アメリカ万歳大将
ロバート・A・ハインライン
Robert A. Heinlein
(著者紹介)
SF御三家。アメリカ万歳大将。D級クズ小説量産作家。著書多数。1907年ミズーリ州生まれ。1988年没。ヒューゴー賞4回受賞。
「宇宙の戦士」 1959
「夏への扉」 1957 「宇宙の孤児」 1963 「人形つかい」 1951 「月は無慈悲な夜の女王」 1966 「太陽系帝国の危機」 1956 「異星の客」 1961 |
「銀河市民」 1957
「スターファイター」 1958 「栄光の道」 1963 (短編集) 「失われた遺産」 1953 「輪廻の蛇」 1959
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「宇宙の戦士」 STARSHIP TROOPERS 1959
矢野 徹訳 カバー・加藤直之 ハヤカワSF230 ISBN4-15-010230-9
軍隊賛美・アメリカ万歳(あらすじ―本書背表紙より)
単身戦車部隊を撃破する破壊力を秘め、敵惑星の心臓部を急襲する恐るべし宇宙の戦士、機動歩兵。少年ジョニーが配属されたのはこの宇宙最強の兵科だった。かれの前には一人前の戦士となるための地獄の訓練が待ち受けている……いつしかジョニーは、異星人のまっただ中へ殴り込み降下をかける鋼鉄の男に成長していた! 未来の熾烈な宇宙戦を迫真の筆致であますところなく描き出し、ヒューゴー賞に輝いた巨匠の問題長篇!
(書評:1998-04-12読了)
パワードスーツほとんど関係ないやん! 右翼的な内容云々というよりもパワードスーツが単なるオマケであることにまず驚いてしまった。内容が内容だけにアメリカバンザーイな軍隊賛美といってこの小説を切って捨てるのはたやすい。実際にその通り。だからといって面白くない小説ではないと思う。SFファンなら絶対にはずせない一冊だろう。とりあえずビシビシッと公衆の面前での鞭打ち……(Psyc)
「夏への扉」 THE DOOR INTO SUMMER 1957
福島正実訳 カバー・中西信行 ハヤカワSF345 ISBN4-15-010345-3
永遠のオールタイム・ベスト(あらすじ―本書背表紙より)
ぼくの飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。かれは、数多いドアのなかの、少なくともどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。そして1970年12月3日、かくいうぼくも夏への扉を探していた。あなたならどんな気持ちになるだろう? もし、最愛の恋人にはうらぎられ、仕事は取りあげられ生命から二番目の発明さえも騙し取られてしまったとしたら……。ぼくの心は12月の空同様に凍てついていたのだ! そんな時ぼくの心をとらえたのは、夜空にひときわ輝く<冷凍睡眠保険>のネオンサインだった! 巨匠ハインラインが描く感動の名作。
(書評:1998-05-22読了)
ついに読んだというべきか、読んでしまったというべきか…… 泣く子も黙る永遠のオールターム・ベスト。あまりにも「よくできた」作品なので、面白いけれどほとんど感想がわかなかった。ドラえもんを小さい頃に読んだことがある人なら前半の車が消えた時点でオチがわかってしまう。ところで主人公がけっこうロリコン趣味だけどいいのだろうか? 幼い少女をかどわかしているのではないのか? そういった見地で読めばなかなか健全な変態小説かもしれない。(Psyc)
「宇宙の孤児」 ORPHAN'S OF THE SKY 1963
矢野 徹訳 カバー・鶴田一郎 ハヤカワSF281 ISBN4-15-010281-3
騎士道精神的肉弾格闘大殺戮(あらすじ―本書背表紙より)
人々は、森、農場、廃墟、迷路などがある<船>が世界のすべてと信じて、種族ごとに生活を営んでいた。だが、この<船>は、遠い昔に人類がはじめて送り出した恒星間宇宙船だったのだ! 航行途上の反乱で航宙士のほとんどが死に絶え、長い年月のうちに<船>は中世的迷信の世界に変貌してしまっていた。しかし、ある日、一人の若者が<船>の中を探検しはじめ、真相を明らかにしようとするが……壮大無比なSF!
