

「幼年期の終り」 1953

「イルカの島」 1963

「銀河帝国の崩壊」 1953

「都市と星」 1956

「宇宙のランデヴー」 1973

(短編集)

「明日にとどく」 1956

 


「宇宙島へ行く少年」 ISLAND IN THE SKY 1954
 山高 昭訳 カバー・鶴田一郎 ハヤカワSF682 ISBN4-15-010682-7

 あの日のときめきをもう一度

(あらすじ:本書背表紙より)
 「それでは優勝者をご紹介しましょう、ロイ・マルカムです!」このアナウンスを聞いたぼくは天にものぼる心地だった。なぜって、それはぼくの名前だからだ! ワールド航空主宰のクイズ番組で、ついに優勝を勝ち取ったのだ。しかもその商品は、夢にまで見た宇宙ステーション行きの往復キップだったのだから……。大宇宙にあこがれる少年の夢と冒険を、巨匠アーサー・C・クラークが生き生きと描き出した傑作宇宙SF!

(書評:1998-04-12読了)
 SFの巨匠アーサー・C・クラークの少年少女向けSF小説。このワクワク感がたまらない。読めば読むほど夢あふれる明るい未来が広がる。さて、この小説が発表されてから半世紀程がたった。科学は我々になにをもたらせたのだろう? 現実はそうお気楽ではないのは確かだ。しかし、科学や未来にたいする純粋なときめきをこの本はもう一度思い出させてくれる。かなりお勧め。

「2001年宇宙の旅」 2001 : A SPACE ODYSSEY 1968
  伊藤典夫訳 カバー・鶴田一郎 ハヤカワSF243
 
 とりあえずスターチャイルド
(あらすじ:本書背表紙より)
 原子的な道具さえ使うすべを知らず、時代遅れになった本能の命ずるままに滅びの道をたどるヒトザルたち。しかし、彼らは謎の石版によって進化の階梯へ一歩を踏み出した。そして三百万年の後、人類は月面に同じ石版を発見したのだった。この石版は人類にとって何を意味するのか? また、宇宙船ディスカバリー号のコンピューターハル9000は、なぜ人類に反乱を起こしたのか? ディスカバリー号の唯一の生存者ボーマンはそこに行き、何に出会い、何者に変貌したのか? なぜ……? 巨匠クラークが、該博な科学知識を総動員してひとつの思弁世界を構築する現代SFの金字塔!

(書評:1998-04-18読了)
 キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』を始めて見たとき私はなにがなんだかわからなかった。そういうこともあって、きっと難しい内容だろうと少々ビビリながら読み始める。実際は全然単純明快なストーリー。あの難解な映画に関してクラークによる一つの回答を提示してくれる。とはいっても、やっぱりラストでは映画と同様にすべてを完全に超越して(開き直って?)、読者とともに星の彼方にぶっ飛んでいってしまう。やっぱり行きつく先はスターチャイルドだったんですね。


「幼年期の終り」 CHILDHOOD'S END 1953
  福島正実訳 カバー・中西信行 ハヤカワSF341
 
 だからどうした
(あらすじ:本書背表紙より)
 人類が宇宙への第一歩を踏み出した日、巨大な宇宙船群が静かに地球の空を覆った。やがて人々の頭の中には一つの言葉がこだまする――人類はもやは孤独ではない。そして、50年の歳月が流れた。その間、人類よりはるかに高度の知能とテクノロジーを有する宇宙人たちは、人類にその姿を現すことなく、地球管理を行った。神のごとき宇宙人に見守られる平和な世界。だが、それは一種の飼育場を思わせた。宇宙人の真の目的は? そして人類の未来は?――巨匠が異星人とのファースト・コンタクトによって新たな道を歩み始める人類の姿を、詩情豊かに謳いあげた傑作。

(書評:1998-05-12読了)
 「我々はどこから来て、そしてどこへ行くのか?」という哲学的な問いにアプローチをかける不滅のオールタイム・ベスト。嫌いといいきれるほど悪いストーリーとは思わないが私にとってはただひたすら冗長でかったるかった。同じ内容で半分くらいの中短編だったらもっといい印象を持ったかもしれない。これを読んで泣いちゃう人がかなりいると聞いたことがあるけどいったいどこで泣くのだろう? いやあ不感症なもんでしてどうもすいません。


「イルカの島」 DOLPHIN ISLAND 1963
  小野田和子訳 Cover Design 吉永和哉 Layout 斎藤 恵+WONDER WORKZ.
  創元SF611-03 ク-1-3 ISBN4-488-61103-6
 
 少年少女向け有害図書
(あらすじ:本書1pより)
 密航したホヴァーシップが沈み、ただひとり海上にとり残された家出少年。彼を救ったのは、なんと一群のイルカたちだった。そして彼らに運ばれて行った先の孤島では、科学者たちがイルカを研究するために暮らしており、しかも驚くべきことにこのイルカたちは、人間と意思を通わせることができたのだ! 珊瑚礁に囲まれた<イルカ島>で暮らすことになった少年が目にする大自然の景観、そしてイルカたちの間で語り伝えられる神秘の歴史……。大海原の脅威と美しさをあますところなく伝える海洋SFの名作!

