ユーモアSF作家
キース・ローマー
Keith Laumer
(著者紹介)
ユーモアSFの第一人者。1925年ニューヨーク生まれ。軍務を経験した後に作家となる。著書多数。
「優しい侵略者」 1966
「突撃! かぶと虫部隊」 1965 |
「前世再生機」 1963
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「優しい侵略者」 THE MONITORS 1966
風見 潤訳 カバー・宮武一貴 ハヤカワSF187侵略テーマSFのパロディー
(あらすじ―本書1pより)
アメリカは突如、一瞬にして、一滴の血も流すことなく占領された。モニターと名乗る黄色い服の連中がいきなり街にあらわれたかと思う間もなく、すでにそのときは全米がモニターの支配化にあったのだ。はたしてこのモニターとはなにもの? ソ連軍か、はたまた未知の宇宙より飛来した宇宙人か? 一切は不明のまま、サービス精神満点にして押しつけがましい占領政策はつづけられていく。そして善良にして勇敢なるアメリカ市民ブロンデル は、みずからこの国家の非常時に立ちあがった! ユーモアSFの第一人者ローマーが、侵略テーマSFの逆手をとって放つ快心作!(書評:1999-07-12読了)
高度な科学技術と良心に満ち溢れたウルトラ・スーパー博愛平等主義を掲げた謎の存在(モニター)によって地球が支配されるストーリー。それに我慢がならず我らがアメリカ人が必死の抵抗を試みるわけだが、それがもうハチャメチャで人間(特にアメリカ人)の愚かさがみごとにあぶりだされる。しかしながら、全体的にドタバタ・コメディーしすぎで背筋が凍るようなエグエグさがないのがちょっと残念。おまけに、最後にアッと驚くような大ドンデン返しもない。面白いけれどなにかイマイチな感じがする。
「突撃! かぶと虫部隊」 RETIEF'S WAR 1965
岡部宏之訳 カバー・つぐもと れい ハヤカワSF180植民地主義的
(あらすじ―本書1pより)
百種以上の雑多なかぶと虫が住んでいるクォップ星では、それまでの平和を破って不穏な空気が流れはじめた。警備役に持ち上げられたヴォイオン族がわがもの顔に街をのし歩いては横暴を働くようになったのだ。そんな彼らと手を組もうとする地球大使館に反感を抱いたのがレティーフ。かれは地球人に似た竹馬族に変装すると、かぶと虫部隊の結成を呼びかけた。今まで力をあわせたことのないかれらが、レティーフの采配の下に一致団結、自由と平和のために立ちあがったのだ! 才筆ローマーが軽快なストーリーテリングで展開するコミカル・アクション長篇。(書評:1999-12-10読了)
一応自由と平和のために悪のかぶと虫と戦うという筋だてだが、主人公の行動がどこかの植民地で画策する大国の情報局員のような感じ。かなりエゲツナイことをする。冒険活劇戦争ドタバタSFとして素直に読むのが正しいのかもしれないけど、そういったことを念頭におきながら読むとけっこう考えさせられる内容。正直いってこれといって面白い本ではなかった。
「前世再生機」 A TRACE OF MEMORY 1963
岡部宏之訳 カバー・真鍋 博 ハヤカワSF26賞をとるほどのできでもないし、将来ベストSFのリストにはいることもないだろう。
だが決して退屈させない。(アナログ誌書評担当者のローマー評)(あらすじ―本書1pより)
決して破けず傷もつかず、しかも同一人の筆跡で過去何世紀にも日付のさかのぼる奇妙な日記――今は落ちぶれた元秘密情報部員で元私立探偵のレジョンが、フォスターと名のる老億万長者から見せられた、その一冊の手帳が全ての発端だった。フォスターに執拗につきまとう火の玉に似た無数の宇宙生物の攻撃を逃れ、億万長者の失われた記憶の謎を探りだすべく、英国に今も遺るストーンヘンジを訪れた二人は、なんとその地下に巨大な宇宙船コントロール・ルームを発見する! 鬼才ローマー描く奇想天外、痛快無比の現代スペース・オペラ!(書評:2000-05-11読了)
前半はスリリングなハードボイルド、後半は昔ながらのスペースオペラといった感じでなかなか楽しめる。アイデアがもりだくさんでサービス精神旺盛なので読んでいてまったく飽きない。かなりシリアスなストーリー展開とはいえ、やっぱりローマ―の作品らしくユーモアもたっぷりである。知力と体力をふりしぼって悪戦苦闘するクールで義理堅い主人公もマル。E・E・スミスの作品みたいに壮大なスケールはないけど、変則的なスペオペとして傑作といっていいほどの出来ではないだろうか。しかしながら、賞をとるほどのできでもないし、将来ベストSFのリストにはいることもないだろう。とりあえず、心に残る必読書というわけではないが読んだら読んだで満足の一冊。今までに読んだローマーの作品の中では一番面白かった。これこそまさにアメリカン・エンターテイメント。