(書評:1998-05-27読了)
「孤児」というくらいだから少年が主人公というパターンかと思いきや全然違った。人の憎悪が渦巻く血しぶきドバドバの騎士道精神的肉弾格闘大殺戮が宇宙船内で始まります。かなり悪趣味でキレた内容。ハインラインの作品の中ではマイナーな作品だと思うが、私は気に入った。かなりお勧め。(Psyc)
「人形つかい」 THE PUPPET MASTERS 1951
福島正実訳 カバー・加藤直之 ハヤカワSF217 ISBN4-15-010217-1
泥沼(あらすじ―本書背表紙より)
休暇中にもかかわらず緊急連絡を受け、秘密捜査官サムは不承不承本部に出頭した。アイオワ州グリンネル近辺に国籍不明の未確認飛行物体が着陸、しかもすでに6名の捜査員が行方不明になっているという。事態を重視した局長は、サムと赤毛美人メアリをひきいてレジャー旅行中の一家になりすまし、みずから真相究明にのりだした。だが驚くべし、アイオワ州周辺はすでにナメクジ状の寄生生物によって占領されていたのだ! 人間を思いのままに操る能力を持つ恐るべき侵略者に対し、人類に勝ち目はあるのか? 巨匠が息もつかせぬサスペンスで描きだした侵略SFテーマの傑作!
(書評:1998-05-31読了)
登場する宇宙人は超極悪で対抗する主人公一派は超タカ派。そんな目も当てられない泥沼な内容。ラストは宇宙人の母星に報復のなぐり込みをかけるところで終わってしまいます。ガンバレ、Mr.アメリカ! とはいっても、本当に宇宙人が攻めてきたらウダウダいってはいられないというのもまた事実なので、リアルといえばリアルなのかもしれない。(Psyc)
「月は無慈悲な夜の女王」 THE MOON IS HARSH MISTRESS 1966
矢野 徹訳 カバー・角田純男 ハヤカワSF207
どこが革命のバイブルなのだ?(あらすじ―本書背表紙より)
時に西暦2076年7月4日、圧政に苦しむ月世界植民地は、地球政府に対し独立を宣言した! 流刑地として、また資源豊かな植民地として、地球に巨大な富をもたらしていた月世界。だが、月が人間にとって過酷な土地であることは変わりはなかった。横暴を極める行政府の圧制に対し、革命のための細胞を組織化し、独立運動の気運を盛り上げていったのは、コンピュータ技術者マニーと、自意識を持つ巨大なコンピュータ<マイク>。だが、かれら月世界人は一隻の宇宙船も、一発のミサイルも保有してはいなかったのだ! 1968年度ヒューゴー賞受賞の栄誉に輝くハインラインの問題作!
(書評:1998-07-20読了)
ただひたすら長いので本気でギブアップしそうになった。「1984」的な地球の圧政に耐えかねた月住民の怒りが爆発するといった内容を期待しましたが、じぇんじぇんダメ。怒りの熱気ムンムンの差し迫った雰囲気は月にはなく、どうも革命のカタルシスに乏しい。主人公もそんなに生活には困っていません。コンピューター(マイク)もすぐ協力してくれるし…… どこが革命のバイブルやねんといいたい。やっぱりハインラインは超大国アメリカのオヤジということか。虐げられている側のものの見方がちょっと欠如している。やっぱり革命ものといえば、白土三平の「カムイ伝」とか井上ひさしの「吉里吉里人」というようなものを私は想像してしまう。(Psyc)
「太陽系帝国の危機」 DOUBLE STAR 1956
井上 勇訳 カバー・司 修 創元SF618-1 ISBN4-488-61801-4
アメリカ万歳(あらすじ―本書1pより)
21世紀を通じて最も偉大な政治家が火星で行方不明となり、ここに全太陽系帝国は崩壊の危機にさらされることになった。一杯のウイスキーに釣られた失業俳優ロレンゾは、地球から誘拐されて火星に連れこまれる。目的は――行方不明となった最高大臣の替え玉となり太陽系帝国の危機を救うことにある。だが、もし火星人がその事実を知ったならば、彼の生命はない。大宇宙を舞台に展開するスリル満点の政治闘争。ヒューゴー賞受賞の栄に輝くハインラインの代表作!
