マイクル・クライトン
Michael Crichton
(著者紹介)
作家・映画監督の両方をこなす才人。著書多数。1942年シカゴ生まれ。
「アンドロメダ病原体」 1969 |
「アンドロメダ病原体」 THE ANDROMEDA STRAIN 1969
朝倉久志訳 ハヤカワSF208
人情無用
(あらすじ:本書背表紙より)
人工衛星のカプセルは、アリゾナ州ピードモント北20キロの地点に着地した。そして、人工48の田舎町ピードモンドは壊滅した。カプセルの回収班が目にしたものは、ハゲタカの群れと住民たちの死体。やがて、報告中の回収班の声も、ぷっつりと途絶えた。直ちに発動されるワイルド・ファイア作戦――地球外病原菌の侵入に対し、最高の頭脳とコンピューター群が投入されたのだ! 本書は、最先鋭の科学知識を駆使しつつ、あくまでもリアルな恐怖を描ききる恐怖小説であると同時にプロジェクト・チーム、コンピューター等、現代ビジネスのあり方にも重大な示唆を与える価値ある書である。(書評:2000-06-05読了)
とにかく字が小さい。おまけに科学考証もしつこい。著者のクライトンはこの本の執筆のために綿密な調査をしたんだろうけど、この本を訳した朝倉久志氏も本当に大変だったと思う。しかし、ストーリーそのものは実にシンプルなものといえる。以外とスラスラと読み終えてしまった。ネチネチした人間ドラマがなく、リアルに淡々とストーリーが進んでいくところがよい。それが効果的にこの作品の緊張感を高めている。しかし反面、内容が濃厚なわりに壮大さがないので読後のカタルシスに乏しい。
ところで、単なる偶然か、小松左京の「復活の日」と内容が似ている部分がある。宇宙からのウイルスという設定はそのまんまだし、両者ともラストでは核爆弾がドラマを盛り上げる重要なキーワードとなっている。「復活の日」の発表は1964年だから、クライトンがアイデアをマネたのか? 内容は「アンドロメダ病原体」のほうが断然上だけど、そういったところで、小松左京(←私は嫌い)はすごかったといわざるをえない。(Psyc)