平井和正
Kazumasa Hirai
(著者紹介)
日本人SF作家。
「ウルフガイ<別巻1> 狼男だよ」 1972 |
「ウルフガイ<別巻1> 狼男だよ」 1972
カバー・生瀬範義 ハヤカワJA63
純情で三枚目だよ(あらすじ:本書1pより)
おれの名は犬神明(いぬがみあきら)、一匹狼のルポライターだ。おれの特技の一つに、厄介事を嗅ぎだす超能力がある。ある夜、世田谷の交差点でおれのブルSSSが追突した。あんぐり開いた相手の車のトランクには、一糸まとわぬ若い女の死体が……! いきなり後から首を絞められたおれは、司法解剖の寸前息を吹きかえした。そう、おれは人間じゃない――おれは不死身の狼男なのだ! おれはいま身の毛もよだつ怪奇凄惨な国際的大陰謀に巻き込まれようとしていた! SFハードボイルドの決定版、別巻ウルフガイただいま登場!
(書評:2000-07-10読了)
「狼男だよ」という非常にとぼけたタイトル。内容もそんな感じで、ハードボイルドでありながらユーモアたっぷりの作品になっている。古臭いといってしまえばそれまでだが、なかなか楽しんで読むことができた。メチャメチャ強くてカッコいいけど、どうしようもないくらい純情でお人よしな主人公が、妙に三枚目でマル。大藪晴彦の伊達邦彦とはえらい違いだ。また、犬神明の口を通して、人類に対しての不平不満がナイーブに何度も語られるところをみて、この作者が一時新興宗教にはまったらしいといことがなんとなくわかるような気がした。勝手なことをいうようだが、良くも悪くも、ご本人自身もナイーブで、騙されやすい人なのだろうと想像してしまう。ところで、内容の濃い薄いに関係なく、この本はとても読みやすい。自分もこんなふうにストレスなく読める文章を書くことができればいいなと本当に思った。自分で小説を書く際、この本はいいお手本になると思う。(Psyc)