永遠のロマンチスト
エドモンド・ハミルトン
Edmond Hamilton

(著者紹介)
 スペース・オペラの代表的シリーズである、キャプテン・フューチャーシリーズの著者。1904年生まれ、77年没。私のお気に入りのSF作家の一人。

「虚空の遺産」 1960
「星間パトロール 銀河大戦」 1929

(キャプテン・フューチャー・シリーズ)
「透明惑星危機一髪!」 1941
「暗黒星大接近!」 1940
「太陽系七つの秘宝」 1941

(スターウルフ・シリーズ)
「さすらいのスターウルフ」 1967


「虚空の遺産」 THE HAUNTED STARS 1960
 安田 均訳 カバー・稲葉隆一 ハヤカワSF459
 
 マイ・ベストのベスト

(あらすじ―本書背表紙より)
 月のガッサンディ・クレーターに基地を建設中、米国は驚くべき発見をした――三万年前のものとおぼしき軍事基地の廃墟が発掘されたのだ! 発見された小板や録音装置はただちに地球に運ばれ、四人の言語学者からなる学術チームの手に委ねられた。地球の古代語との類似が鍵となり解読が成功したとき、予想だにしなかった事実が浮かびあがる。その廃墟こそ、想像を絶する強敵との戦いに滅びた人類の遠い祖先のものだったのだ。やがて、人々は解読された資料を用いて恒星宇宙船を建造、究極の故郷を目指して虚空へと飛び立つのだが……壮大なスケールで描かれた傑作宇宙SF!

(書評:1998-05-23読了)
 マイベストのベストといえるべき一冊。文句なしの至高の一品。この小説にめぐりあえたことを幸せに思う。古本屋でなにげなく50円で買ったけど、もっ、もう、君をはなさないぞ! なんだかホーガンの「星を継ぐもの」に似ているなあと最初思ったがそれとは全然違う非常に重苦しいストーリー。この本を読み終えた瞬間私の中でエドモンド・ハミルトンは「別格」になってしまった。SFファンなら絶対に読もう!(Psyc)

「星間パトロール 銀河大戦」 OUTSIDE THE UNIVERSE 1929
 深町真理子訳 カバー・斎藤和明 ハヤカワSF15
 
 古式ゆかしき荒唐無稽

(あらすじ―本書1pより)
 ここはわが銀河系宇宙の最外縁の星からさらに数千億マイルの外側。漆黒の闇の中、壮麗に輝く島宇宙のへりにそって飛行を続けていた星間パトロールの一隊は、突如、いずかたともしれぬ虚空の彼方より襲来した謎の宇宙船団の攻撃にあい、壊滅的打撃を受けた。敵の正体は何か? そしてその目的は? 地球人ダー・ナルと彼の部下達は唯一隻、銀河系への必死の逃亡を開始した。この瞬間から、おのが宇宙の生死を賭け、三つの銀河を巻き込んだ、想像を絶する大宇宙戦が展開される!

(書評:2000-10-30読了)
 1929年に発表された、荒唐無稽なというか、嘘八百なスペース・オペラ。たいして面白くないし、かなり古臭いことは否めない。しかし、その内容がどれだけデタラメであろうと、ハミルトンだから許すことにする(笑)。ネチネチした細かいつっこみはこの際しないということにして、ハミルトンによって次々と繰り出される驚天動地のハチャメチャ大バカアイデアに身も心もゆだねようではないか。戦闘シーンは数多くあれど、決して戦争(暴力)を完全に肯定しないし、戦闘で敵と味方のどれだけが死んでいったかが、きっちりと描かれるところがいかにもハミルトンらしい。(Psyc)

キャプテン・フューチャー・シリーズ

「<キャプテン・フューチャー>透明惑星危機一髪!」
THE MAGICIAN OF MARS 1941
 野田昌宏訳 カバー・水野良太郎 ハヤカワSF13 ISBN4-15-010013-6
 
 キャプテン・フューチャー・シリーズ
(あらすじ―本書背表紙より)
 大宇宙の悪に敢然と立ち向かうひとりの男がいた。その名はキャプテン・フューチャー。幼くして両親を凶悪犯に殺害されたかれは、<生きている脳>サイモン・ライト、ロボットのグラッグ、アンドロイドのオットーの超人3人によって育てられた。やがて、偉大なる科学者にして勇猛果敢な冒険家として成長したかれは、その天才を悪と戦うことに捧げる決心をしたのである! お待ちかね、宇宙冒険大活劇の決定版、ついに登場。

