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下見
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初めてこのSUNY Potsdamという大学に来た時、余り状況は良いとは言えませんでした。
当時マンハッタンに居たので、バスに揺られて約10時間という距離で「Potsdamへの下見」というのを敢行してしまったのです。今思うと何とも無いのですが、おそらく「慣れた」のでしょう。
夕方の6時頃にバス停に到着し、右も左も分からないまま、荷物を持って歩き始めると雨が振って来ました。
一応学校側から届いたパンフレットや書類にはキャンパスツアーの予約日程が書いてあり、大学側には言ってあるものの迎えも何もないので、とにかく歩くしか無い。しかしどこがSUNY Potsdamなのか分からない。分かるのは「取りあえず自分はPotsdamにいる」という事と「雨が振っている」という事でした。仕方ないのでまずはバスの中から見た、大通りであろうと思われる場所に出て、大学の場所を人に訪ねようと思い歩き始めました。するとバスで一緒だった人が「SUNYいくんなら俺の親が迎えにくるから一緒に行けば良いよ」といってくれたのでバス停の前で雨宿りをしていると、ものの1分もしないうちに彼の迎えが来ました。その車に乗せてもらい軽く話をし、パンフレットに書いてあった事を思い出しました。「Potsdamの人は良い人だ」後日色々あるのですが当時はその言葉を信じました。
肝心のPotsdamに到着し、彼等にお礼を述べて自分の泊まる場所であるSisson Hallという建物を目指しました。現在でこそ慣れた物の、初めて訪れる人にこの環境は多少酷かもしれません。
自分が泊まる予定の部屋には「電気スタンド一つ、薄い毛布一つ。シーツと枕だけ」でした。
手紙を書くにも不十分な明かり、何故か3つも並べられたベッド。今でこそ自分のデスクランプやPowerBookなどを手元にそろえているのである程度の快適さを保ってはいますが、当時は筆記用具、小さなメモ帳、システム手帳、CD、着替えとドラムスティックだけだったのでCD聞きながらリズムの練習をしていました。
到着し、部屋につき、当然空腹感がやってきました。しかし外は本格的に雨が振って来てコートも何ももっていないTシャツだけで来た自分としては建物に居る他ありませんでした。
そこでなんとか空腹をみたそうと試みた結果、自動販売機を見つけ、ポケットから小銭を集め、お菓子を食べようと自動販売機に向かい手持ちを掻き集めた小銭でお菓子をひと袋買い、食べました。しかし、ひと袋で足りる訳も無く、もうひと袋買おうかと思い手持ちを見たところ、ある事に気付きました。
「$5札しかない。」衝撃でした。$1しか使えないという限られた環境の中、小銭を掻き集めても75cしか無く、これではソーダが一つ買えるかおかしをひと袋買ってしまえば終わってしまう。外は雨。そこで「人間、食べなくても大丈夫だが水分は必要だ」と思いソーダを選びました。今考えると一晩飲み食いしなくても人間はそこまでヤワでは無いですが。人間、何もする事が無くても何か見つける物で、食べ終わり、小さなメモ帳とシステム手帳に明日するべき事と質問を確認し、書き記しました。質問の内容というのは「費用はどれくらい係るか」という事や「大学特有のシステム」、「寮とその周りの情報」などといった極めて一般的な物だったと思います。
その晩はシステム手帳を閉じ、時計の針が11時なのを確認してそのまま寝てしまいました。
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