(書評:1998-07-06読了)
 「宇宙島に行く少年」と並ぶクラークの代表的ジュビナイルSF。イルカ好きなのはわかるけれど、「えっ、こんなことホントにやっちゃっていいの?」、というようなことを平気でやってしまうなかなかキレたストーリー。個人的にちょっと問題ありと思う。

 ところで、ジュビナイルって言葉をよく耳にするけど、なんじゃらほいっと思って辞書を調べたら、つづりは「juvenile」で意味は「児童向き図書」ということだった。「ジュビナイル」と横文字いったって日本の児童はほとんど理解できないと思いますが……


「銀河帝国の崩壊」 AGAINST THE FALL OF NIGHT 1953
  井上 勇訳 カバー・金子三蔵 創元SF611-1
 
 『都市と星』の元ネタ
(あらすじ:本書1pより)
 数億年の未来、銀河帝国はほろび、かつて宇宙に雄飛した人類は、砂漠と化した地球の一角にかろうじてかじりついて、《侵略者》をおそれながら暮らしていた。そのとき禁断の好奇心にとりつかれたアルビン少年は、とざされた町を脱出し、他の地生態を求めて宇宙へ旅立つことになった。そして《七つの太陽》で出会った純粋知性体によって人類の歴史が明らかにされ、地球はふたたびその生命をとりもどす。壮大な人類と宇宙の大叙事詩。

(書評:1998-09-13読了)
 傑作の呼び声高い作品。一応児童向け図書だけどなんだか非常に読みにくい。また、なぜだかはわからないが読んだ後全然感想がわいてこなかった。よっぽど読むのが苦痛だったといことか? 「幼年期の終わり」で感動してしまった人はぜひお読みください。それとはちょっと切り口が違う「感動的」な内容。私にとってはどうでもいいようなストーリー。


「都市と星」 THE CITY AND THE STARS 1956
  山高 昭訳 カバー・加藤直之 ハヤカワSF271 ISBN4-15-010271-6
 
 『銀河帝国の崩壊』の改稿
(あらすじ:本書背表紙より)
 銀河帝国は崩壊し、地球には唯一の都市ダイアスパーが残された。そこは快適に防備された小宇宙。十億年の歳月の間に、都市の“記憶バンク”は人類の組成パターンを使って原初の人間を再生したが、ただ一人青年アルヴィンだけは、今までにパターン化されたどの人間とも違っていた。都市の外へ出ることを異常に恐れる人々の中で、彼だけは未知の世界への願望を持っていたのだ。壁に囲まれた、心地よいダイアスパーに安住することなく、アルヴィンはある日、かつての人類のように、空があり宇宙船が征く世界を求めて旅だった! 巨匠が華麗な想像力で書いた大宇宙叙事詩。

(書評:1998-10-01読了)
 著者自身による「銀河帝国の崩壊」の改稿。クラークの最高傑作の一つともいわれている。「銀河帝国の崩壊」とほぼ同じ内容なので、よっぽどのクラーク・ファンでもない限り2冊とも読む必要はない。私はファンでもないのにもかかわらず思わず古本屋で買ってしまったので読まねばならなくなってしまった。この手のストーリーが好きな人にはたまらないんでしょうが、私にとってはどうってことない内容。たいして面白くない。


「宇宙のランデヴー」 RANDEVOUS WITH RAMA 1973
 南山 宏訳 カバー・鶴田一郎 ハヤカワSF629 ISBN4-15-010629-0
 
 センス・オブ・ワンダー
(あらすじ:本書背表紙より)
 2130年、太陽系に突如表れた謎の物体は、直径20キロ、自転周期4分という巨大な金属筒であることが判明した。人類は、長い間期待し、同時に恐れていた宇宙からの最初の訪問者をついに迎えることになったのだ! “ラーマ”と命名されたこの人工物体の調査のために派遣されたエンデヴァー号は、苦心のすえラーマとのランデヴーに成功し、その内部へと侵入していくが……ヒューゴー賞、ネビュラ賞両賞に輝く傑作長編。

(書評:2000-04-06読了)
 話の筋はこれといって凝っているわけでもないがセンス・オブ・ワンダーの固まりのような作品。科学考証もそれなりにきっちりしているので多くの人間にこの作品が支持されたというは当然のような気がする。こういう作品を書かせるとクラークはやっぱりうまいなあと実感。だからクラークは人気があるのだな。読んだら読んだでそれなりにワクワクさせてくれる良心的な一冊。


短編集

「明日にとどく」 REACH FOR TOMORROW 1956
  山高 昭・他訳 カバー・鶴田一郎 ハヤカワSF660 ISBA4-15-010660-6
 
 代表的短編『太陽系最後の日』収録
(あらすじ:本書背表紙より)
 太陽はあと七時間でノヴァ化し、その星系の壊滅は避けられぬ運命だった。だが、一隻の銀河系巡視宇宙船  が、その第三惑星をめざし全速力で航行していた。わずか数日前、そこに知的生命体が種族が生息していることが判明したのだ! 人類を救出するべく地球にやってきた異性人たちの活躍をスリリングに描きだす、巨匠クラークの代表作「太陽系最後の日」、五百万年前に滅亡した古代文明の謎を解明しようと、木星の衛星に遠征した調査隊の驚くべき発見とは……「木星第五惑星」、地球人と異星人のファースト・コンタクトをユーモラスに描く「親善使節」など、傑作12篇を収録。

(書評:1998-07-25読了)
 クラークの最高傑作の呼び声高い短編「太陽系最後の日」が収録されたクラークの短編集。どうでもいいけど、クラークにはいったいどれだけ「最高傑作」と呼ばれるものがあるのだろうか? 私は世の中を斜に構えて生きているヒネクレ者なので「太陽系最後の日」のあまりにも楽観的な内容に吐き気をもよおした。この短編が書かれた当時は未来に対して明るい夢が満ち溢れていたのですなあ、とでもいっておこう。その他の短編も全然面白くなかった。クラークを読むならやっぱり長編だ。


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