環境ホルモン,ダイオキシン問題はマスコミで多く取り上げられています。先日もJNN系列ニュース23という番組で東大客員教授 立花 隆氏がくわえたばこで「環境ホルモンほど重要な問題はない。人類の未来がかかっている。」 と悲壮な顔で力説されていました。そうそう,おもわず,声をたてて笑ってしまいました。マスコミの愚かさをこれほど明確に表わしたものはないのです。
日本医師会雑誌の1999年3月1日号の特集に詳しいのですが,環境ホルモンやダイオキシンはたいした問題にはなりません。世界中どこを探しても,明確に人類が(事故以外の)ダイオキシンや環境ホルモンの影響で死んだという証拠はありません。奇形児の出産も報告されていません。精子が減少したという報告も,納得できるような証拠はでてきません。
哺乳類への影響さえ,はっきりしません。環境ホルモン類似物質全体でも,魚の雌化,ワニの雌化位です。これ自体は重要な問題です。すぐに,規制すべきです。しかし,人体への確率的影響もはっきりしません。確率的影響とは,ダイオキシンで何人くらい癌になるだろうとか,奇形児が何人くらい生まれるであろうとかの評価です。それさえありません。
それだけなら,立花氏を笑うのは失礼というものです。しかし,謝罪するつもりはありません。立花氏は頭がよい。マスコミのお手本のような緻密なデータ収集もする人です。しかし,それでも笑わずにはいられません。一部の専門家の意見をまるのみし,素人を恫喝するように,深刻ぶってりきんでみせる。自分達だけが頭がよく,大衆を見下しているような態度。しかし,裏付けのできるデータは確保していない。マスコミの象徴だからです。
では,最初に書いたどの部分が笑いものになるのでしょうか。それは,たばこをくゆらしながらという部分です。たばこの癌への影響は強く,だいたい35%といわれています。日本で一年間に約30万人が癌で死にますから,たばこで一年間だけで10万人位死んでいるということです。さらに,心筋梗塞,脳血管障害,肺気腫でも死にますから,一年間で20万人くらいはたばこで死ぬでしょう。奇形児の問題はどうでしょうか。たばこは精子の形成に影響を与え,奇形児が増えると報告されています。女性のみなさん,結婚相手はたばこを吸わないほうがよいのです。さらに,妊娠中の喫煙により,脳への影響がみられ,死産も増えます。たばこの間接的影響もおおきく,周りの人間の癌や,胎児へも影響します。喫煙者の配偶者が4〜5倍癌になりやすいのは証明済みです。たばこにより保健財政や税金もくいつぶされています。
映像からのはっきりしたメッセージというものがあります。彼はたばこはそれほど害がなく,環境ホルモンは人類の未来がかかるぐらい重要だと主張しているのです。くわえたばこの評論家を長々と放映するなど,テレビ局の見識を疑います。
立花氏の行っている行為は,いわば,自分でサリンをまきちらしながら,ほとんど無害の残留農薬がけしからんといっているようなものです。環境ホルモンやダイオキシンでの明確な死亡は報告されていません。いったい世界で何人ダイオキシンで死んで,何人たばこで死んだか比べることもしない。本当に人類の未来がかかっているのは,たばこの害の方です。ニュース番組のスポンサーにたばこ会社が入っているのもうさんくさいものです。
マスコミは権威に弱く,東大の名前に眩惑されたのも,この件でよくあらわれています。大学の総意ではないでしょうが,こんなのが客員教授,東大も落ちたものです。
赤ワインの時もそうですが,マスコミは自分達が好きなたばこや酒にはきわめて寛容なのを忘れてはいけません。また,権威筋,政府発表,専門学者の意見はすぐに飛びつきます。自分で取材したり,考えることはほとんどできないからです。私は,立花氏が癌の専門家とは思っていませんが。
政治においても,健康問題においても,ジャーナリストを気取るなら,この状況が全体のなかでどの程度重要で,われわれの生活にどの様に関連しているかを説明すべきでしょう。目の前の現象を多少掘り下げても,それに振り回され全体を見失い,人類の将来を憂いて見せるなど愚の骨頂です。木を見て,森を見ず。このての報道が氾濫しています。もちろんダイオキシンや環境ホルモンは規制すべきです。しかし,それ以上,20万倍たばこの害を報道すべきです。たばこ会社がスポンサーのニュース番組など消滅すべきものです。
筆が滑ったので,ついでに残留農薬や食品添加物にふれておきます。たしかに,残留農薬などで,ごく少数の癌が疑われているものもあります。では,農薬を一切やめたらどうなるかというアメリカの学会の判断があります。農薬をやめると,人類全体が飢えてしまうということはひとまずおくとして,農薬をやめると,野菜の値段が高くなります。野菜や果物が高くなると貧乏人の野菜消費量が減ります。このため癌は急増すると考えられます。野菜や果物の癌予防効果は高いので,農薬を使ったほうがより健康的になれるということです。食品添加物も同様で,かびを防ぐ効果のほうが,食品添加物の発癌性より効果が多いというものです。実際,食品添加物が多くなったほうが寿命はのびています。私は,油の酸化防止のためのビタミンE添加で動脈硬化が減ったのも一因ではないかと思っています。ダイオキシン,農薬,食品添加物は先進国の法的規制内ではほとんど問題になりません。問題はたばこです。愚かなマスコミなどに頼るのでなく,冷静に理性的に考えましょう。
発癌性にもきわめて強いたばこから,証明するのが困難なくらい弱いダイオキシンや環境ホルモンまでいろいろあるという事が理解できないから,私はジャーナリストをばかにするのです。統計的評価,数量的評価ができていないのです。マスコミがもっとも苦手とするところです。 子宮内膜症などホルモン様健康被害に拡大たところでも,ダイオキシンや環境ホルモン被害ははっきりしません。
交流電気の磁気で発癌するとか,アルミ鍋を使うとアルツハイマーになるとかいうのも,マスコミの同様の思い込みです。これらは,世界的にみれば決着のついた話で,もっと重要なことは他にいくらでもあります。予防接種もこれに属し,国民は巨大な被害を受けています。それらに飛びつく大衆も責任があり,この程度の国民にはこの程度のマスコミなのかもしれません。
たばこを吸うような奴が健康になろうというのが間違っています。これが世界の常識,日本の非常識です。
くわえたばこの低級非科学ジャーナリズムに人類の未来を語る資格がないのも同様です。後ろに巨大たばこ企業がちらちらします。大学や権威筋に弱く,ヒステリックに意見をそのまま載せるのも,ジャーナリストとはいえません。衆愚政治に相当するものですが,良い言葉がみつかりません。
青少年に誤解を与え,物事の本質から目をそらし,国民を死に導くこれほど低俗な報道はポルノ以下です。ポルノなら10万人も死なないでしょうから。マスコミはたばこ会社を非難できないようにされているとしか考えられません。
善意である,それなりの根拠があるだけで報道は正当化できません。それなら,戦時下の大本営発表はすべて正しいことになります。全体を見渡し,裏付けをしっかりとり,社会的影響を考えて報道すべきです。
ニュース番組からたばこ会社をはずすべきです。
2000.07.01追加
環境ホルモンを最初に大規模に報道したのはNHKだそうです。彼らも禁煙報道には不熱心です。種の違いも理解できていないのは同様です。
2003.3.7 追加
厚生省は哺乳類でのダイオキシンの影響調査を中止したようです。影響は貝類・魚類では証明可能ですが、いくらやっても哺乳類での証明はできないそうです。
1999.04.05
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