ハードSF作家
ジェイムズ・ブリッシュ
James Blish
(著者紹介)
ハードSFの代表的作家。厳正な批評家としても知られる。1921年生まれ。1975年没。
「〈宇宙都市@〉宇宙零年」 1970 | 「<宇宙都市A>星屑のかなたへ」 1970 |
「〈宇宙都市@〉宇宙零年」
CITIES IN FLIGHT, THEY SHALL HAVE STARS 1970
浅倉久志訳 カバー・鶴田一郎 ハヤカワSF305
ただひたすら退屈なハードSF(あらすじ:本書背表紙より)
西暦2018年、人類は木星表面に幅10マイル高さ30マイル、長さはいまなお伸びつつある巨大な<橋>を建設した。その骨格をなすのは、氷――華氏零下98度と百万気圧の圧力下ですばらしい建築材料に変貌した氷だ。しかも、木星の地表を吹きすさぶ時速2万5千マイルの強風が、数百メガワットの動力となって<橋>を維持し、拡張させる。木星の闇のわだつみの中、巨大で孤独な、この無生物はしだいに成長しつつあった。この途方もなく巨大な橋の目的は何? 星々の背後に潜むその秘密とは? 星々に散らばった人類の活躍を壮大なスケールで描く<宇宙都市>シリーズのプロローグ!
(書評:1998-09-02読了)
ストーリーはは極めて単純。「 ない」といってもいいかもしれない。ハードSFファンならたまらない内容なのだろうがたいして面白くなかった。要するにこれだけの話、1. スピンデイジー(反重力装置)を開発。
2. 不老長寿の薬品を開発
3. ソビエトに支配された地球を脱出しようとみんなで準備をするのであった。めでたし、めでたし。反ソビエトのイメージがビシバシでてくるところが妙に気になった。もっともソビエトがよかったってわけじゃ全然ないけど、こういう単純であからさまなのは個人的に好きになれないし、そんな普遍的でない古びたSFを私は読みたくない。もっとも、シリーズなので読み進んでいけば印象が変わるかもしれない。
ところで、この本の「あとがき」に作者であるブリッシュのレイ・ブラッドベリ批判が載っている。たしかにごもっとも。ブラッドベリ(←私はそんなに好きではない)の肩をもつわけじゃないけれど、かといってSFがみんなハードSFになったら困るよな。
「<宇宙都市A>星屑のかなたへ」 A LIFE FOR THE STARS 1970
岡部宏之訳 カバー・鶴田一郎 ハヤカワSF309 ISBN4-15-010309-7
居心地の悪い現実(あらすじ:本書背表紙より)
スピンデイジーと呼ばれる画期的な星間航法が開発されて以来、多くの都市が老いさらばえた地球に別れをつげ、<宇宙都市>となって大宇宙へと旅立っていった。そしていま、六月のぎらつく太陽が照りつけるペンシルバニアの田舎町スクラントンもまた、もうもうたる砂塵を舞いあがらせながら、町全体がゆるやかに回転をはじめたかと思うと、そのまま宙に浮んで空のかなたへと消え去っていった。しかも、その様子を見物に来ていたひとりの少年、クリス・ディフォードを乗せたまま……。広大な銀河の星々をバックに、渡り鳥都市の冒険を叙情豊かに謳いあげたシリーズ第二弾!
(書評:1999-12-22読了)
児童文学でありながら読みごたえアリの一冊。「理想と現実」ということを考えた場合、ブリッシュは極めて現実的な作家だろう。科学的考証云々というより、渡り鳥都市とそれにともなう内部の管理機構及び対外戦略が実に現実的に描かれる。「選民思想的弱者切捨て」な内容といってしまえばそれまでだが、それはそれでブリッシュの設定はリアルなものといわざるを得ないかも。でも、その分スカッとしない。はっきりいって嫌いだ。