F・ポール・ウィルスン
F. Paul Wilson

(著者紹介―ハヤカワSF1240『ホログラム街の女』、あとがき・裏表紙より)
 F(フランシス)・ポール・ウィルソンは1946年ニュージャージー州に生まれる。いまや『触(タッチ)手』(ハヤカワ文庫NV)『ザ・キープ』などの作品で、ホラーの分野ではビッグネームだが、1970年代には純然たるSF作家だった。少年時代からパルプ・マガジンのSFや幻想小説に親しみ、71年医学部在学中に作家としてデビュー。74年に開業医となってからも、アナログ誌を中心に多数のSF短編を発表している。「特定のジャンルの作家とラベルを貼られたくない」という彼自身の言葉どおり、最近では専門を生かした医学サスペンスに新境地をひらくかたわら、近未来スリラーにも手を染め、また、アンソロジーの編者をつとめるなど、他方面な活躍をつづけている。

「ホログラム街の女」 1989  

「ホログラム街の女」 DYDEETOWN WORLD 1989
 浅倉久志訳 カバーイラスト/木嶋 俊 ハヤカワSF1240 ISBN4-15-011240-1

義理と人情の浪速節SFハードボイルド

(あらすじ―本書背表紙より)
 やっかいなことになった。よりによってダイディータウンのクローン娼婦から、失踪した恋人さがしを依頼されるとは! どんな快楽にも応じる美男美女のクローンが集う街――それがダイディータウンだ。いくら美女でも真民がクローンと恋におちるわけがない。とはいえ、女がさしだしたのは本物の金貨だ。で、おれは引き受けた。地球を揺るがすほどの大事件に巻きこまれるとも知らずに……鬼才が放つ傑作SFハードボイルド!

(書評:1999-08-29読了)
 久しぶりに面白いSFを読んだという感じがした。非常に良心的な内容。やっぱり小説はストーリーが第一。サイバーな雰囲気ムンムンの街を舞台にしたSFハードボイルドだが、腕っぷしが弱くて銃も苦手という冴えない探偵を主人公にしたベタベタな浪花節小説。おセンチな展開が嫌いな人にはダメでしょうが、別にいいじゃないか。主人公自身も彼のうさんくさい仲間たちも、義理と人情味があって、なおかつあんまり「まぬけ」でないところがよろしい。頭の悪い奴が登場するハードボイルド小説はダメですね。

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