ワイドスクリーン・バロック
A・E・ヴァン・ヴォクト
A. E. Van Vogt
(著者紹介)
オランダ系移民の3世として1912年カナダのウィニペグにて生まれる。2000年逝去。ワイドスクリーン・バロックの代表的作家。著書多数。P・K・ディックに最も影響を与えたSF作家でもある。
「スラン」 1940 | 「宇宙船ビーグル号の冒険」 1950 |
「スラン」 SLAN 1940
浅倉久志訳 カバー・加藤直之 ハヤカワSF234マイ・ベストの一冊
(あらすじ―本書背表紙より)
スランだ! 殺せ! 一瞬にして街路は阿鼻叫喚の坩堝と化した。敵意に満ちた人々の執拗な追跡のなかを、まだあどけない顔立ちの少年は逃げる。黒髪にまじる一房の金色の巻き毛を風になびかせながら。追いかけてくるのは死、待ちうけるのは恐怖! だがその幼い少年こそ、秘密の鍵――並外れた知能と能力を持つがゆえに虐げられ、迫害される新人類スランの未来を開く鍵を握るただ一人の人間だった! 壮大なスケールと錯綜するプロット、迫力ある筆致によって濃密なSFムードを醸しだす達人――ヴァン・ヴォクトが見事に描きだしたミュータント・テーマ不滅の名作!
(書評:1998-05-31読了)
やたらと分厚いホーガンの小説とアメリカ的過ぎてイライラするハインラインの小説をたてつづけに読んでしまって相当疲れきっていた時、なにげなくこの薄い本を手に取って読んでみたら大傑作だった。確かに甘っちょろいところもあるし全編通してご都合主義のおめでたい内容。しかし、読み進めていくうちに不覚にもウットリとしてしまった。ハラハラドキドキのナイスなストーリー。マイ・ベストの一冊。
「宇宙船ビーグル号の冒険」 THE VOYAGE OF THE SPACE BEAGLE 1950
沼沢洽治訳 カバー装画・石垣栄蔵 創元SF724
尻切れトンボ
(あらすじ―本書1pより)
超高速の大型宇宙船ビーグル号は科学者を満載して無限の宇宙の探索に出発した。しかし、その行く手には人類の想像を絶するような恐るべき怪物たちが宇宙船を乗っとらんとして待ち構えていた。銀河系の彼方の惑星にすむ一見、猫のような生物、宇宙空間のただ中に生息する鳥人、彼らはその身の毛もよだつような外見の下に、原子力を駆使して重装備をした宇宙船をも破壊するだけの超能力を秘めていた。人類の科学の枠と怪物たちの魔力のような超能力が、壮大な宇宙を背景に、手に汗にぎる死闘を展開する!(書評:1998-07-12読了)
これを読んでしまえば「スタートレック」も「エイリアン」も「タウ・ゼロ」もみんな「ビーグル号」の亜流であることがわかる。それほどすばらしい内容だけどラストが尻切れトンボ。「えっ、それで終わりなの?」と不満になってしまった。ところで、昔のエイリアンは極悪非道でなもので、この作品では人がバタバタとたくさん殺される。それを考えれば宇宙人にたいする我々のイメージは今では変わったものだ。一般的に、「スラン」よりも人気のある作品だと思うが私は断然「スラン」のほうが好き。