毎回ハッピーエンド
J・P・ホーガン
James Patrick Hogan
(著者紹介)
1941年ロンドン生まれ。ハードSFの代表的作家。著書多数。
「星を継ぐもの」 1977
「創世記機械」 1978 「ガニメデの優しい巨人」 1978 |
「時間泥棒」 1993
「断罪への航海」 1982 「未来の二つの顔」 1979 |
「星を継ぐもの」 INHERIT THE STARS 1977
池 央耿訳 カバー・加藤直之 創元文庫SF663-1
オールタイム・ベスト(あらすじ:本書1pより)
月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行われた結果、驚くべき事実が明らかになった。死体はどの月面基地の所属でもなく、世界のいかなる人間でもない。ほとんど現代人と同じ生物であるにもかかわらず、五万年以上も前に死んでいたのだ。謎は謎を呼び、一つの疑問が解決すると、何倍もの疑問が生まれてくる。やがて木星の衛星ガニメデで地球上のものではない宇宙船の残骸が発見されたが……。ハードSFの新星ジェイムズ・P・ホーガンの話題の出世作。
(書評:1998-04-26読了)
ハードSFの巨匠、J・P・ホーガンの代表作。内容のそのほとんどが脳髄をピシピシと刺激する科学者同士の大激論で構成されている。ラストのドンデン返しは衝撃的。この謎解きには一本とられたぜ。
「創世記機械」 THE GENESIS MACHINE 1978
山高 昭訳 カバー・加藤直之 創元文庫SF663-4
長い、たるい、難しい(あらすじ:本書1pより)
若き天才科学者クリフォードは、政府機関で統一場理論の研究を進めるうち、画期的な成果をあげた。物質、電磁気力、そして重力の本質を見事に解き明かしたのだ。この理論を応用すれば、宇宙のエネルギーを自由に操り、利用することができる。使い方によれば究極の兵器ともなり得るのだ。そこに目をつけた軍部は、ともすると反抗的なクリフォードを辞職に追いやり、独自に研究を始めた。彼は私的研究機関に移り、細々と自分の研究を続けていたのだが……。ハードSF界の旗頭ホーガンの面目躍如たる大作長編。
(書評:1998-05-26読了)
なるほどこれが純然たる正真証明のハードSFなのか。「長い、たるい、難しい」という困難にもめげずセリフだけをナナメ読みした。一応長編小説だがわけのわからん科学技術用語続出拷問を差し引いてしまえばそうたいした内容ではない。中短編だったならばもうちょっと真剣に読んだかもしれない。「そんなうまいこといくかい!」と思いつつもこのラストは気にいった。とてもホンワカしている。
「ガニメデの優しい巨人」 THE GENTLE GIANTS OF GANYMEDE 1978
池 央耿訳 カバー・加藤直之 創元文庫SF663-2 ISBN4-488-66302-8
義務感にかられる読書など最低さ(あらすじ:本書1pより)
木星最大の衛星ガニメデで発見された二千五百万年前の宇宙船。その正体をつきとめるべく総力をあげて調査中の木星探査隊に向かって、宇宙の一角から未確認物体が急速に接近してきた。隊員たちが緊張して見守るうち、ほんの五マイル先まで近づいたそれは、小型の飛行隊をくり出して探査隊の宇宙船とドッキング。やがて中から姿を現したのは、二千五百万年前に出発し、相対論的時差のため現代のガニメデに戻ってきたガニメアンたちだった。前作「星を継ぐもの」の続編として数々の謎が明快に解明される!
