日本医師会が「数字の根拠を示せ」と抗議すると,答えられず誤報と認めましたが,訂正記事は一切載せていません。朝日がくりかえす,根拠のない不当な医師攻撃のひとつです。
1997年11月5日,民主党 中桐 伸五氏が衆議院決算委員会でこのことを質問されました。厚生省 高木保険局長の答弁で「実質老人医療費全額に相当する額であり,このような事があるとは私共も思ってはいない。」と答えられています。
保険医療費総額は27兆円ですので, 医療費総額を考えても,または医療機関総数で9兆円を割って見ても,このような巨額な費用が見逃されるわけはなく,朝日の見識の愚かさにはあきれるばかりです。
もちろん,この答弁も朝日新聞が載せるわけもありません。
関係団体の「情報の根拠を示して欲しい。」との要請に,「情報源の守秘義務」との回答です。ここで問われているのは,朝日の人権感覚であります。権力者に対して,秘密を公共の為に漏らした場合,権力者の圧力から情報提供源を守るのが「守秘義務」です。われわれ医師は情報の提供者としては圧倒的に弱者です。今回の誤報でも,権力者側からの情報操作のためと考えられる点があります。国民からの負担増の不満を医師側に転嫁するための情報操作と思われるタイムリーな点があります。立場の弱いものに抗弁の機会を奪い取っておき,権力者の情報操作の追及を困難にしておくための「情報源の守秘義務」をかざすとは,権力者の情報操作に安易にのった,愚かな御用新聞なのでしょうか。情報戦線で弱者を攻撃し,圧倒的な権力側を守って下さる新聞社の「情報源の守秘義務」とは,天地が逆転した発想です。権力者の為に守秘義務を使うとは,新聞社の人権感覚を疑います。権力者や新聞社を守るために守秘義務を使うとは,報道の自殺行為としか言えません。日本のマスコミの程度はこんなものでしょうか。国会答弁でも,厚生省の責任者が,「このような粗雑な論議が,責任ある関係者から出たとすれば,問題である。」との答弁がでています。権力者側の情報は,しっかり裏付けをとって報道しないと,大本営発表となるわけです。関係役人の言ったことをそのまま載せ,過ちを守るために守秘義務を使うなら,朝日は二重三重に間違いを犯したということです。
同じ様な記事は,共同通信社もだしており,これは,ルポライター岩上安身なる人物の,いいかげんな記事の引用です。岩波の「世界」にも東京経済大学教授桜井哲男なる人物が同じような記事を出しています。抗議に,裏付けをとっていなかったとか,説明不足であったなど,朝日と同じ様な対応です。
まったくの余談ですが,パチンコ産業は保険医療費全体より多い,30兆円産業です。
朝日は昭和52年2月にも,「医師の脱税9割」などというばかげた記事を載せたこともあります。このときは,謝罪記事を載せました。小さな記事での医師攻撃はあとをたちません。
当院でも,健康保険以外の収入などまずなく,自営業とはいえ収入はサラリーマン以上に透明です。健康保険による支払は公的機関を通じて行われており,税務署にもその資料が送付されているので,所得把握率は99.8%です。残りの0.2%は,保健所での講演や予防注射の謝礼,健康診断などの謝礼ですが,これも源泉徴収が行われており,税務署が把握しているものです。医師は聖人君主ではありませんので,ごく一部,脱税などで記事がでますが,多くの医師は「脱税など,どうやったら可能なのか?」という感想しか持ちえません。しかし,マスコミは先入観念で判断し,でたらめな中傷記事が多いのは困ったことです。