短篇の名手
ロバート・シェクリイ
Robert Sheckly
(著者紹介)
アメリカ人作家。短編の名手。1928年ニューヨーク生まれ。
「不死販売株式会社/フリージャック」 1959
(短編集) 「人間の手がまだ触れない」 1954 「地球巡礼」 1957 「残酷な方程式」 1961, 1968, 1969, 1970, 1971 |
「不死販売株式会社/フリージャック」 IMMORTARITY, Inc. 1959
福島正実訳 ハヤカワSF967 ISBN4-15-010967-2
グロテスクなユーモア(あらすじ―本書背表紙より)
時速80マイルで走っていたトマス・ブレインは、突然の自動車事故のため、頭はガラスを突き破り、胸にはハンドルが突き刺さり、背骨が折れ、苦痛を感じる暇もなくあっさりと死んだ。だが、目を覚ますと、そこは百年以上も先の未来。しかも、死から生き返らされたブレインは、幽霊やゾンビイが跳梁跋扈する超未来社会で、恐るべきハンターに追いかけられるはめに……話題のSFX映画『フリージャック』の原作ついに登場!
(書評:1999-12-21読了)
不死・来世・幽霊といったものが科学的に証明ないしは可能となった未来での物語。科学的云々という人には向かない作品だが、想像上の「もしも……」な世界での悲喜こもごもを、グロテスクなユーモアで描いているので楽しめる。やっぱりシェクリイは短篇のほうがいいと思うが、ヘンテコで奇妙な作品なので一読の価値あり。
短篇集
「人間の手がまだ触れない」 UNTOUCHED BY HUMAN HANDS 1954
稲葉明雄・他・訳 カバー・真壁暁生 ハヤカワSF643 ISBN4-15-010643-6
マイ・ベスト(解説―本書背表紙より)
ちくしょう! どこでこんな手違いが――ヘルマンがそう訝しむのも、これでもう百回目だ。食料品が補給品の中にないのに気づいたのは、すでに旅もなかば、もうステーションにはもどれないところに来てからのことだった。彼らに残された道はただひとつ、前方に現れた惑星に着陸し、食料を発見すること。だがその惑星には、人間の手がまだ触れたことのない……表題作の「人間の手がまだ触れない」ほか、時間と次元の境でふとほころびた穴に落ちた男の話など、奇想天外なアイデアと自由奔放なイメージ、鋭く奇妙なユーモアに満ち満ちた珠玉の短篇13篇を収録する傑作短篇集!
(書評:1998-07-05読了)
寺山修司が「この本を読めば、未来世界においてヒューマニズムがいかに役にたたないものになるかということがよくわかります」と絶賛した傑作短編集。ピリリと風刺がきいている。著者自身「私の書いているのは本当のSFとは違うんじゃないか、そう感じることがあった」といっていたらしいですが、こういうSFがないことにはSFを楽しめません。
「地球巡礼」 PILGRIMAGE TO EARTH 1957
宇野利秦訳 カバー・鶴田一郎 ハヤカワSF275
シェックリーの第3短編集(解説―本書背表紙より)
遠い辺境の惑星から、念願かなってあこがれの母なる地球に訪れた青年の悲しい恋の物語「地球への巡礼の旅」、大気も気候も重力もすべて地球と同じでありながら、地球人の声が地震を起こし、その汗が住民の火傷の原因となったりする奇妙な惑星の話「地球人の善と悪」、そのほか、完全無欠な防衛器を装備して、未知の惑星の探検におもむいた隊員が、その防衛器ゆえに原住民との間にまきおこす様々なトラブルを描いた「試作品」など15篇を収録。不思議な、奇想天外な、途方もなく愉快な話を書かせたらその右にでるもののない奇才ロバート・シェクリイの珠玉の短篇集!
(書評:1998-08-15読了)
短編の名手シェクリイの短編集。「人間の手がまだ触れない」のほうがクオリティーは高いと思われますが、やっぱりシェクリイは面白い。AAA(スリーエース)ものを筆頭にドタバタでバカな話が満載。もちろんバカSFだけでなく、思わずほろっとさせる人情話もこの人うまかったりする。
「残酷な方程式」 THE SAME YOU DO DOUBLED 1961, 1968, 1969, 1970, 1971
酒匂真理子訳 カバー・佐藤弘之 創元SF614-2
ネタ切れ?(解説―本書1pより)
融通のきかないロボットのため快適な探検基地から締めだしをくらい、太陽の照りつける荒地で乾からびながら、ロボットを説得して基地の中へ戻る方法を探る男の話、「残酷な方程式」。悪魔が現れて三つの願いをかなえてやるという。ただし、なにを願ったとしても、自分の最大の敵にそれが倍になってもたらされるというのだ、「倍のお返し」。宇宙学校を出たての新任副操縦士と、百戦錬磨のベテラン操縦士との葛藤を描く、「災難へのテールパイプ」などの16編を収録。SF短編の名匠シェクリーの筆が冴える。
(書評:2000-04-14読了)
面白くない。それなりのストーリーはないこともないがシェクリーにしてはお粗末な短編集。SFっぽいストーリーもあんまり収録されていない。50年代にネタを使い切ってしまって、60年代・70年代でネタ切れをおこしたのだろうか? よっぽどのシェクリー・ファンでもない限り、一読の価値はなし。