(書評:1998-09-15読了)
ハインライン初のヒューゴー賞受賞作品。現在は原題のまま「ダブル・スター」と改訳されたものが出回っているはず。とりあえず、なにもいうべきことはないほどアメリカ万歳な内容。ところどころに時代を感じさせる。「宇宙の戦士」も「月は無慈悲な夜の女王」も読んでしまったので、さあ、残るは「異星の客」だけだ!(Psyc)
「異星の客」 STRANGER IN A STRANGE LAND 1961
井上一夫訳 カバー・司 修 創元SF618-3 ISBN4-488-61803-0
ただひたすら退屈な超大作(あらすじ―本書1pより)
宇宙船ヴィクトリア号で帰った“火星からきた男”は、第一次火星探検船で火星で生まれ、ただ一人生残った地球人だった。世界連邦の法律によると、火星は彼のものである。この宇宙の孤児をめぐって政治の波が押しよせる。しかし、“火星からきた男”には地球人とは違う思考があり、さらに地球人にはない力があった。“火星からきた男”は地球をゆるがせてゆく……老熟の境にはいったハインラインがその思想と情熱、世界観のすべてを注ぎこんだ波瀾に富む超大作。
(書評:1998-09-28読了)
ハインライン入魂の超大作。メチャクチャ長かったぞ。たいして面白くないので何度挫折しかけたことか…… それはともかく、この小説は明らかなフィクションですが、世の中にはこの本の内容のようなことを今でも本気でやっている人々がいるということにあらためて驚いてしまう。そういう意味でちょっとヤバめな内容かも。とりあえず「グロク」しておかないと。(Psyc)
「銀河市民」 CITIZEN OF THE GALAXY 1957
野田昌宏訳 カバー・加藤雅基 ハヤカワSF70 ISBN4-15-010070-5
またまたアメリカ万歳(あらすじ―本書1pより)
太陽系を遠く離れた惑星サーゴンでは、今およそ時代場離れした奴隷市場が開かれていた。物件97号――薄汚れ、痩せこけた、生傷だらけの少年ソービーを買い取ったのは、老乞食《いざりのバスリム》である。彼の庇護の下ソービーの新たな生活が始まった。だが、ただの乞食とは思えぬ人格と知性を持ち、時おり奇怪な行動を見せるバスリムとは何者? そして、死の直前彼が催眠記憶法によってソービーに託した、宇宙軍X部隊への伝言とは?
自己の身許を確認すべく、大銀河文明の影にうごめく奴隷売買の黒い手を追って、やがてソービーは人類発生のふるさと地球へと向かった……! SF界の王者遂に本文庫初登場!
(書評:1998-10-06読了)
「宇宙の戦士」の少年少女向けスペース・オペラといった内容。軍隊ってなんてすばらしいとこなんだ! やっぱり銀河市民(アメリカ市民)は「自由」を享受する変わりに銀河連邦(アメリカ合衆国)に「責任」を持つべきだよね、といった感じでアメリカの「良心」がとにかくよく理解できます。ホンマ、オッサン、ええかげんにせえよ……(Psyc)
「スターファイター」 HAVE SPACE SUIT-WILL TRAVEL 1958
矢野 徹訳 カバー・佐藤弘之 創元SF618-7 ISBN4-488-61807-3
退屈、冗長、ダラダラダラダラ……(あらすじ―本書1pより)
宇宙に飛び出すことを夢見ていたぼくは、宇宙旅行が当たる懸賞に応募し、残念ながら一等はのがしたものの、みごと入選した。商品は中古とはいえ本物の宇宙服である。ぼくは八方手をつくして部品を調達して、なんとか使えるように修理した。あとは新聞広告でも出して、誰かがぼくを宇宙に連れ出してくれるのを待つだけ。だが、そんなのは夢物語にすぎない。宇宙飛行士になれるのは何万人かにひとりだけなのだ。せめて雰囲気だけでもと、ぼくは宇宙服を着て散歩に出かけた。謎の宇宙船から着陸誘導を求める声が聞こえてきたのはそのときだった……
(書評:2000-03-15読了)
「スターファイター」と邦題はなっているが戦闘はほとんどないといってよい。原題のとおり「宇宙服を着て、旅に出よう」といった昔ながらのSF。それがハインラインの特徴なのだが、ひたすらダラダラと長い会話が続くので,
ガンガン読み飛ばす。おまけに、私の癪にさわる発言・表現が随所に飛び出すのでよけいに気分が悪くなる。(Psyc)
「栄光の道」 GLORY ROAD 1963
矢野 徹訳 カバー・加藤直之 ハヤカワSF340 ISBN4-15-010340-2
真の最低小説(あらすじ―本書1pより)
「勇敢な」男性も求む、あらゆる武器に熟達、不撓不屈の勇気、顔形はハンサムなこと。永久雇傭、非常に高給、輝く冒険、大きな危険!」ふと手にした新聞でこんな広告を読んだオスカー・ゴードンはこの求人に応募した。そして、ゴードンは時空を越える冒険の旅へ――栄光の道へと旅立ったのだ、右手には剣を、左手には<二十の宇宙>をあまねく支配する絶世の美女アスターをともなって……巨匠ハインラインの傑作冒険小説!
