風邪のときに風呂に入っていよいかどうかと,よくきかれます。
医師になりたてのころ,有名なアメリカの小児科の教科書(Nelson)に 『高熱の子供は水風呂にいれて,体温をさげる。』というような事が書いてあり,その考えの違いに感心した事があります。 調べてみると,学問的には,風呂がかぜに悪いという根拠はどこにもありません。
医学雑誌を読んだうろ覚えの記憶ですが,イギリスには国立のカゼ研究所があるそうです。ボランティアにお金を払って,いろいろな人体実験をおこなっているそうです。うろおぼえの,その結果の一部です。
1. ロンドンの冬の冷たい雨に3時間ぬれたまま立たせる。
2. 冷たい風呂に2〜3時間つける。
3. 栄養を取り暖かくして,鼻の粘膜にウイルスをつける。
このうち,風邪になったのは3だけでした。つまり,ウイルスがないとかぜにはなりません。寒いから風邪になったというのは迷信です。
冬に風邪が多いのは,インフルエンザウイルスが冷たい乾燥した空気のなかで長く生きているからです。寒いということは,寒いときに無理をして体力を消耗したということなのでしょう。
風邪と思っていたのが,重い脳炎の初期症状や,肺炎の初期ということもありますので,無理は禁物です。風呂に入ると,脈ははやくなり,エネルギーも使うので,病気によいはずはありません。100m全力疾走位の運動だという人もいます。2〜3日風呂に入らないといって死んだ人はいません。垢で死んだ人はいません。以上のことより,患者さんから『風呂にはいってよいか?』ときかれたら,『やめといたほうがいいですね。』としか,返答のしようがありませんが,根拠はありません。風邪のときは安静が一番なのは忘れないでください。
以上の文は誤解をうけるといけないので,引用を禁止します。 河合 尚樹
2)高熱で脳に障害がのこるか
脳に障害のでるような重い脳炎のようなときに,高熱がでます。しかし,高熱の出る病気がすべて脳炎であるはずはありません。逆は真ならず。
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