コンプレックス・オヤジ
小松左京
Sakyou Komatsu

(著者紹介―ハルキ文庫「エスパイ」裏表紙より)
 1931年、大阪市生まれ。京都大学文学部卒。61年『地には平和を』でSFコンテスト選外努力賞。64年に処女長編『日本アパッチ族』を発表。73年『日本沈没』で日本推理作家協会賞、85年『首都消失』で日本SF大賞を受賞。他に『復活の日』『エスパイ』『継ぐのは誰か?』など著書多数。

「果てしなき流れの果てに」 1966

「エスパイ」 1965

「復活の日」 1964

(短篇集)

「ゴルディアスの結び目」 1977

 


「果てしなき流れの果に」 1966
 ハヤカワJA1 カバー・生瀬範義
 
 勝手にしやがれ

(あらすじ)
 千数百年前の古墳から発掘されたのは奇妙な砂時計だった――細いくびれを通して落ちる砂は増えも減りもせず、しかもその謎を解こうとした関係者達は次々と奇禍にあい姿を消していった! 厖大な時間の経過に橋かけて展開される壮大な本格SF。

(書評:1998-10-01読了)
 日本SF界不滅のオールタイム・ベスト。読み進めば進むほどストーリーがバラバラに壊れていく。もう勝手にしやがれという投げやりな気分になって、私は最後まで真面目に相手していられなかった。はまる人にとっては存分にはまれる作品なのだろう。私はお勧めしない。(Psyc)

「エスパイ」 1965
 ハルキ文庫こ1-4 ISBN4-89456-387-8
 装画・高木祐一 装填・岩崎美紀

コンプレックス・オヤジ

(あらすじ―本書背表紙より)
 “エスパイ”それは人の心を読み、物体を透視し、意志の力で物体を動かす超能力を持つ者たちの諜報集団である。ソ連首相暗殺計画の阻止を命じられたエスパイの一員・田村良夫は早速行動に移るが、彼の前に現れた敵も超能力者の集団だった! ニューヨーク、バルセロナ、イスタンブール、ウィーン、遂には宇宙へと繰り広げられる国際的陰謀の首謀者ミスター“S”の正体とは果たして何者なのか?

(書評:1998-10-16読了)
 主人公の青年田村が若いんだけどどうかんがえてもセクハラオヤジ状態。登場する外国人女性たちもただひたすらオヤジ的欲望を直撃する。内容は外国人コンプレックス(「劣等感」という意味だけではない)と差別的偏見に満ち溢れたアナクロ小説といえるだろう。東西冷戦構造は既に崩壊しているので話の筋はパラレルワールドとなってしまっている。私の中ではかなりの奇書の部類。ところで、とある漫画家があとがきでくだらん自慰行為に耽っているので殺してやりたくなった。(Psyc)

「復活の日」 1964
 ハヤカワJA33 カバー・生瀬範義

冗長な薀蓄

(書評:2000-05-20読了)
 宇宙からのウイルスによって人類が滅亡する話。やたらと内容が濃いので読むのがうっとおしい。でも、ストーリー自体は単純そのもの。クドクドと続く薀蓄を除けば短篇で十分である。まったくなんなんだこの冗長さは? この手の小説はやっぱりバラードだねえと変に納得。また、コンプレックス・セクハラ・オヤジらしく細かなところで勘弁してくれという描写・展開が出てくる。はっきりいって小松左京は好きじゃない。たぶんもう二度と小松左京の作品は読まないだろう。クズだよこんな作家。(Psyc)

短篇集

「ゴルディアスの結び目」 1977
 角川文庫4590 カバー・生瀬範義

志は高く、短小、包茎、勃起不全

(あらすじ―本書裏表紙より)
 岩だらけの禿山の頂上に建てられているアフドゥーム病院に、奇怪な“憑きもの”を宿した娘が収容されていた。神々しい可憐な顔だちに反して、鋭い牙や頭頂部に円錐形の突起が見える。今は、異臭がたちこめた部屋で安らかに眠っているが、鉄の帯でベッドに縛りつけられている。
 <何故、この娘は妖しく変貌したのか>
 精神分析医(アナライザー)によって、“憑きもの”の謎、原因の追求が始められた。だが…。
 この宇宙は、人類の予測どおりに滅びるだろうか。人類の果てしない“旅”をテーマにした傑作本格SF!

(書評:2000-09-08読了)
 金輪際小松左京の作品を読むことはないと思っていたが、シカゴの日本人向けスーパーマーケットのガラクタ市で10セントという破格値で売られていたので購入する。表題作は日本の短篇SFのオールタイム・ベスト。短篇集でありながら濃厚でハード性が高いというか、相変わらず哲学的・観念的な叙述がダラダラと垂れ流される。人によっては、壮大な大宇宙が広がって、頭がクラクラするのだろう。私にとっては、そんなにブリブリときばられてもプ〜ンとにおうだけだぜ、といった感じ。とはいえ、卓越したアイデアのストーリーが収録されていることは間違いない。文学を超越する文学たるSFの限界に挑戦してやる、という作者の意気込みがヒシヒシと伝わってくる。小松左京の志はとてつもなく高かったといえるだろう。しかし、小松左京には「知識」があっても、こういうことをいってはなんだが、ストーリー・テラーとしての「才能」がないと私は感じる。情報量が多いだけで、エンターテイメントとして全然つまらないのだ。でも、ケンカになるので、小松左京のファンの前では「小松左京の本は難しすぎて私にはわかんないですよ」とかいってヘラヘラごまかすことにしよう。口が裂けても「小松左京って実は短小、包茎、勃起不全なんじゃないの?」とかいってはいけない。(Psyc)

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