(書評:2000-06-21読了)
ムキムキ男とブロンドの美女が描かれている表紙を見て少々ヤバイ予感はしたが、読み始めたらやっぱり拷問状況になってしまった。とにかくダラダラしていて退屈で面白くないのでひたすら苦痛。この本を真面目にじっくりと読むことができて、なおかつ講釈をたれることができる人は、絶対におつむがいかれているにちがいない。「こんな本クズ!」とか「私の時間を返せこの糞小説!」とかいって怒る気にもなれない。こんな小説を書いたハインラインがまず信じられないし、これをわざわざ訳した人(矢野 徹氏)がいるというのも信じられないし、これを実際に販売して利益を上げている会社(早川書房)が存在することも信じられない。今までいろんな小説を読んだけど、これは自信を持って「最低」といえるだろう。オールド・ウェイブ云々と論じるよりも前に、だいたいR・A・ハインラインというD級4流作家がいつまでも「巨匠」として一般的に通用してしまっている状況が問題だ。こんな作家をいつまも持ち上げているんじゃねえよ! なにがオールタイム・ベストだ! 「センス・オブ・ワンダー」が聞いてあきれるぞ! はっきりいって私はSFが大好きだ! だから、コイツだけは絶対に許せない! ハインラインとそのファンはさっさとこの世から消えてなくなってくれという気分。(Psyc)
短編集
「<ハインライン傑作集@>失われた遺産」 ASSIGNMENT IN ETERNITY 1953
矢野 徹・田中 融二・訳 カバー・佐藤弘之 ハヤカワSF482
ハヤカワSFハインライン短編集@(あらすじ―本書背表紙より)
ジョーンは驚くべき能力を身につけた。読心能力はもとより、コンピュータ顔負けの記憶能力や演算能力、はては透視能力までも……すべて、これまでの医学理論ではただの夢物語とされていたものである。しかもジョーンは、大学教授フィルとベンとともに、その能力を理論的に開発したのだ。だが、その理論を公表しようとしたときから、三人は恐るべき運命の渦中へとまきこまれていく……! 表題作のほか、異次元へ自由に移動できるようになった教授と学生たちの奇妙な冒険を軽快に描く「時を越えて」など、アメリカSF界の巨匠ハインラインの四中短篇を収録する傑作集第一弾。
(書評:1998-04-26読了)
早川SFのハインライン短編集その@。4話収録されている。古い作品だが今読んでも素直に面白い。1話目の「深淵」が、小学生の頃読んだ、「超能力部隊」(?)とかいうストーリーだとわかり、ちょっとノスタルジックな気分になった。3話目の「失われた遺産」では、ハインラインの恐るべき「全青少年少女ボーイスカウト化大作戦」が始まる。いや、ホンマ、Mr.アメリカでんなあ。4話目の「猿は歌わない」は吐き気をもよおす内容。ハインラインの意図がちょっとわからない。読み終わった後、考えて込んでしまった。う〜む……(Psyc)
「<ハインライン傑作集A>輪廻の蛇」 THE UNPLEASANT PROFESSION OF JONATHAN HOAG 1959
矢野 徹・他訳 カバー・佐藤弘之 ハヤカワSF487
可もなく不可もなく(あらすじ―本書背表紙より)
輪廻の蛇――自分の尻尾を無限に呑みつづけるギリシャ神話の蛇のようにめぐりめぐる時間の輪。その中を駆けめぐる航時局員の活躍は……タイム・パラドックスものの傑作として名高い表題作のほか、自分の職業が何なのかわからず自らの尾行を依頼してきたホーグ氏の行動を探るうち、思いもよらぬ事件にまきこまれてしまう私立探偵夫婦の冒険譚「ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な職業」、生きているつむじ風をめぐってまき起る大騒ぎをユーモラスに描きだす「わが美しき町」、トポロジーものの代表作「歪んだ家」などアメリカSF界の巨匠の六中短篇を収録する傑作集第二弾!
(書評:1999-12-26読了)
「輪廻の蛇」は傑作といわれるだけあってなかなかの一品。しかし、可もなく不可もなくというか、短篇なのに冗長というか、正直いって退屈というか、ピリリとした刺激のない短篇集。そんな感じの中途半端な親しみやすさゆえにハインラインは世界的な大人気作家になったのかもしれない。とりあえずハインラインの短篇ものはもうこれ以上購入しないでおこう。(Psyc)