ドイツSF界の星
K・H・シェール
K. H. Scheer
(著者紹介)
ドイツ人SF作家。ペリー・ローダン・シリーズの著者。
「地底都市の圧制者」 1967 |
「地底都市の圧制者」 DIE VERGESSENEN 1967
松谷健二訳 カバー・斉藤寿夫 ハヤワカSF239
最終章の衝撃
(あらすじ:本書1pより)
アンドロメダ星座における銀河中央政府の一植民地として開発途上にあった恒星シラー第四惑星。高度な科学技術を結集して構築されたその文明も、突如襲来した超兵器によってもろくも崩れ去り、いまや一面放射能にみちたジャングルと化していた! 生存者はわずかに二人の人間と一握りのミュータントを数えるのみ。だが、ミュータントと化した植民者たちの原始的な生活に耐えられぬ二人は、文明への最後の望みを胸に、ただ一つの無傷のまま残されているという、幻の宇宙空港めざして旅だったのだが……。ドイツSF界の星K・H・シェールが放つ冒険SFの白眉!(書評:2000-09-21読了)
1967年発表のスペースオペラ。出だしからどうしようもなく古くさい。主人公は典型的なスペオペの主人公。当然セックスもなし。時代性を考えると致命的な本である。目新しいものがなにもない。あとがきでも触れられているが、「無知でいわば烏合の衆である一般大衆を、人並みはずれた能力を持つ少数のヒーローたちが、さまざまな権謀術数を用いながら導いていく――」というノリには本当にウンザリさせられる。ほとんどやる気なく私はダラダラとこの小説を読んでいた。ひょっとしたら、あまりのくだらなさに途中で投げ出してしまう人もいるかもしれない。ところがところがところが、である! 最終15章に驚くべきオチが待ちかまえている。このクソ気分の悪いラストを誰が予想できるだろうか? 始めから14章目までの他愛もない展開は、実は伏線であって、すべてこの最終章のためであったといっても過言ではない。優生学的かつ超人思想的で、個人的には吐き気をもよおすような内容の本だが、このラストにはおそれいった。これだからSFは面白い。
「SFとは何か?」という問いに、P・K・ディックは「頭の中によびおこす強烈なショック、認識異常のショック」と答えたという。この本はまさにそれである。C・プリーストの「逆転世界」ほどの衝撃はないが、一読の価値は十分にある。最後まで我慢して読むべし。(Psyc)