(著者紹介)
日本を代表するハードボイルド作家。既に逝去。
「野獣死すべし」 1958 |
「野獣死すべし」 1958
角川文庫4350
非情美の世界(あらすじ:本書裏表紙より)
そのとき夢見るような瞳は冷ややかに冴え、唇は挑むような不敵な微笑に歪む…。若き伊達邦彦が計画するのは完璧に計画し尽くした美しいまでの完全犯罪だ。そして狙う獲物は千数百万円もの大学入学金!
――彼の胸に秘めるのは、殺人の美学への憧憬、耐えて耐え抜くストイシズムの詩、己の能力の最後のひとしずくまで傾けて目的に執着する強烈な決意と戦うニヒリズム…。そこには生命の充足感がある。――決行の日は迫りつつあった!
大藪晴彦が、若きローン・ウルフの生き様を描き、“非情美の世界”を確立した名作! 父の会社を乗っ取った男への復讐を描く「復讐編」を併録。
(書評:2000-06-25読了)
伊達邦彦こと松田優作(松田優作こと伊達邦彦?)が悪の限りを尽くす硬質なハードボイルド。徹底的に「情」を廃しているので、なまぬるい本ばっかり読んでいる人はついてこれないだろう。鬱屈したサラリーマンや学生のための典型的ウサ晴らし小説ともいえる。イデオロギーが一切からまないので、それだけ大衆に受けいれられたのかも。生まれながらの反逆者、伊達邦彦とはいえ、さすがに皇居とか国会とか各国の大使館は襲撃しない。この後、伊達邦彦の物語はシリーズになるのだが、私としてはここで派手に死んで終わりにしたほうがよかったかもと思う。ところで、伊達邦彦は文学・演劇青年でもあるので、彼の読んでいた本をいろいろ読んでみるのも面白いかもしれない。(Psyc)