ハル・クレメント
Hal Clement

(著者紹介)
 ハードSF作家。

「窒素固定世界」 1980

「窒素固定世界」 THE NITROGEN FIX 1980
 小隅 黎訳 創元SF615-5 ISBN4-488-61505-8
 
 ハードSF茶番劇
(あらすじ:本書1pより)
 未来の地球、そこは地獄のような世界だ。地表には窒素を酸化するミュータント植物が茂り、ために大気中には遊離酸素が存在しない。海は百分の一規定の硝酸と化している。酸性化した水が溶けこんでいた二酸化炭素のほとんどを放出し、それがもたらした温室効果の結果、両極の氷が溶けて海面は上昇しつつある。人々は酸素マスクなしで大気中を歩くことができない。なぜこんなことになってしまったのか? もとの地球にもどす方法は? そんなとき、宇宙の彼方から窒素系生命体が調査のために地球にやってきた……!

(書評:2000-06-10読了)
 これを茶番劇といわずして何を茶番劇というのかというハードSF茶番劇。これ本当に1980年に発表された小説なのか? 古くさすぎ。やる気なくただひたすら脱力しながら読む。読了できたのは奇跡をいえるだろう。作者が「科学的」に勝手に構築した世界なり社会で人間が右往左往するという作品はハードSFにはよくある。確かにそれこそがSFであり、「センス・オブ・ワンダー」の源といえるだろう。しかしながら、ハードSFという一つのジャンルに簡単にカテゴライズされてしまうような作品は、逆に考えてみれば、決まりきった型どおりのお約束に満ち溢れた平凡で保守的なSFということになると思う。それはあらゆる芸術作品にもいえるかも。ある一つのジャンルやカテゴリーを与えられた瞬間、その芸術作品は平凡なものに成り下がってしまう。すべてのカテゴリーを超越したものこそがいつまでも永遠に輝きつづけるに違いない。(Psyc)


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