都会的不条理劇
安部公房
Kobo Abe

(著者紹介)
 SFという一つのカテゴリーを超越した日本の代表的作家。私のお気にいりの作家の一人。

「砂の女」 1962

「人間そっくり」 1974

「密会」 1977

「燃えつきた地図」 1967


「砂の女」 1962
 新潮文庫 あ-4-15 ISBN4-10-112-115-X カバー・安部真知

 ――罰がなければ、逃げるたのしみもない――

(あらすじ―本書背表紙より)
 砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開の中に人間存在の象徴的姿を書き下ろした長編。20数カ国語に翻訳された名作。

(書評:1998-04-XX読了)
 なんともいえない不思議な雰囲気に包まれた奇妙な作品。 ちょっと難しいけれども読み進めていくうちに冒頭の言葉の意味がなんとなくわかってくる。かなりお勧め。

「人間そっくり」 1974
 ハヤカワJA40 カバー・深沢幸雄

 怖い……

(書評:1998-04-XX読了)
 「人間そっくり」「鉛の卵」という二つの中短編が収録されている。「人間そっくり」は基本的にコメディーなんだけどそれだけに怖い。「鉛の卵」はわりとシンプルなSF。お気楽に読めます。

「密会」 1977
 新潮文庫 草121=17 カバー・安部真知

 弱者への愛には、いつも殺意が込められている――

(あらすじ―本書背表紙より)
 ある夏の未明、突然やって来た救急車が妻を連れ去った。男は妻を捜して病院に辿りつくが、彼の行動は逐一盗聴マイクによって監視されている……。二本のペニスを持つ馬人間、女秘書、溶骨症の少女、<仮面女>など奇怪な人物とのかかわりに困惑する男の姿を通じて、巨大な病院の迷路に息づく絶望的な愛と快楽の光景を描き、野心的構成で出口のない現代人の地獄を浮き彫りにする。

(書評:1998-09-06読了)
 安部公房らしくこれも奇妙な閉塞感が全編に漂うよくわからない作品。でも、二日かけて読むつもりだったが、あんまり面白いんで一日で読んでしまった。読み進めていくうちにディックの「暗闇のスキャナー」を思い出した。マイベストの一冊。かなりお勧め。


「燃えつきた地図」 1967
 新潮文庫 あ-4-14 ISBN4-10-112114-1 カバー・安部真知

 都会――閉ざされた無限。けっして迷うことのない迷路。すべての区画に、そっくり同じ番地がふられた、君だけの地図。
 
 だから君は、道を見失っても、迷うことは出来ないのだ。

(あらすじ―本書背表紙より)
 失踪した男の調査を依頼された興信所員は、追跡を進めるうちに、手がかりとなるものを次々と失い、大都会という他人だけの砂漠の中で次第に自分を見失っていく。追う者が、追われるものとなり……。おのれの地図を焼き捨てて、他人の砂漠の中に歩き出す以外には、もはやどんな出発もありえない。現代の都会人の孤独と不安を鮮明に描いて、読者を強烈な不安に誘う書き下ろし長編小説。

(書評:1999-08-22読了)
 面白いことは確かな不思議な小説。一応推理小説じたての内容。最初からハッピーエンドとか事件が無事に解決することなんかこれっぽっちも期待していなかったけれどやっぱり事件は解決せず主人公は不条理な世界に消えていくのであった。「砂の女」や「密会」と同様にあいかわらず冒頭の一文は渋い。よくわからない作品だけど都会的で無機質な恐怖を十分に味わえる。


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