浴室での事故が増加しています。老人の死亡事故も多いですが,特に多いのは子供の重篤な火傷です。
まず,危険なのは幼児期の水死です。幼児は頭が重いのでのぞきこんだときに頭から浴槽に転落します。わずか5cmの水位でも死亡します。あわてているのと,浴槽はつるつるすべるので起き上がれません。風呂の水は,少なくとも子供が小さいうちは,すぐに抜いてためないようにして下さい。安全のためには,少々のけちはしないことです。安全にはコストと手間がかかり両立はしません。また,O−157を考えるなら,一晩置いた水は非常に危険です。150cm以上の高さに簡単な鍵をつける事も考えられますが,面倒なものです。
洗濯機にも落ちます。子供は洗濯機に近づかせないようしなければいけません。洗濯機の渦を見るのは,子供にとっては面白いことです。付近に足場となる台や椅子を置いてはいけません。
次に多いのはやけどです。火傷で重傷で救命センターに運ばれる子供の30〜40%は風呂場が原因です。普通に沸かした風呂でも,表面のお湯は60度以上になっており,そのまま飛び込んでも火傷を広範囲に起こします。おとなでも,あわてたり,酒を飲んで表面の熱い湯をかかり湯に使ってしまい, 広い火傷をおうことが結構あります。恥ずかしいので,みんな隠すから少ないように見えるだけです。
ほかに 火傷や水死をする原因は,小さい子なら,風呂のふたに乗って遊んでいて転落する事も多いです。
小学生4年くらいまでと,老人などで多いのは,風呂が沸いたので,消そうとして浴槽の反対側にあるスイッチをさわるときにバランスをくずして浴槽内に倒れることです。日本のメーカーは本当に安全性の配慮が足りないと思います。風呂のスイッチを浴槽の手前に設置することくらい容易なことです。台所からのリモコンがあるくらいなのに,いまだに浴槽の反対側が大部分です。大人が「OOちゃん,忙しいから,ちょっと風呂の火を消してくれる?」と頼んだときから,悲劇が始まることがあります。子供に頼んではいけません。
老人では,脳卒中の予防のため脱衣所の暖房を考えます。脱ぐ前に,風呂の蓋を開けておき,湯気で浴室をあたためておきます。浴槽の中で軽い脳卒中をおこし,たまたま,沸かしているときだったために,生きているまま,釡ゆで状態になって死んだと思われる例があります。また,おぼれる例もあります。他の場所なら軽くて後遺症も残らない位でも,場所が風呂場だと危険です。
転倒にも気をつけましょう。死なないまでも,骨折で寝たきりになることもあります。浴槽のなかに,滑り止めの粘着テープを貼ったり,滑り止めのゴムマットをひきます。手すりはあったほうが安全です。非常連絡のベルも考えます。タイルの風呂はなかなか部屋全体が暖まりにくく,滑りやすいので,お勧めできません。最近のユニットバスはかなりすすんでいて,浴室も早く全体が暖まるので勧めます。これなら2階でも設置でき,もしものときに,世話をしやすいことも利点です。
子供の危険を回避するのは簡単です。まず,鍵が考えられます。火傷に関してもっとも良いのは,沸かさないことです。風呂のお湯は,蛇口から,湯沸かし機で少し熱めのお湯を給湯して入れます。うっかりしていても,あふれるだけで,忘れていてお湯が沸騰状態になることもありません。火事の危険もありません。風呂釜は大人が入りながら,追い炊きだけ使います。これなら火傷をするほどの熱いお湯ではなくなるので,安全です。
もっとも安全な方法は,少々費用はかかりますが,全自動風呂にすることです。給湯で湯をはり,極端な熱い湯がなくなるので安全です。消しに行く必要もなくなります。先ほどの老人の釡ゆでの例もこれなら防げます。安全にはコストがかかります。
24時間風呂はO−157やレジオネラのため推薦できません。
ほかに,火傷の原因として危険なのは,ポットのお湯,炊きたてのご飯などです。