(書評:1998-05-29読了)
「星を継ぐもの」の続編。前作を読んでしまった人は読まなければいけない内容。しかしい面白くないしたいして盛り上がらない。最後の50ページだけを読むというのも一つの手。ところで、やっぱり完結編である3作目の「巨人たちの星」はやっぱり読まなければいけないのかな? この前、古本屋で50円で買っちゃったしなあ……
「時間泥棒」 OUT OF TIME 1993
小隅 黎訳 創元文庫SF663-12 ISBN4-488-66312-5
カバーイラスト=加藤直之 カバーデザイン=矢島高光
肩の力を抜こう(あらすじ:本書1pより)
ニューヨークで、ある日突如として時間の流れがおかしくなりはじめた。時計がどんどん遅れていくのだ。しかも場所ごとに少しずつ遅れかたが違う。その結果、周波数も影響をうけ、通信もままならない。著名な物理学者が言うには、「この世界と交差する他次元のエイリアンがわれわれの時間を少しずつ盗み取っているのです」!? エイリアンだか何だか知らないが、とにかく時間が足りなくなっているのは本当だ。でも、いったいどんな手が打てるというのだ? 議論は果てしなくつづく。だがやがて時間のみならず物質まで以上事態が生じはじめ……。
(書評:1998-07-11読了)
ホーガンには珍しく200ページ以下という薄い内容。暇つぶしのつもりで読んだ。ハードSFで有名な著者ですが、これは「○○を食べて、○○のクソをたれる」というアホなストーリー。とりあえずホーガンを読んでみようという方にお勧めかも。オカルトをケチョンケチョンにするところがあるのでそれはそれで壮快な気分になれる。
「断罪への航海」 VOYAGE FROM YESTERYEAR 1982
小隅 黎訳 カバー・加藤直之 ハヤカワSF586 ISBN4-15-010586-3
ホーガンのユートピア小説(あらすじ:本書裏表紙より)
地球の半分を壊滅させた第三次世界大戦の傷もようやく癒えた2040年、アルファ・ケンタウリから通信が入った――大戦直前に出発した移民船<クヮン・イン>が殖民に適した惑星を発見、豊富な資源を利用して理想郷の建設を開始したというのだ。この朗報を受けて<メイフラワー二世>号が建造され、新天地を求める人々を乗せて惑星ケイロンをめざし旅立った。だが、20年の長旅の果てに一行を待ちうけていたのは、地球とはあまりにも異質な、想像を絶する奇妙なケイロン人社会だった! 現代ハードSFの旗手ホーガンが該博な科学知識をベースに描いた壮大なスペース・ドラマ!
(書評:1998-09-27読了)
良心的でちゃんとしたSF。戦闘シーンも豊富なので最後まで楽しく読めます。こういうのを久しぶりに読むと、ディックとかを読んでウハウハいっている自分をバカかもしれないと考えてしまう。ホーガンの思い描くユートピアには賛否両論あるかもしれないが別にいいじゃないか。SFは逃避文学でもあるし。
「未来の二つの顔」 THE TWO FACES OF TOMORROW 1979
山高 昭訳 カバー・加藤直之 創元文庫SF663-5 ISBN4-488-66305-2
グウの音もでましぇん!(あらすじ:本書1pより)
レイモンド・ダイアー博士はニューヨーク市立大学で人工知能の研究をしていたが、月面の工事現場で起きた重大な事件のために、その研究の中断を申し渡された。コンピューターが誤った判断を下したため、五人の人間が危うく殺されるところだったのだ。人工知能研究の重要性を信じるダイアーは、コンピューター管理システムの安全性を確かめるべく、宇宙空間に植民地として建造された巨大宇宙ステーションにおける壮大な規模のシュミレーションを提案した……。ハードSFの第一人者ホーガンが卓越した科学知識を傾けて描くコンピューターSF!
(書評:1998-10-05読了)
傑作。正真証明のサイエンス・フィクション。人口知能コンピューター+宇宙ステーション+バトル・アクションといった感じで完全にエンターテイメントしている。もうグウの音もでない。ホーガンの作品の中でも屈指の出来ばえではないだろうか。ベストといえるほど好みの作家ではないけれど、ホーガンはやっぱりいいと思う。