絢爛豪華な空虚
ロジャー・ゼラズニイ
Roger Zelazny
(著者紹介)
アメリカ人SF作家。1938年オハイオ州生まれ。既に逝去。
「わが名はコンラッド」 1966
「魔性の子」 1980 「地獄のハイウェイ」 1969 「光の王」 1967 |
「イタルバーに死す」 1973
「砂の中の扉」 1976 (真世界シリーズ) 「アンバーの九王子」 1970 |
「わが名はコンラッド」 THIS IMMORTAL 1966
小尾芙佐訳 カバー・角田純男 ハヤカワSF178
ヒューゴー賞受賞(あらすじ―本書背表紙より)
コンラッドと名乗るその男の過去は謎に包まれていた。だが、彼こそは数世紀にわたる異星人支配者との戦いの歴史に、いくたびか異なる名でその偉業を刻みつけてきた地球の英雄。そして今、密命を帯びた異星人の到来によって迎える危機を前に、再び不死の人コンラッドは立ちあがるが……。――陽光の下をサテュロスの群れが闊歩し、闇をぬって血をすする妖怪やテッサリアの黒獣が跳梁する世界――全面戦争後の変わり果てた地球を舞台に、絢爛と繰り広げられるSF未来叙事詩。久々の大型新人として60年代のSF界を席巻したゼラズニイのヒューゴー賞に輝く長篇第一作遂に登場!
(書評:1998-05-16読了)
前半があまりにも説明不十分でダラダラとした展開なので、登場人物、その目的、世界観などを把握したのは半分地点を過ぎてからだった。ゼラズニイの描く世界にドップリはまっていないとけっこう読みにくい。主人公であるコンラッドの影が薄く、脇役のハッサンのほうが活躍してカッコよかったりする。
「魔性の子」 CHANGELING 1980
池 央耿訳 カバー・米田仁士 創元SF686-1 ISBN4-488-68601-X
駄作(あらすじ―本書1pより)
巨大な魔力を持ち、長年に渡ってロンドヴァルに君臨した魔王デッドが不意討にたおれた。魔王の血を継ぐただひとりの赤児は、すんでのところで命を助けられ、老妖術使いモーの手で、天空を隔てた別の世界へ流されることになった。モーはデットの赤児のかわりに同じ年頃の赤児をその世界から連れ戻った。遠い昔に魔法が捨て去られ、すでに過去の伝説と化したその世界の名は、地球といった…… 取り替え子のふたりが宿命の対決に火花を散らす! 神話、冒険SFの大家ロジャー・ゼラズニイの面目躍如たる大作!
(書評:1998-05-24読了)
かなりストーリーの展開がスローなのでかったるい。やたらと長いRPGゲームをしているような気分になった。魔法VS.科学といったストーリーだが、科学側の主人公であるマーク・マラクソンがちょっと気の毒。ところで、この本は文庫本であるのにかかわらず5ページに1回はくらい挿絵があるという嬉しい文庫。でも挿絵が透けて読みにくかったりする。
「地獄のハイウェイ」 DAMNATION ALLEY 1969
浅倉久志訳 カバー・岩淵慶造 ハヤカワSF64
カリフォルニアからボストンまで(あらすじ―本書1pより)
愛車ハーレーを駆ってカリフォルニア一帯に略奪グループ《ヘルス・エンジェルス》の名を馳せたヘル・タナーは、その抜群の運転能力をみこまれて、カリフォルニア政府からボストンへ向けペスト血清輸送の任務を託される。核ミサイル攻撃によって世界の大半が失われ広大なアメリカ大陸にたった二つ残った国の一つが、今、ペストで死滅しようとしているのだ。だが、大陸横断を試みる彼の行手に立ちはだかるのは<呪いの横丁>――放射能に汚染され言語に絶する危険にみちみちた、まさに地獄そのものの地帯だった! 67年度ヒューゴー賞ノヴェラ部門にノミネートされた米国派ニュー・ウェーブの野心作!
(書評:1998-06-21読了)
カリフォルニアからボストンに行くという単純明快なストーリー。今となっては少々古くさい感じもしますが、このスピード出しまくりどつきまくりの雰囲気はなかなか爽快。やさぐれた主人公のやるせない矛盾した心情描写がもっとあったらけっこうな作品になったかもしれない。う〜む、あと一歩。
「光の王」 LORD OF LIGHT 1967
深町眞理子訳 カバー・萩尾望都 ハヤカワSF625 ISBN4-15-010625-8
ヒューゴー賞受賞(あらすじ―本書背表紙より)
さすらいの果てに人類にとって最適の惑星を発見した<第一次世代植民者>。彼らはその地にインド神話さながらの世界を創造し、厳格なカースト制度で束縛された民衆の上に神々として君臨するにいたった。やがて彼らのなかに、民衆に味方し、よりよき世界の発展を願う者があらわれた。マハーサマートマン、シッタルダ、如来として知られるその男は、敢然と神々に立ち向かうが……。ヒューゴー賞受賞に輝く傑作宇宙叙事詩!
