イギリスで話題の医療訴訟がおこなわれています。
ある老人が、大腿骨の関節を痛めました。
まず、一般医へ受診し、紹介状を持ち、数週間待って大病院を受診します。レントゲンを撮るのにまた
待たされ、判断を仰ぐのにもまた待たされます。とうとう、手術が必要と判断されました。2階に上がるのにも不便、近所に買い物に行くのにもひどい痛みです。手術は一年以上先の予約です。
整形外科でも、もちろん癌(正確には肉腫)もありますが、きわめて少なく、整形の手術は待てるものも多いのは事実です。
イギリスでは、手術の待ち時間が異常に長いのは有名です。
以前から指摘してきたように、イギリスの医療は「民活路線」「営利企業の参入」「公的保険から私的保険」「福祉切り捨て」「経済万能主義」で、ガタガタになっています。
これらを、日本の官僚も追い求め、それをマスコミが追従し「遅れている日本医療」を大々的に非難してきたものです。
日本なら 待たされても2月くらいでしょう。日本ほど低費用で十分な治療が受けられる先進国はありません。 さて、この老人は「とても待っていられない」と主張しています。当然のことです。
「鉄道でフランスに渡り、手術を受ける。フランスでの費用とまでは言わない。せめてイギリスで保険から支払われる額だけでも払え。」と訴訟を起こしたのです。
「福祉切り捨て・経済最優先」とはこういう帰結なのです。
これが通れば画期的なことなのです。突飛に聞こえた人は時代遅れです。ユーロ経済統合で、EU内での医療は他国で受けても支払われるのは当然の時代なのです。
今、イギリスのインターネットを検索して見ると、関節鏡の検査だけでも最高の待ち時間はなんと27月と2年以上待たないと受けられない名医さえいるくらいですから、十分ありえる話です。
官僚の理想とする制度はこんな世界です。
先進国の中で最低の国家医療費といわれているのはイギリスです。順位がわずか一番違うだけの国は実は日本なのですが、待ち時間は最低クラスなのです。
ところで、ロンドンで虫垂炎(いわゆる盲腸)の手術を受けるといくらするかご存知でしょうか。海外旅行保険の会社が詳細なデータを持っているのです。
ロンドンでは114万円で4位です。旅行保険にはいりましょう。ちなみに一位はニューヨークで243万円。2位ロスアンゼルスは194万円です。ついで3位は香港で153万円。 ソウルは10位51万円。ホーチミン市は17位33万円です。
さて、日本はどのくらいと思われるでしょうか?
なんと、16位38万円です。日本の医師の技術料がいかに馬鹿にされているかの見本なのです。
ホーチミン市の物価水準は3分の一以下でしょうから、ロンドンが飛びぬけているわけではないのです。
患者取り違え事件が起これば、ナース任せがけしからんと医者を非難し、舌の根の乾かぬうちに、医師がナースを信頼しないのは医師がけしからんと非難する天声人語のような連中が、日本の医療は最低のように報道してきたわけですが、実態は逆で、日本ほど低予算で効率的医療を提供できる先進国はほとんどないのです。
英国人が羨ましがるフランス医療には、日本とよく似ている点があります。フランスはヨーロッパでもっとも薬剤が多く消費される国なのです。日本も薬剤が多いとマスコミは「非難」しますが、ヨーロッパで一番寿命の長いのはフランスで女82歳です。、世界で一番寿命の長いのが日本の女84歳です。
マスコミの論調に従えば、西洋薬が多いと、薬害で寿命が縮みそうなものですが、事実は逆です。日本の医師がしっかりしているからです。
薬を賢く利用し医師の指示を守れば、寿命は延びるものなのです。
2003.1.1
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