ニューウェーブ
J・G・バラード
J. G. Ballard
(著者紹介)
ニューウェーブを代表するイギリス人作家。1930年、上海生まれ。
「ハイ−ライズ」 1975
「結晶世界」 1966 |
「夢幻会社」 1979
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「ハイ−ライズ」 HIGH-RISE 1975
村上博基訳 カバー・大森英樹 ハヤカワSF377
汚物まみれ(あらすじ:本書背表紙より)
現代の知的専門職にたずさわる人々、弁護士、医師、税理士、スチュワデスなどが住む40階建て高層住宅。二階の住人の一人テレビ・プロデューサーのワイルダーは、夜ごと建物内でくりひろげられるパーティーが異様なまでの活気をおび、階の高低にもとづく階級間の摩擦が激しくなってくることに気づいた。やがて、結婚当時は才気煥発だったが、今は子供の世話もせず、食事の支度もせず怠慢になっていく妻を残し、ワイルダーは塵芥シュートからあふれでたごみだらけの廊下を、一階一階、屋上へと自らの足でのぼっていくのだった……現代社会のヒエラルキーの崩壊を描きだした傑作長編。
(書評:1998-05-XX読了)
ニューウェイブの代表的作家の作品。匂いたつ汚物まみれな一冊。「高層ビルの人たちが窓からベチャベチャッとゴミを投げ捨てるのが面白くなかった?」と私の友人はいっていた。なるほど、そういう楽しみかたもあったのか。確かにビルの住人たちの行動は傍から見ればプッと笑っちゃうくらいマヌケ。ビルを40階立てじゃなくて400階立てくらいにしてしまえばちょっとはSFっぽくなったかもしれない。なんだかよくわからんストーリーだがそこそこ面白かった。
「結晶世界」 THE CRISTAL WORLD 1966
中村保男訳 カバー・松林富久治 創元SF 629-02 ISBN4-488-62902-4
土人、土人、土人……(あらすじ:本書1pより)
アフリカの癩病院副院長サンダースは、忘れられぬ人妻を追って、マタール港に着いた。が、そこから、彼女のいるモント・ロイアルへの道は、なぜか閉鎖されていた。翌日、港に奇妙な水死体があがった。四日も水につかっていたのに、息をひきとったのは僅か数時間前らしく、まだぬくもりが残っていた。しかし、それよりも驚くべきは、片腕が水晶のように結晶化していることだった。それは近い将来全世界が美しい結晶と化そうとしている不気味な前兆であったが、むろん彼はそうした秘密を夢にも知らなかった。
(書評:1998-06-27読了)
アフリカを舞台にしているからかギョッとしてしまう表現が多い。「土人」、「土人」とひたすら連発します。「言葉狩り」なんてするつもりはサラサラないけどすごく気になった。で、「土人」とか「ライ病患者」のからみでなにかがあるのと思えばどうやらなにもなさそうだ。全編ただひたすら悪趣味。「ハイ-ライズ」はそれなりによかったけどなんでこれが傑作なわけだ? とはいえ、この作品をそのようにとらえること自体が内容を理解していないという証拠で、私は「文学をわかっちゃあいないサル」なのかもしれない。
「夢幻会社」 THE UNLIMITED DREAM COMPANY 1979
増田まもる訳 カバー・松林富久治 創元SF623-10 ISBN4-488-62910-5
ドピュッ、ドピュッ、ドピュッ……(あらすじ:本書より)
ブレイクは空を飛ぶ夢にとりつかれていた。ある日彼は、空港から一気のセスナを盗んで飛びたつが、そのセスナはロンドン郊外の田舎町シェパトンに、火だるまになって墜落してしまう。ブレイクは幸いにも住民の手で救出された。だがこの町から脱出することができずに過ごすうち、彼の周囲には、あいついで奇妙な出来事が起こりはじめた。そして、やがてこの閑静な町は、熱帯のジャングルと鳥たちの楽園に変貌してゆく……! 鬼才バラードの、神話性に溢れた傑作登場。
(書評:1998-08-08読了)
純文学の扱いをされるバラードだがひょっとしてこのオッサンはただ単にお下劣なだけではないか? と考えてしまった。この作品では主人公が精液をピュッピュと(ドロドロと?)飛ばしながら町中をジャングルにしていきます。あまりにもアホすぎて笑ってしまった。やっぱりバラードの基本はスカトロである。この本でちょっとバラードが好きになった。バラード嫌いの方々にかなりお勧めか?