(書評:1998-07-26読了)
ゼラズニイの最高傑作との呼び声高い作品。「我が名はコンラッド」でも思いましたが、導入部がかなり不親切なので世界像を把握するのにけっこう時間がかかった。第2章からいきなり過去に飛んじゃうのでめんくらったやんけ! それはともかく、アイデアの宝庫といった内容でサイバーパンクを先取りしているところもあってすごい。おまけに、アイデアに溺れて収拾がつかなくなることはなくきちんと終わるのがいい。登場人物も全然おちゃらけていないし、大まじめにバカをしているのではなくて、真剣に作品を作り上げた結果がバカだったという感じ。宗教を真剣に考えてしまう人にお勧めか? サービス精神旺盛な究極のエンターテイメントSF。お勧め。
「イタルバーに死す」 TO DIE IN ITALBAR 1973
冬川 亘訳 カバー・渡部 隆 ハヤカワSF480 ISBN4-15-010480-8
駄作?(あらすじ―本書背表紙より)
マンハッタン宇宙港の最も高い塔の中に、彼は坐っていた、ただひとり帝国に対峙して。窓の外には、かつてニューヨーク・シティであったものの残骸が、放射性の焔に照らしだされ、燃えさかっていた。合同連盟との戦いに破れ、廃墟と化した地球の姿でもあった。もと地球艦隊司令官マラカー・マイルズは、強大な銀河の中心勢力、合同連盟にいままで徒手空拳で立ちむかってきた。だがいま、恐るべき武器の存在を示す情報を入手したのだ! これさえ手に入れば……ヒューゴー賞受賞作家が、そのたぐいまれな想像力、流麗洒脱な筆致を用いて、美事に綴りあげた傑作宇宙叙事詩!
(書評:1998-09-04読了)
ゼラズニイのストーリー・テリングに体質があわないのか、私にとってはどうも食いつきにくいストーリーが多い。「我が名はコンラッド」とか「光の王」を読んだときもそうだった。この話も始まったばっかりのところで場面がくるくる変わりながら新しい登場人物がじゃんじゃんでてくるので混乱した。でも、この本はかなり面白かった。ゼラズニイの小説はこれをあわせて現在5冊読んだが、一番楽しみながら読めたと思う。お勧めします。
「砂の中の扉」 DOORWAYS IN THE SAND 1976
黒丸 尚訳 カバー・中西信行 ハヤカワSF443青年よ大志を抱け
(あらすじ―本書背表紙より)
午下がりの蒼い淀みの中、雲の塊を見つめていると、そこに一瞬の空中文字――それは、嗅げているか死を、と読めた。こいつがそもそもの発端というわけ。以来、キャンパスで悠々自適の毎日を送っていたぼくロバート・キャシディは、地球が銀河連盟に加盟した際に、異星人から贈られた“スター=ストーン”をめぐる大騒動にまきこまれてしまった。異星の宝物の行方を追うギャング団に、地球語を流暢に操るカンガルーの姿をした異星人、あげくのはてにぼくは、異星人のもう一つの贈り物レニウス機械によって……俊英ゼラズニイが軽快な筆致でスリリングに描く傑作SF。(書評:1999-08-01読了)
著者ゼラズニイお気に入りの一冊。この作品もフラッシュバックが多用されていて相変らずゼラズニイは読みにくいといった印象。主人公がなかなかの腕白者でそれはそれでいいんだけれど、彼が素直に従っておけば問題が迅速に解決しているので、真面目な読者は頭にくるかもしれない。「(青年だけど)少年よ大志を抱け」といった感じのポジティブな終わり方をするので読後はさわやか。
真世界シリーズ
「<真世界シリーズ@>アンバーの九王子」 NINE PRINCES IN AMBER 1970
岡部宏之訳 ハヤカワSF316 ISBN4-15-010316-X
真世界シリーズ@(あらすじ―本書1pより)
アンバー――それは唯一の真の世界。地球を含むほかのパラレル・ワールドはすべてその影にすぎない。このアンバーの空位となった玉座を狙い、九人の王子たちの間に骨肉の争いが起こった。権謀術数の嵐はアンバーだけでなく他の世界をも巻き込んでいく。その動乱のさなか、王子コーウィンは敵の術策に陥り記憶を消された後、影の世界“地球”へと追放された。だが、交通事故を契機に少しずつ記憶の戻ってきたコーウィンは、故郷アンバーへと向かった。海底の迷宮、竜、異形の影の軍勢――華麗なイメージと流麗な筆致で幻想の真世界アンバーを描くシリーズ第1弾!
(書評:1998-09-26読了)
ゲッ! 「九王子」ということは、重要なキャラクターが九人以上続々と出てくるわけだ、と最初ビビったが、けっこう内容は親切設計。ウダウダと難しいことを考える暇なくジャンジャン読み進んでウハウハ楽しめます。なにか策謀をめぐらしているようでいて、結局は出たとこ勝負なキャラクター達がマヌケで笑える。続きはぜひ読まねば。