日本SF界の第一人者
矢野 徹
Tetsu Yano

(著者紹介)
 日本人SF作家・翻訳家。日本SF界の第一人者。

「カムイの剣1」 1984

「カムイの剣2」 1984

「地球0年」 1968
 

「カムイの剣1・2」 1984
 角川文庫5610 ISBN4-04-140318-9/角川文庫5611 ISBN4-04-140319-9
 カバー・村野守美

忍術冒険活劇

(あらすじ@―本書裏表紙より)
 海賊の黄金時代、彼らの覇者として七つの海を暴れまくったキャプテン・キッド。彼が生涯をかけて世界各国に残した莫大な秘宝の数々は、今もって解明されていない――。
 時は幕末、西洋文明の嵐が日本を襲わんとする時、下北半島にアイヌ人の血を引く赤ん坊が流れ着いた。だが、この子の身につけていた剣こそがキャプテン・キッドの秘宝の謎を解く鍵であり、彼を波乱の渦の中へ落し込むのだ。
 幕末・維新の時代の子、忍者次郎の半生を壮大なスケールで描くエンターテイメントの最高傑作。

(あらすじA―本書裏表紙より)
 蝦夷の各地に、たったひとりで風のように現れて弱きを助け、風のように去っていく男。腰にさした日月螺鈿の短刀は、正義のためにのみ振るわれる……。アイヌの人たちが噂する男、それが、忍者次郎であった。
 が、一方次郎は、育ての母と姉を殺された復讐心に燃えながら、剣に仕込まれた謎を追うべく運命づけられていた。そしてその謎とは、あの大海賊キャプテン・キッドの財宝の所在なのであった!
 日本そしてアメリカへ……幕末・維新の時代の子、忍者次郎の半生を壮大なスケールで描く、最高のエンターテイメント。

(書評:2000-04-24読了)
 どこにだしても恥ずかしくない忍術冒険活劇。前半はかなり楽しく読める。しかし、こういうサクセス・ストーリーをからめた冒険小説って、主人公が一旦成功してしまった時点で話が突然面白くなくなってしまうことがよくある。この小説でも全くそのとおりで、主人公がアメリカから戻ってきてからはかなり緊張感が下がってしまう。おまけに、私は明治維新というものにさっぱりロマンを感じない人間なので、はっきりいってラスト付近の展開にはちょっと興ざめしてしまった。理由はどうであれ、権力と政治は人を変えてしまうねえ、といった感じ。(Psyc)

「地球0年」 1968
 角川文庫4089 カバー・上原 徹

アメリカの横暴と死の商人は変わらず

(あらすじ―本書裏表紙より)
 そのとき上空に異様な光がきらめき、みるみる巨大な紫色の火球へと変わってキノコ雲が姿を現した。米中ソの間で第三次世界大戦が起きたのだ。
 結果は悲惨だった。三大国は、わずか四十分で壊滅し、文明国としての機能を停止、混乱の地獄と化してしまた。が、幸いにも被害が比較的少なかった日本には、治安維持と被災者救済のために、自衛隊のカルフォルニア派兵が求められた。しかし、八千人の自衛隊精鋭部隊がアメリカに上陸した時、今度は人種同士の争いが起きた…。
 第三次世界大戦の恐怖と極限状態の人類の姿を描く政治SFの傑作!

(書評:2000-09-06読了)
 古い。小松左京のSFを読んだ時のような古くささを感じる。とはいえ、その当時の時代背景、そして敗戦世代の日本人男性の精神構造を理解するには適切な本だろう。世界情勢も日本も日本人もずいぶん変わったものだ。しかし、大国(特にアメリカ)の横暴と死の商人の影響力は変わっていないはず。ところで、「核戦争後の世界」というようなネタは、ホラ話ならともかく、ハードなSFとしてはもはや使えないのではないか。だって、チェルノブイリの事故であれだけの被害が現在も出ているんだし、本当に起こったら苦しみもだえながら世界中で全滅するだけだと思う。被爆国の人間なのにかかわらずこの作者の描く描写はとにかく甘すぎる。おまけに、これだけアメリカにブーたれながら、ハインラインが一番好きというんだからよくわからん人だ。まさしく、敗戦世代である。そして、日本はそんな精神的な矛盾を抱えながら敗戦後大きくなったのだね。こういう世代の輩に「今どきの若い奴らは……」といわれたら、「そういうアンタらは、俺達の世代にツケをまわしやがって……」といいかえしてやろう。くだらねえ世の中にしてくれたもんだぜ、ケッ…… (Psyc)

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