(書評:1998-07-27読了)
 スペース・オペラの代表的シリーズ。先に「虚空の遺産」を読んでしまったので本編であるこっちがパロディーに思えてくる。内容は可もなく不可もなくといったところ。敵が適度におマヌケなので思わず笑ってしまう。ところで、フューチャー・メンたちがどう考えても変だ。サイモン:生きている頭脳、気持ち悪いって……、オットー:なんでアンタいつもパンツ一枚なの? グラッグ:怪力ロボットのくせにロープに縛られて身動きがとれなくなったりする。ここまでカッコわるいと逆にカッコいいような気がしてくる。(Psyc)


「<キャプテン・フューチャー>暗黒星大接近!」
CALLING CAPTAIN FUTURE 1940
 野田昌宏訳 カバー・水野良太郎 ハヤカワSF42 ISBN4-15-010042-X
 
 キャプテン・フューチャー・シリーズ
(あらすじ―本書背表紙より)
 「巨大な暗黒星が太陽系に接近しつつある。人類を救う道はただひとつ、太陽系の支配権をすべて余に与えよ!」太陽系内の全テレパシー通信機に突如現れた怪人ザロ博士の言葉に、人々は大恐慌におちいった。事態を重視した太陽系政府は、キャプテン・フューチャーに助けを求めた。かくして正体不明のザロ博士ひきいる<太陽系防衛団>を相手に、火星、海王星、冥王星と、おなじみのフューチャーメンの大活躍が始まる!

(書評:1998-09-16読了)
 シリーズの中でも本書はかなり面白いほうなのではないだろうか。一瞬レンズマン・シリーズに心が傾きかけたことがあったがやっぱり私はキャプテン・フューチャーだという気分になった。1940年と戦時中に出版されたものであるのにかかわらず変な政治的意図が感じられないのがよろしい。そういう点でやっぱりハミルトンはロマンチストだと思う。(Psyc)


「<キャプテン・フューチャー>太陽系七つの秘宝」
CAPTAIN FUTURE AND THE SEVEN SPACE STONES 1941
 野田昌宏訳 カバー・水野良太郎 ハヤカワSF54
 
 キャプテン・フューチャー・シリーズ
(あらすじ―本書1pより)
 考古学者ケネス・レスターがニューヨークで殺害され、古代火星王朝の超科学の謎を封じ込んだ“神秘の石”の一つが略奪された。その石を七つ全部揃えて秘密を解いたものは、無限の力が得られるという! おりから地球で休暇を楽しんでいたキャプテン・フューチャーは、この事件を、火星人の秘密結社<二つの月の子ら>と結んで太陽系制覇をもくろむ天才科学者ウル・クォルン博士の仕業とにらみ、彼のいる金星へ愛機コメット号を飛ばした……! 悪と対決して向かうところ敵なし、太陽系全域にその名も高きフューチャーメンの面々さっそうの活躍!

(書評:2000-01-16読了)
 今となっては登場する舞台や科学考証がハッタリ以外のなにものでもないのだがハミルトンだからという理由だけで許せてしまうのが不思議。ただひたすらダラダラと冒険活劇しないで、なんだかんだといってハラハラドキドキさせるのでキャプテン・フューチャーものは好きだ。翻訳が野田昌宏氏でそれがいい具合にキャプテン・フューチャーのマンガチックな世界にはまっているので毎度毎度たいへん読みやすい。(Psyc)


スターウルフ・シリーズ

「さすらいのスターウルフ」 THE WEAPON FROM BEYOND 1967
 野田昌宏訳 カバー・斎藤和明 ハヤカワSF1
 
 記念すべき100冊目
(あらすじ―本書1pより)
 茫漠たる大銀河せましと、神出鬼没の略奪をかさねる生まれながらの無法者スターウルフ(星の狼)たち。その一人、ずぬけた体力と知力をもつモーガン・ケインが、仲間割れから深手を負って外人部隊に見を投ずる。カラル人にやとわれた外人部隊は、宿敵ヴォホル人の誇る、恐るべき秘密兵器の謎をさぐりだす。だが、その兵器の正体は……想像をはるかに絶するものだった。現代のスペース・オペラ、スターウルフ・シリーズ堂々の登場。

(書評:1998-08-27読了)
 1998年の4月からSF小説を狂ったように読み始めて私であるが、「記念すべき100冊目はやっぱり私の大好きなハミルトンだ!」というわけで、この作品が記念すべき100冊目の作品になった。98冊目と99冊目にディックの「高い城の男」」とシルバーバーグの「禁じられた惑星」というけっこう厚くて重苦しい雰囲気の本にかなりの体力を吸い取られたので薄っぺらいこの本を読むのはうれしかった。ハミルトンの最後のシリーズだからか主人公が少し異色。愛と勇気にあふれる健康的なマッチョ・ボーイというわけではない。また、ハミルトンのパターンですがこの作品にも科学や文明に対する斜に構えたシニカルなメッセージがさりげなく込められている。(Psyc)


Back


1